自己奉仕バイアスとは?成功と失敗で原因の説明が変わる心理

判断・認知バイアス
Psychology Laws 編集部

仕事の振り返りでは、うまくいったときは「企画が良かった」「チームの実力だ」と考え、うまくいかなかったときは「市場が悪かった」「競合が強かった」と説明したくなることがあります。

こうした成功・失敗で原因説明の向きが変わる傾向は、自己奉仕バイアスとして研究されてきました。ただし、「人は成功を全部自分の手柄にし、失敗は全部他人のせいにする」という単純な法則ではありません。文化や説明する状況によって傾向の大きさや方向が変わる研究もあります。

仕事で重要なのは、成功したときと失敗したときで、原因を採用する基準を変えていないかを同じデータで点検することです。

自己奉仕バイアスとは 意味とこの記事で扱う範囲

自己奉仕バイアス(self-serving bias)は、自分にとって都合のよい方向に判断や説明が偏る現象を広く指す言葉として使われます。

この記事では、その中でも自己奉仕的帰属バイアス(self-serving attributional bias)、つまり成功と失敗の原因をどう説明するかに焦点を当てます。研究では、好ましい結果を自分の能力や努力などの内的要因に、好ましくない結果を状況や運などの外的要因に説明する傾向が調べられてきました。

Mezulisら(2004)

説明用の例:売上目標を達成した月には「営業チームの提案力が高かった」と説明し、未達だった月には「市場環境が悪かった」と説明したとします。どちらも本当に原因かもしれません。問題は、成功時には内部要因を調べ、失敗時には外部要因だけを調べるように、結果によって原因確認の基準が変わっていないかです。

研究で分かっていること

研究からは、好ましい結果を自分側の原因に結びつけ、好ましくない結果を自分から離れた原因に結びつける傾向は、全体として確認されていることが分かっています。

一方で、この傾向はすべての人・文化・状況で同じ強さではありません。また、その原因を「自尊心を守るため」と一つに決めることもできません。期待していた結果との一致や、因果関係の捉え方など、別の説明も研究されてきました。

中心となる研究:266研究をまとめると、全体として自己奉仕的な原因説明が見られた

Mezulisらは2004年、自己奉仕的帰属を扱った266研究をまとめたメタ分析(複数の研究結果を統合して全体の傾向を見る方法)を行いました。

分析では、好ましい出来事について、好ましくない出来事よりも、自分自身に関係する原因へ結びつける傾向が全体として確認されました。ただし、その大きさには年齢や文化による違いがあり、アジア圏のサンプルでは、米国や他の西洋圏のサンプルより平均的に小さい傾向が報告されました。

Mezulisら(2004)

この結果から、自己奉仕的な原因説明は多くの研究で見られる一方、「どの文化でも同じ形で強く出る」とは言えません。

初期のレビューでも、成功と失敗は完全な鏡写しではないと指摘されていた

MillerとRossは1975年、それまでの自己奉仕的帰属研究をレビューしました。その結果、成功を自分側の原因に結びつける自己高揚的な帰属については一定の支持がある一方、失敗を外部要因に結びつける自己防衛的な帰属については、当時の証拠は限定的だと結論づけました。

また、成功を自分に結びつける傾向についても、自尊心を守る動機だけではなく、「自分の行動なら成功する」と期待していたことなど、認知的な説明が可能だと論じています。

Miller & Ross(1975)

その後、Bradleyは1978年に研究を再検討し、成功と失敗で原因説明が変わる証拠は比較的強いと論じました。ただし、自己評価を守るために、いつでも成功を自分の手柄にするとは限らず、状況によっては逆方向の説明も自己にとって有利になり得ると整理しています。

Bradley(1978)

日本の研究では、人前で説明するかどうかで方向が変わった

古城は1980年、日本の大学生を対象に、成功・失敗の原因説明と、他人からどう見られるかという状況の関係を調べました。

第1実験では、女子大学生44人が課題後に成功または失敗のフィードバックを受け、能力、努力、課題の難しさ、運のどれを原因と考えるかを答えました。評価者がその場にいない条件では、成功を自分側の原因に、失敗を外部要因に結びつける傾向が見られました。

