アンダーマイニング効果とは?報酬が自発的な意欲に与える影響

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

好きで続けていた活動でも、「これをしたらごほうびをあげる」と約束されると、以前ほど自分から取り組まなくなることがあります。報酬は人の意欲を高めるものだと思われがちですが、なぜ逆の結果が起こるのでしょうか。

アンダーマイニング効果とは、もともと興味を持って楽しんでいた活動に外からの報酬が加わることで、活動そのものへの関心や、自分から続けようとする意欲が弱まることがある現象です。特に、活動をする前から報酬が約束されているかどうかが、結果を左右する場合があります。

アンダーマイニング効果とは?好きだったことへの意欲が弱まる仕組み

たとえば、ある人が面白いからという理由で毎日絵を描いているとします。絵を描く楽しさそのものが、続ける理由になっています。ところが、「決まった枚数を描けば賞品を渡す」と言われると、絵を描く目的が賞品をもらうことへ移っていくかもしれません。

この現象を説明する考え方の一つは、自分がなぜその活動をしているのかという受け止め方が変わるというものです。「好きだからしている」と考えていた人が、「報酬をもらうためにしている」と考えるようになると、報酬がなくなったとき、自分から続ける理由を感じにくくなる可能性があります(Lepper, Greene, & Nisbett, 1973)。

ただし、これは効果を説明するための考え方です。人が活動をやめた理由を、報酬への考え方だけで決めつけることはできません。また、報酬を受け取っている間によく活動することと、報酬がなくなった後にも自分から続けることは、分けて確かめる必要があります。

1973年の実験では、絵を描く子どもたちに何が起きたのか

Lepperら(1973)は、保育施設で、自分から進んで絵を描いていた子どもを対象に実験しました。子どもたちは別室で絵を描き、その際に受け取る賞について、次の三つの条件に分けられました。

  • 事前に賞を約束する:絵を描けば、金色の印などが付いた賞状をもらえると先に伝えられる。
  • 描いた後に予告なく賞を渡す:賞のことを知らずに絵を描き、終わった後で同じ賞状を受け取る。
  • 賞を渡さない:絵を描くが、賞状の予告も贈呈もない。

実験から約1~2週間後、教室で再び絵を描けるようにしました。子どもたちはほかの遊びも自由に選べます。研究者は、子どもが教室にいて絵の材料を使えた時間のうち、どのくらいの割合を自分から絵を描くことに使ったかを観察しました。

分析に用いられた51人について、各条件の平均は次のとおりでした(Lepper et al., 1973)。

賞の条件 人数 絵を描いた時間の割合(平均)
事前に賞を約束 18人 約8.6%
予告せず後から賞を渡す 18人 約18.1%
賞を渡さない 15人 約16.7%

事前に賞を約束された子どもたちは、ほかの二つの条件に比べて、その後に自分から絵を描く時間の割合が低くなりました。表の数字は「絵を描いた子どもの割合」ではなく、絵の材料を使えた時間のうち、実際に絵を描いていた時間の割合を示しています。

この実験は、もともと絵を描くことに興味があった子どもと、賞状という報酬を使った研究です。好きではなかった活動や大人の仕事について、必ず同じ結果になると示したものではありません。

お金や褒め言葉でも同じことが起きるのか

Deci(1971)は、報酬が意欲に及ぼす影響を、二つの室内実験と一つの実際の活動を使った実験で調べました。参加者が課題に取り組む期間を三つに分け、二番目の期間だけ報酬を与える条件と、報酬を与えない条件を比較しています。

その結果、お金を報酬として渡す条件では、後から報酬がなくなったとき、自分から課題に取り組む意欲が弱まる傾向がありました。一方、活動を認める言葉や好意的な評価を与えた条件では、意欲が高まる傾向が見られました(Deci, 1971)。

したがって、報酬といっても、お金や品物、賞状、褒め言葉をすべて同じものとして考えることはできません。何を渡すかだけでなく、「これをすればもらえる」という約束の有無や、受け取る人がその報酬をどう感じるかも重要です。

