ホットハンド効果とは?連続した成功をどう読み解くか

意思決定理論・行動経済学
Psychology Laws 編集部

商談が続けて決まったり、同じ担当者の提案が何件も採用されたりすると、「今は調子がいい。このまま次も成功するのでは」と考えたくなります。

ただし、成功が続いているという並びだけでは、偶然なのか、一時的に状態が変わっているのか、実力や条件が変わったのかは分かりません。ホットハンドをめぐる研究も、かつては「連続成功を意味のある流れだと思う錯覚」と説明されることが多くありましたが、その後、分析方法の問題が指摘され、実際に成功確率が一時的に高まる場合もあることが示されています。

この記事では、ホットハンド効果の意味と研究の変化を確認したうえで、仕事で連続した成功を見たときに、次の予測へどうつなげればよいかを考えます。

ホットハンド効果とは?「現象」と「思い込み」を分ける

ホットハンドとは、スポーツなどで成功が続いているとき、その人の成功確率が普段より高くなっている状態や、そのような状態があるという考えを指して使われます。研究では、実際の成績の変化と、それを見た人の予測を分けて考える必要があります。

  • 連続成功:成功という結果が続いて観測されたこと。
  • 実際のホットハンド:比較できる条件のもとで、成功が続く時期の成功確率が普段より高くなっていること。
  • ホットハンドの誤謬:成功確率が変わっている根拠がないのに、「成功が続いたから次も成功しやすい」と考えること。

この区別が大切なのは、成功が連続しても、それだけで「次も成功しやすい」とも「全部たまたま」とも決められないからです。直前の成功そのものが次の成功を生んだのか、集中状態や環境が変わったのか、もともとの実力差が表れたのかは、結果の並びとは別に確かめる必要があります。

研究で分かっていること

ホットハンド研究から現在言えるのは、「連続成功はすべて錯覚」と単純化するのも、「連勝中なら次も成功する」と考えるのも適切ではないということです。分析方法と、観察している人や状況によって結果が変わります。

1985年の代表的研究ではホットハンドを確認できなかった

ホットハンドを広く知られるテーマにしたのが、Gilovich、Vallone、Tverskyによる1985年の研究です。研究者たちは、NBAのフィラデルフィア・76ersのシュート記録、ボストン・セルティックスのフリースロー、さらにコーネル大学の選手による統制されたシュート実験を調べました。

その結果、直前の成功後に次の成功確率が高まるという一貫した証拠は見つかりませんでした。コーネル大学の実験では、選手は成功が続いた後ほど次も入ると予測しやすかった一方、実際の成績には同じ変化が確認されませんでした。研究者たちは、短いランダムな並びにも規則性を読み取ってしまうことが、ホットハンドへの信念につながると説明しました(Gilovichら, 1985)。

2018年には、従来の分析方法に偏りがあることが示された

その後、MillerとSanjurjoは、短い有限の系列から「連続成功の直後の成功率」を計算する方法には、ストリーク選択バイアスと呼ばれる下向きの偏りが生じることを数学的に示しました。

簡単に言えば、成功と失敗が独立して同じ確率で起きる場合でも、有限のデータから「成功が続いた直後」だけを切り出して平均すると、比較の基準を単純に通常の成功率と同じにはできません。系列が短いほど、また長い連続成功を条件にするほど、この偏りは大きくなります。

MillerとSanjurjoはこの偏りを修正して1985年の代表的研究を再分析し、従来の「ホットハンドは確認できない」という結論が逆転すると報告しました(Miller & Sanjurjo, 2018)。

新しい研究では、実際のホットハンドも確認されている

MillerとSanjurjoが2024年に発表した研究では、4つの統制されたシュート実験を使い、同じ人を6か月離れた複数のセッションでも調べ、改良した統計手法で検証しました。その結果、データ全体だけでなく個人の中でも、ホットハンドを支持する強い証拠が得られたと報告しています。また、経験のある観察者が、どの選手がより「熱くなりやすい」かを予測できる結果も示されました(Miller & Sanjurjo, 2024)。

一方、実際のNBAの試合データを分析した研究では、個々の選手には程度の異なるホットハンドが見られたものの、平均的な選手では連続成功後に期待より成績が下がる傾向も報告されています(Pelechrinis & Winston, 2022)。試合では、成功が続いた選手ほど難しいシュートを選ぶ、守備側の対応が変わるといった条件変化も起こり得ます。

つまり、ホットハンドは「誰にでも同じように起きる普遍的な法則」ではありません。成功の並びだけを見るのではなく、誰の、どの条件で、どの程度続くのかを確かめる必要があります。

連続した成功を偶然・状態の変化・実力に分けて考える

仕事で成功が続いたときは、原因を一つに決めるより、少なくとも次の3つに分けて考えると判断しやすくなります。

見方確認すること次の予測での扱い
偶然試行数が少なく、条件ややり方に目立った変化がないか連続成功そのものは強い根拠にせず、普段の成功率を基準にする
一時的な状態変化準備の質、集中しやすい環境、案件との相性など、短期間だけ続きそうな条件が変わっていないか同じ条件が続く範囲では予測材料にするが、状態が変われば見直す
実力や仕組みの変化より長い期間でも、同程度の難しさの仕事で成績が安定して上がっているか。手順やスキルに再現できる変化があるか一時的な連勝より、更新された長期の成功率や再現可能な仕組みを重視する

ここで重要なのは、「成功が続いた」という結果と、「成功しやすい状態になった」という原因を同じものとして扱わないことです。結果の連続は原因を探すきっかけにはなりますが、それだけでは原因の証明にはなりません。

仕事での具体例と活かし方

以下は、研究結果をそのまま職場で実証した事例ではなく、考え方を使うための仮の場面です。

営業担当のAさんは、最近4件の提案を連続で受注しました。これまでの受注率は約30%です。上司は「今は調子がいいから、重要案件を多く任せよう」と考えています。

このとき、4連続の受注だけを見て判断するのではなく、次の順番で確認します。

  1. 比較する案件をそろえる。
    新規顧客と既存顧客、案件規模、流入経路などが大きく違うと、受注率の変化を本人の状態だけでは説明できません。
  2. 成功前後で変わった条件を探す。
    提案資料を変えた、事前ヒアリングを増やした、上司の同席が始まった、扱う商品が変わったなど、再現できる変化がないか確認します。
  3. 短期の状態と長期の実力を分ける。
    数件だけの好成績なら、一時的な状態や偶然も考えます。似た条件の案件でも高い成績が長く続けば、基準となる受注率そのものを見直す材料になります。
  4. 次の期間を先に決めて確かめる。
    たとえば「次の10件の同程度の案件で受注率と条件を記録する」と先に決めます。結果を見てから都合のよい期間だけ切り取ることを避けられます。
  5. 大きな配分変更は段階的に行う。
    重要案件を一気に集中させるのではなく、少し増やして結果を確認するなど、戻せる形で判断します。

連続成功は、無視すべきノイズとも、必ず続く勢いとも限りません。普段の成功率を出発点にし、条件の変化と再現性を確認しながら、必要なら予測を更新するという扱いが現実的です。

参考文献・出典