偽の合意効果とは?「みんなも同じ考え」と見積もる心理
「自分ならこの機能を選ぶ。顧客もきっと同じはず」と感じることがあります。こうしたときに関係するのが、偽の合意効果(false consensus effect)です。
ただし、偽の合意効果は「自分の意見を必ず多数派だと思うこと」ではありません。研究で中心となるのは、自分が選んだ反応ほど、他の人も選ぶ割合を高く見積もりやすいという傾向です。仕事では、自分の好みから他者の割合を推測するのではなく、予測と実際の回答を分けて確かめることが大切です。
偽の合意効果とは 意味と仕組み
偽の合意効果とは、自分の意見、好み、行動などが、他の人にもどのくらい共有されているかを見積もるとき、自分自身の反応に引っぱられる傾向です。
たとえば、商品案Aを選ぶ人は「Aを選ぶ人は多い」と見積もりやすく、商品案Bを選ぶ人はAの割合をそれより低く見積もる、といった違いです。
ここで重要なのは、「自分と同じ人が多いと見積もること」と「自分が実際に多数派であること」は別だという点です。自分側の割合を40%と予測していても、別の選択をした人が20%と予測しているなら、自分の選択に応じて推定が自分側へ動いている可能性があります。
研究で分かっていること
研究では、自分の選択と他者の割合の推定が結びつく傾向は繰り返し確認されています。一方で、「誰もが自分を多数派だと思う」「自分側の割合を必ず実際より高く見積もる」とまでは言えません。偽の合意効果と、実際の多数派・少数派を分けて読む必要があります。
Rossらの研究では、自分の選択によって割合の見積もりが変わった
Rossら(1977)は、スタンフォード大学の学生320人に、4種類の仮想場面のうち1つを示しました。参加者は、2つの行動のそれぞれを同年代の人が何%くらい選ぶと思うかを答え、その後で自分ならどちらを選ぶかを答えました。
たとえば、スーパーについて話した映像を広告に使う許可書へ「署名するか、しないか」という場面では、署名すると答えた人は、署名する人の割合を平均75.6%と見積もりました。一方、署名しないと答えた人は、署名する人を57.3%と見積もりました。
つまり、署名しない人が見積もった「自分と同じく署名しない人」の割合は42.7%で、50%を下回っています。それでも、署名する人が見積もった24.4%よりは高くなっています。自分側を多数派だと思っていなくても、自分の選択に応じて同じ選択の割合を高めに見積もることがあると分かる例です。
同じ論文の別の調査では、80人の学生が自分の特徴や好みなどを分類し、大学生全体では各特徴がどれくらい多いかを推定しました。利用可能だった34項目のうち32項目で、自分が属する側の割合をもう一方の人より高く見積もる方向の結果が見られました。
メタ分析でも傾向は確認されたが、強さは一定ではない
Mullenら(1985)は、複数の研究結果をまとめて検討するメタ分析で、偽の合意効果に関する115件の仮説検定を統合しました。その結果、全体としては統計的に有意で中程度の効果が確認されましたが、効果の大きさには研究ごとの差もありました。
したがって、「誰でも、どんな場面でも同じ程度に起こる」と考えるのではなく、他者の割合を推測するときに起こりうる傾向として扱うのが適切です。
実際の多数派と、偽の合意効果は同じではない
MullenとHu(1988)は、他者との一致率の見積もりについて2種類のメタ分析を行いました。その整理では、実際の多数派は自分側の割合を過小評価し、少数派は自分側の割合を過大評価する傾向が示されています。同時に、自分の選択によって推定が自分側へ寄る偽の合意効果も中程度で確認されました。
この違いからも、「自分と同じ人の割合を高く見積もる傾向」と「実際に自分側が過半数かどうか」は別の問題だと分かります。
仕事での具体例
以下は説明用の仮の例です。
あるサービスで、通知の初期設定を「週1回のまとめ通知」にするか「その都度通知」にするかを検討しているとします。担当者自身は週1回のまとめ通知が好みで、「顧客の70%くらいも同じだろう」と予測しました。
そこで、通知機能を使っている顧客から対象を決め、同じ質問文で100人から回答を集めたところ、週1回を選んだのは43人、その都度通知を選んだのは57人でした。
| 確認する内容 | 結果 |
|---|---|
| 担当者自身の好み | 週1回のまとめ通知 |
| 事前の予測 | 週1回を70%が選ぶ |
| 実際に集めた回答 | 週1回 43%、その都度 57% |
| 予測との差 | 週1回を27ポイント高く予測していた |
この結果だけで「担当者に偽の合意効果が起きた」と個人を診断することはできません。ただ、少なくとも自分の予測を顧客の回答で確かめたところ、そのサンプルでは予測と実測が大きく違ったことは確認できます。
仕事で活かす方法
顧客や同僚の考えを確かめるときは、次の順番にすると、自分の好みと他者の割合を分けて扱いやすくなります。
- 自分の選択と予測を先に書く
「私はAを選ぶ。対象者のうちAを選ぶのは70%くらいだと思う」のように、回答を見る前に残します。 - 「みんな」が誰かを決める
顧客全体なのか、特定の商品を使っている顧客なのか、会議の参加者なのかを明確にします。対象が曖昧なままでは、割合を比べられません。 - 対象者から独立に回答を集める
顧客なら、対象となる顧客からできるだけ偏りなく回答を集めます。社内なら、議論を始める前に匿名投票を行うと、発言の強い人の意見を全体の意見と取り違えにくくなります。 - 予測と回答割合を並べて比較する
「予測70%、回答43%」のように並べます。差があれば、次の判断では自分の感覚より集めたデータを優先します。
この方法の目的は、自分の直感をなくすことではありません。直感を「仮説」にして、他者の回答と照合できる形にすることです。
活用するときの注意点
- 回答を集めれば自動的に「顧客全体」が分かるわけではありません。回答者が一部の熱心な利用者に偏っていたり、回答率が低かったりすると、集めた割合と顧客全体の割合は異なる可能性があります。
- 質問文でも結果は変わり得ます。自分の案をよく見せる説明を付けてから尋ねるのではなく、比較する選択肢を同じ条件で示します。
- 一度のずれだけで、人に「バイアスがある」と決めつけないようにします。偽の合意効果は研究で確認される傾向であり、個々の判断の誤りを自動的に証明するものではありません。
- 研究結果をそのまますべての職場へ一般化しないことも必要です。中心研究には大学生を対象とした実験や質問紙調査が含まれます。仕事では、実際に判断したい顧客や同僚から情報を集めることが重要です。
参考文献・出典
- Ross, L., Greene, D., & House, P. (1977). The “false consensus effect”: An egocentric bias in social perception and attribution processes. Journal of Experimental Social Psychology, 13(3), 279–301. ― 自分の選択と、他者が同じ選択をする割合の推定との関係を示した中心研究。
- Mullen, B., Atkins, J. L., Champion, D. S., Edwards, C., Hardy, D., Story, J. E., & Vanderklok, M. (1985). The false consensus effect: A meta-analysis of 115 hypothesis tests. Journal of Experimental Social Psychology, 21(3), 262–283. ― 115件の仮説検定を統合し、効果の全体的な大きさとばらつきを検討したメタ分析。
- Mullen, B., & Hu, L.-t. (1988). Social projection as a function of cognitive mechanisms: Two meta-analytic integrations. British Journal of Social Psychology, 27(4), 333–356. ― 多数派・少数派による一致率の過大・過小評価と、偽の合意効果を分けて整理したメタ分析。