多くの研究をまとめると、報酬の影響はどう見えるのか

報酬が自発的な意欲を弱める程度については、研究者の間で解釈の違いもありました。

CameronとPierce(1994)は、報酬を受け取った人と受け取らなかった人を比較した96件の実験をまとめ、報酬全体としては、自発的な意欲を低下させるとはいえないと結論づけました。ただし、課題を行うだけでもらえると事前に分かっている、品物などの報酬には、報酬がなくなった後の活動時間をわずかに減らす結果が見られました。また、言葉による称賛では意欲が高まる結果も報告されています(Cameron & Pierce, 1994)。

その後、Deciら(1999)は128件の研究を分析しました。課題に取り組むこと、課題を終えること、課題で一定の成績基準を達成することに応じて報酬がもらえる条件では、報酬を受け取らない場合と比べ、報酬がない自由時間に自分から活動を続ける程度が、全体として低くなる結果でした。一方、好意的な言葉で成果を伝えることは、自由時間の活動と本人が答えた興味の両方を高める傾向にありました(Deci, Koestner, & Ryan, 1999)。

二つの分析は、研究のまとめ方や報酬の分類によって結論が異なります。ただし、どちらの分析からも、あらゆる報酬が同じ作用をするとは考えられません。特に、最初から興味があることに対し、目に見える報酬を事前に約束する場合には注意が必要です。

身近な場面で考える

たとえば、趣味で写真を撮っている人がいるとします。休日に街を歩き、気に入った風景を見つけるのが好きでした。ある日、周囲から「毎週決まった枚数の写真を投稿したら商品券をあげる」と提案されたとします。その人は商品券を目標に投稿を続けるようになり、商品券がなくなると、以前ほど写真を撮りたいと思わなくなるかもしれません。

これはアンダーマイニング効果を身近な状況に置き換えた仮の例です。実際に意欲が変わるかどうかは、もともとの写真への興味や、本人が報酬をどう受け止めたかによって異なります。

自分や相手がすでに楽しんでいる活動では、報酬を付ける前に、その活動をすること自体にどのような楽しさがあるのかを確かめるとよいでしょう。成果を認めたいときも、何かをしたら必ず品物を渡すという約束だけでなく、できるようになったことを具体的に伝える方法があります。これは研究を踏まえた日常への提案であり、特定の褒め方で意欲が必ず高まることを保証するものではありません。

アンダーマイニング効果が教えてくれるのは、報酬の有無だけでは意欲への影響を判断できないということです。もともとの興味、報酬の種類や渡し方、そして報酬がなくなった後の行動まで含めて考える必要があります。

参考文献・出典

Lepper, M. R., Greene, D., & Nisbett, R. E. (1973). Undermining children’s intrinsic interest with extrinsic reward: A test of the “overjustification” hypothesis. Journal of Personality and Social Psychology, 28(1), 129–137. 絵を描くことに興味があった子どもに対し、事前に賞を約束するかどうかを変え、後から自分で絵を描く時間を比較した実験の根拠です。

Deci, E. L. (1971). Effects of externally mediated rewards on intrinsic motivation. Journal of Personality and Social Psychology, 18(1), 105–115. お金による報酬と好意的な言葉による評価が、後の自発的な意欲に異なる影響を及ぼした実験の根拠です。

Cameron, J., & Pierce, W. D. (1994). Reinforcement, reward, and intrinsic motivation: A meta-analysis. Review of Educational Research, 64(3), 363–423. 報酬を受け取る人と受け取らない人の結果をまとめ、全体的な影響と特定の報酬条件による違いを検討した分析の根拠です。

Deci, E. L., Koestner, R., & Ryan, R. M. (1999). A meta-analytic review of experiments examining the effects of extrinsic rewards on intrinsic motivation. Psychological Bulletin, 125(6), 627–668. 128件の研究をまとめ、報酬の条件によって自発的な活動や本人が答えた興味がどう変わるかを分析した根拠です。