一方、評価者の前で原因を答える条件では、その方向が弱まり、成功をより外部に、失敗をより自分側に説明する傾向が見られました。第2実験では実際の教育心理学テストを使った場面でも同様の方向が確認されました。

古城(1980)

この研究は、「成功は自分、失敗は外部」という説明が固定的な性質ではなく、他人からどう見られるかという状況でも変わり得ることを示しています。

基本的帰属の誤りや行為者―観察者バイアスとは違う

自己奉仕バイアスの記事で中心になるのは、結果が自分にとって好ましいか、好ましくないかによって、原因説明が自分に有利な方向へ変わるかという点です。

  • 自己奉仕バイアス:成功・失敗など結果の良し悪しと、自分に有利な原因説明の関係を見る。
  • 基本的帰属の誤り:他人の行動を説明するとき、状況より人物側の特徴を重く見ることを中心に扱う。
  • 行為者―観察者バイアス:自分の行動と他人の行動で原因説明が違うかを比較する仮説。

これらは原因説明を扱う点では近いものの、研究で問うている内容は異なります。

成果の振り返りで原因説明を点検する方法

以下は、自己奉仕的帰属の研究を業務の振り返りへ置き換えた説明用の実務例です。この手順そのものが、一般の企業で自己奉仕バイアスを必ず減らすと実証されたものではありません。

場面:同じチームが1年間に行った6つの販促施策を振り返るとします。3施策は売上目標を達成し、3施策は未達でした。会議では、成功施策は「企画と営業が良かった」、失敗施策は「市場や競合が悪かった」と説明されています。

  1. 成功・失敗を同じ指標で定義する
    たとえば「開始前に設定した売上目標に対する達成率」で6施策を比較すると決めます。成功施策だけ売上額、失敗施策だけ利益率を見るなど、結果によって指標を変えません。
  2. 結果を見る前に決めていた要因と、後から出た説明を分ける
    施策前の計画書に、価格、広告量、営業人数、対象顧客、競合状況など、成果に影響すると考えていた要因があれば抜き出します。結果が出た後に初めて挙がった原因は別欄に記録します。
  3. 成功施策と失敗施策で同じ原因候補を確認する
    6施策すべてについて、広告投入量、商談数、成約率、価格変更、営業人数、競合キャンペーン、市場全体の変化など、同じ項目を確認します。「成功したから営業力」「失敗したから競合」と原因候補を変えません。
  4. 本人側の要因と外部要因を、同じ証拠基準で評価する
    「営業力が良かった」と言うなら、成約率や提案件数など確認できる指標が成功施策で実際に高かったかを見ます。「市場が悪かった」と言うなら、市場全体の販売データや競合の価格変更など、失敗施策だけで確認できる外部情報があったかを見ます。根拠が確認できない原因は、事実ではなく仮説として残します。
  5. 複数要因を残したまま、次の施策で確かめることを決める
    成功・失敗が一つの原因だけで決まったと断定せず、確認できた要因と未確認の要因を分けます。次回は、変更できる要因について目標値や確認指標を事前に決め、同じ基準で結果を振り返ります。

この方法の目的は、成功を自分の実力として評価しないことでも、失敗を必ず自分の責任にすることでもありません。成功時と失敗時に同じ原因候補・同じ証拠基準を使い、結果に合わせて説明のルールを変えないことです。

活用するときの注意点

  • 成功を自分の能力に結びつけること自体を誤りとしない。 実際に能力や努力が成果に影響した根拠があれば、妥当な原因説明です。
  • 失敗に外部要因があった可能性も同じように確認する。 市場変化や競合行動が本当に影響したなら、それを無視して「責任逃れ」と決めつけるのも不適切です。
  • 文化や説明する場面による違いを考える。 研究では、自己奉仕的な帰属の大きさに文化差があり、人前で原因を説明する状況によって方向が変わる結果もあります。
  • 原因説明と責任・評価を分ける。 外部要因があったとしても、事前に備えられたか、対応できたかという責任判断は別に検討します。

参考文献・出典