マッチングの法則とは?得られる報酬の割合と行動の選び方の関係

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

二つのゲームで遊べて、どちらでも時々アイテムが手に入るとします。片方のゲームの方が多くアイテムを得られたら、次からはそのゲームだけを選ぶようになるのでしょうか。

マッチングの法則とは、二つの行動を選べるとき、それぞれの行動に向ける回数や時間の割合が、その行動から実際に得られた報酬の割合に近づくという関係です。主に動物が二つの選択肢から餌を得る実験で調べられてきました。報酬の多い方をより頻繁に選びながら、もう一方も選ぶという行動を理解する手がかりになります。

マッチングの法則が表す「割合」とは

この法則では、二つの行動のうち、どちらにどれくらい多くの行動を向けたかを比べます。「報酬」は、その行動の結果として得られた餌などのことです。

たとえば、鳥が左と右の二つのボタンをつつく場面を考えてみましょう。一定期間に両方のボタンから得た餌のうち、左から得たものが70%、右から得たものが30%だったとします。マッチングの法則が表すのは、その鳥がボタンをつつく回数も、左がおよそ70%、右がおよそ30%に近づくという関係です。この数字は仕組みを説明するための仮の例であり、特定の実験で観察された値ではありません。

ここでいう「左の報酬が70%」は、左のボタンを一度つつくと70%の確率で餌が出るという意味ではありません。左右を合わせて実際に得られた餌のうち、左から得た餌が占める割合です。比べる行動の側も、左右を合わせたつつきの回数のうち、左に向けられた回数の割合を表します。

ハーンスタインの実験で確かめられたこと

心理学者リチャード・ハーンスタインは、3羽のハトに赤いキーと白いキーが付いた装置を使い、どちらを何回つつくかを調べました。キーをつついたとき、餌を得られる準備が整っていれば餌が出ます。左右で餌が得られるようになる平均的な間隔を変え、各キーから実際に得た餌の回数と、各キーをつついた回数を比較しました。

実験の主な条件では、ハトが一方のキーからもう一方のキーへ切り替えた直後の1.5秒間は、餌が出ないようにしていました。この条件では、左右それぞれから得た餌の割合と、左右それぞれをつついた回数の割合がほぼ一致しました。結果を示した図では、二つの割合のずれは最大でも約8ポイントでした(Herrnstein, 1961)。

一方、キーを切り替えた直後にも餌が出る条件では、同じような一致は見られませんでした。あるキーから得られた餌が全体の約66%を占めていても、そのキーをつついた回数の割合は、調べた2羽で50%と56%でした。つまり、報酬の割合だけでなく、行動を切り替えたときの条件も結果に関わっていたのです。

報酬と行動の割合が一致しない場合もある

その後の研究では、二つの割合が必ずしも同じにならないことも調べられています。心理学者ウィリアム・バウムは複数の研究結果を整理し、報酬の割合に差があっても行動の偏りはそれほど大きくならない場合や、一方の選択肢がほかの理由で好まれるような偏りがある場合を示しました(Baum, 1974)。

また、オルソップとエリフは6羽のハトを使い、左右のキーから得られる餌の割合に加えて、両方を合わせた餌の得られやすさも変えて調べました。その結果、全体として餌を得られる頻度が低い条件ほど、左右の報酬の割合が変わっても、各キーへ向ける行動の割合は変化しにくい傾向が見られました(Alsop & Elliffe, 1988)。

マッチングの法則は、報酬と行動の割合の間に見られる関係を表したもので、どんな状況でも選択の割合が正確に一致すると保証するものではありません。研究では、選択肢の条件や報酬の得られ方によって、その関係の強さが変わっています。

身近な場面で考える

たとえば、ある人が帰宅後に、アイテムを集めるゲームの二つの遊び方を選んでいるとします。どちらでも時々アイテムを手に入れられますが、これまでの経験では遊び方Aの方から多く得られています。その人は「Aの方が集めやすいけれど、Bも試してみたい」と考え、Aで遊ぶ回数を増やしながらBも続けるかもしれません。

これは仕組みを想像するための仮の例です。ハトの実験から、この人がAとBを何割ずつ選ぶかまで予測できるわけではありません。実際のゲームでは、面白さや難しさ、友人と一緒に遊ぶかどうかも選択に関わります。それでも、複数の行動を繰り返し選んでいるときに、どの行動からどれくらいの報酬を得てきたかに注目すると、選び方を理解するための一つの視点になります。

参考文献・出典