フィッツの法則とは?目標までの距離と大きさが動作時間に与える影響

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

パソコンの画面で、小さなボタンを押そうとしてカーソルを慎重に動かした経験はないでしょうか。同じボタンでも、すぐ近くにある場合と離れた場所にある場合では、動かす時間が違うことがあります。

フィッツの法則とは、目標を素早く正確に狙う動作では、目標までの距離が長いほど、また目標の幅が狭いほど、動くのにかかる時間が長くなりやすいという関係です。人がどのように動くかを調べた研究から生まれ、画面上のボタンを選ぶ操作などを考える際にも使われています。

フィッツの法則とは?距離と狙う幅が動作時間に関わる

たとえば、指先で机の上の印を正確に触るとします。すぐ近くの大きな印なら狙いやすくても、遠くの小さな印には、手を大きく動かしたうえで位置を細かく合わせる必要があります。

フィッツの法則が扱うのは、こうした狙う場所が決まっている動作にかかる時間です。ここでいう「幅」は、主に手を動かす方向に沿った目標の幅を指します。同じ面積のボタンでも、横方向に動かす場合と縦方向に動かす場合とでは、狙いやすさが変わることがあります。

研究では、目標までの距離を幅で割った比から、狙う難しさを数値にします。「対数」と呼ばれる計算を使い、この比が2倍になるごとに、難しさの数値が一定幅ずつ増えるように表します。難しさが大きいほど動作時間は長くなる傾向がありますが、距離が2倍なら時間も2倍になる、という単純な比例ではありません(Fitts, 1954)。

実際にどれくらい時間がかかるかは、動かす道具、使い慣れた程度、求められる正確さなどにも左右されます。この法則は、誰のどんな動作でも同じ秒数になるという決まりではありません。

1954年の実験では、距離と幅をどう変えたのか

心理学者のフィッツは1954年に、手や腕の動きの速さと正確さについて実験を報告しました。そのうち、右利きの男子大学生16人を対象とした実験では、参加者に金属製の棒を持ってもらい、左右に並んだ二つの細長い金属板を交互に、正確さを優先しながら、できるだけ数多くたたいてもらいました。目標を外して脇の板に当たった場合は、間違いとして記録しました。

研究者は、二つの板の中心間の距離を4段階、板の幅を4段階に変え、合計16通りの条件を比べました。一回の測定時間は15秒間です。軽い棒と重い棒の両方を使って調べています(Fitts, 1954)。

次の表は、軽い棒を使った条件のうち、幅だけを変えた比較と、距離だけを変えた比較です。時間は、板から反対側の板へ一回移動する際の平均で、原論文の数値をそのまま示しています。距離と幅は、原論文のインチをおおよそのセンチメートルに直しました。

比較条件 目標間の距離 目標の幅 平均動作時間
同じ距離・幅が広い 約20cm 約5.1cm 0.279秒
同じ距離・幅が狭い 約20cm 約0.64cm 0.580秒
同じ幅・距離が短い 約5.1cm 約2.5cm 0.212秒
同じ幅・距離が長い 約41cm 約2.5cm 0.481秒

幅を比べると、同じ距離でも目標が狭い方が平均動作時間は長くなっています。距離を比べると、同じ幅でも遠くの目標の方が長くなっています。これは、参加者16人が指定された板を繰り返したたく実験での結果です。原研究では別に、輪のような部品やピンを移す課題も調べられました。

速さだけでなく、目標から外れた割合も記録されています。速く動かすために正確さを犠牲にすれば、単純に短時間で済むこともあるため、狙った場所に届く正確さと時間を合わせて考えることが大切です。

「反応時間」と「動作時間」はどう違うのか

似た話として、合図が出てから、どのボタンを押すかを見分けて反応を始めるまでの時間があります。これは主に「反応時間」の問題です。一方、フィッツの法則が中心に据えるのは、目標へ手を移動させる「動作時間」です。

