フレーミング効果とは?同じ情報でも伝え方で選択が変わる理由

判断・認知バイアス
Psychology Laws 編集部

提案資料では、同じ事実でも「90%が期限内」と書くか、「10%が期限を超えた」と書くかで、受け止め方が変わることがあります。数字そのものは同じでも、どこを基準に、どの側面を強調するかが判断に影響することがあるためです。

これがフレーミング効果です。ただし、どんな言い換えでも同じように選択が変わるわけではありません。研究では、リスクのある選択肢の示し方と、商品の特徴を肯定的・否定的に示す場合などで、別のタイプのフレーミングが区別されています。この記事では、研究で確認されている範囲と、提案資料の表現をどう点検するかを分けて説明します。

フレーミング効果とは 意味と仕組み

フレーミング効果(framing effect)とは、客観的には同じ、またはほぼ同じ内容でも、表現の仕方によって判断や選択が変わる現象です。

TverskyとKahnemanは1981年、同じ結果を「得る・助かる」という形で示すか、「失う・亡くなる」という形で示すかによって、選ばれる選択肢が変わることを報告しました。後の研究では、フレーミングには複数の種類があり、同じ仕組みで一括りにできないことも整理されています。

Tversky & Kahneman(1981) / Levinら(1998)

説明用の例:過去1年間の問い合わせ1,000件のうち、900件を期限内に解決し、100件が期限を超えたとします。「90%を期限内に解決」と「10%が期限超過」は同じ実績を別の側面から表しています。どちらを前面に出すかで、サービスへの印象が変わる可能性があります。

研究で分かっていること

研究からは、同じ結果を異なる形で表現すると、評価や選択が変わることがあると分かっています。特に、利益と損失として示すリスク選択のフレーミングは多くの研究で確認されています。

一方で、「フレーミング効果」という言葉には複数の現象が含まれます。リスクの選び方が変わる場合と、同じ商品の評価が変わる場合では、課題も考えられている仕組みも同じではありません。そのため、「言い方を変えれば必ず相手を動かせる」と一般化するのは適切ではありません。

中心となる研究:同じ結果を「助かる」と「亡くなる」で示した実験

TverskyとKahnemanの1981年の研究では、600人が死亡すると予想される感染症への対策を選ぶ問題が使われました。一方のグループには、結果を「何人助かるか」という形で示しました。確実に200人が助かる案と、3分の1の確率で600人全員が助かり、残りの3分の2では誰も助からない案を比べると、72%が確実に200人を助ける案を選びました。

別のグループには、実質的に同じ結果を「何人亡くなるか」という形で示しました。確実に400人が亡くなる案と、3分の1の確率で誰も亡くならず、3分の2の確率で600人全員が亡くなる案を比べると、78%が確率のある案を選びました。

選択肢の結果は対応しているのに、「助かる」という利益側の表現では確実な案が選ばれやすく、「亡くなる」という損失側の表現ではリスクのある案が選ばれやすくなりました。

Tversky & Kahneman(1981)

ただし、この実験はリスクのある選択を扱ったものです。「90%成功」と「10%失敗」のような商品の属性表示が、まったく同じ仕組みで選択を変えるとまでは言えません。

同じフレーミング効果でも、扱っているものは同じではない

Levin、Schneider、Gaethは1998年のレビューで、肯定的・否定的な表現を使うフレーミングを大きく3種類に整理しました。たとえば、TverskyとKahnemanのようにリスクのある選択が変わるものはリスク選択フレーミング、同じ対象の特徴を肯定的または否定的に示して評価が変わるものは属性フレーミングです。

Levinら(1998)

属性フレーミングの例として、LevinとGaethは1988年、同じ牛ひき肉を「75%赤身」と示す場合と「25%脂肪」と示す場合を比べました。「75%赤身」と表示された方が好意的に評価されました。ただし、実際に肉を食べた後には、表示の違いによる影響は小さくなりました。

Levin & Gaeth(1988)

この結果から、表現だけが常に判断を決めるわけではなく、対象について直接得られる情報が増えると、表現の影響が弱まる場合もあることが分かります。

効果は確認されているが、実験条件によって大きさが変わる

Kühbergerは1998年、リスク選択のフレーミング研究をまとめたメタ分析(複数の研究結果を統合して全体の傾向を見る方法)を行いました。全体としてフレーミング効果は確認されましたが、効果の大きさは、選択肢の作り方や回答方法などの研究条件によって大きく異なりました。

Kühberger(1998)

2023年のレビューでも、リスク選択フレーミングには一貫した証拠がある一方、フレーミング研究全体を一つの単純な仕組みで説明するのは適切でないと整理されています。

Kühberger(2023)

提案資料の伝え方を点検する方法

以下は、研究知見を提案資料の確認へ置き換えた説明用の実務例です。この手順そのものが、提案資料を対象とした研究で効果を確認されたわけではありません。

場面:過去1年間の問い合わせ1,000件のうち、900件を期限内に解決し、100件が期限を超えたという実績を提案資料に載せるとします。

  1. まず元の事実を固定する
    母数は1,000件、対象期間は過去1年間、期限内が900件、期限超過が100件、と元データを確認します。表現を考える前に、何を伝えるデータなのかを固定します。
  2. 同じ事実を表す対になる表現を作る
    「90%を期限内に解決」と「10%が期限超過」のように、同じ母数・同じ期間・同じ基準から計算できる表現を並べます。片方だけ母数や期間が違う場合は、同じ情報の言い換えではありません。
  3. 社内レビューでは両方を見て判断する
    資料を作る人だけでなく、確認する人も両方の表現を見ます。「90%期限内」だけを見た場合と「10%期限超過」だけを見た場合で、サービスの評価や提案の結論を変えたくなるかを確認します。
  4. 判断に必要な追加情報を確認する
    期限内率だけで十分なのか、前年との比較、業界基準、遅延した100件の程度や原因なども必要なのかを考えます。表現の印象だけで結論を出さず、提案の判断に必要な情報を追加します。
  5. 最終資料では、誤解を招かない表現を選ぶ
    どちらか一方だけを使う場合も、母数・期間・基準を分かるようにします。必要であれば「90%期限内、10%期限超過」のように両方を併記します。両方を示せばフレーミング効果が必ずなくなる、という意味ではありませんが、読み手が元の事実を確認しやすくなります。

この点検の目的は、肯定的な表現を避けることではありません。同じ事実を別の表現でも確認し、提案内容そのものの根拠と、表現から受ける印象を分けて考えやすくすることです。

活用するときの注意点

  • フレーミングを「言い換えれば相手を誘導できる技術」とだけ考えない。 研究では課題の種類によって異なるフレーミングが区別され、効果の大きさも条件によって変わります。
  • 本当に同じ情報かを確認する。 母数、期間、確率、条件が違えば、単なる表現の違いではなく、伝えている情報自体が異なります。
  • 属性の評価とリスク選択を混同しない。 「90%成功/10%失敗」のような属性表示と、確実な案/確率的な案の選択では、研究上の位置づけが異なります。
  • 表現だけでなく、判断に必要な情報を増やす。 商品を実際に経験した後に属性フレーミングの影響が小さくなった研究もあり、直接確認できる情報が判断に役立つ場合があります。

参考文献・出典