FittsとPeterson(1964)は、二つの合図に対応して動く課題で、合図への反応が始まるまでの時間と、その後に目標まで動かす時間を分けて調べました。その結果、移動する距離と目標の幅は、動作時間には大きく、規則的な影響を与えましたが、反応を始めるまでの時間への影響は比較的小さいものでした(Fitts & Peterson, 1964)。

つまり、どの場所を狙うかを決める速さと、決めた場所へ正確に動く速さは、分けて考えられます。この研究は特定の合図と動作を用いた実験であり、複雑な日常の選択をすべて同じ方法で説明したわけではありません。

マウスやタッチ画面でも同じ関係が見られるのか

SoukoreffとMacKenzie(2004)は、フィッツの法則を使った画面操作の研究を整理し、マウス、ペン型の道具、画面に触れる操作などへの応用を検討しました。画面上の目標までポインターを動かす距離や、狙うボタンの幅を変えることで、操作にかかる時間を予測したり、入力方法を比較したりできます(Soukoreff & MacKenzie, 2004)。

ただし、速く動かせたかだけでは、使いやすさを十分に判断できません。目標を押し間違えた割合や、実際にどこを狙ったかも重要です。また、画面操作での「移動時間」を調べる際は、合図に気づくまでの時間や、クリック後の待ち時間などと区別して測ります。

タッチ画面についての研究をまとめたChakrabortyとYadav(2023)は、フィッツの法則に合う結果に加え、明確な関係が見られない結果や、異なる関係が報告された研究も紹介しています。触って選ぶ操作のすべてに同じ式をそのまま使えるかについては、研究全体で一致した結論には達していません(Chakraborty & Yadav, 2023)。

したがって、画面上で目標を大きく、近くすれば必ず操作時間が短くなるとは限りません。操作する方法やボタンの配置、ほかの動作に必要な時間も考慮する必要があります。

身近な場面で考える

たとえば、パソコンで写真を整理している人が、何度も「保存」ボタンをクリックするとします。ボタンがカーソルから遠く、しかも小さいときは、そこまで動かして狙うのに時間がかかるかもしれません。近くに、十分な幅のボタンがあれば、動かしやすいと考えられます。

これはフィッツの法則を日常に置き換えた仮の例です。実際の操作時間には、「保存」ボタンの場所を見つける時間や、操作に慣れているかどうかも関係します。また、画面の配置を変えることで別のボタンが押しにくくなる場合もあります。

ボタンや道具の使いやすさを考えるときは、見つけやすさだけでなく、そこまでどのくらい動くのか、どのくらい正確に狙う必要があるのかにも目を向けると、動作にかかる負担を理解しやすくなります。

参考文献・出典

Fitts, P. M. (1954). The information capacity of the human motor system in controlling the amplitude of movement. Journal of Experimental Psychology, 47(6), 381–391. 距離と目標の幅を変え、金属板への反復動作の時間と正確さを比較した原研究です。リンク先は1992年に再録された本文です。

Fitts, P. M., & Peterson, J. R. (1964). Information capacity of discrete motor responses. Journal of Experimental Psychology, 67(2), 103–112. 合図に対する反応時間と目標までの動作時間を区別した研究です。公開要旨の範囲を参照しました。

Soukoreff, R. W., & MacKenzie, I. S. (2004). Towards a standard for pointing device evaluation: Perspectives on 27 years of Fitts’ law research in HCI. International Journal of Human-Computer Studies, 61(6), 751–789. 画面上の目標を狙う操作と、速さ・正確さを比較する方法についての総説です。

Chakraborty, P., & Yadav, S. (2023). Applicability of Fitts’ law to interaction with touchscreen: Review of experimental results. Theoretical Issues in Ergonomics Science, 24(5), 532–546. タッチ画面への適用について、研究間で異なる結果と限界をまとめた総説です。公開要旨の範囲を参照しました。