スティーブンスのべき法則とは?感覚の種類によって変わる刺激と感じ方の関係

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

音量を上げると音は大きく聞こえますが、音が運ぶエネルギーを2倍にしたからといって、大きさも必ず2倍に感じるわけではありません。光の明るさなど、別の感覚では増え方も違うのでしょうか。

スティーブンスのべき法則とは、刺激の物理的な強さと、それを人がどのくらい強く感じるかの関係を、感覚の種類に応じて異なる数式で表す考え方です。同じ倍率で刺激を強めても、感じる強さがどの程度増えるかは、音・光などの刺激や測定条件によって変わります。

スティーブンスのべき法則とは?刺激と感覚の増え方を表す考え方

「刺激」とは、耳に届く音の強さや、目に入る光の強さなど、測定できる物理的な量です。一方、「感じる強さ」は、音がどれくらい大きく聞こえるか、光がどれくらい明るく感じられるかという人の判断です。

スティーブンスは、刺激の強さを何倍かにしたとき、感じる強さもある決まった倍率で変わるという関係を提案しました。数学では「感じる強さ=ある定数×刺激の強さのn乗」という形で表し、nという数によって、感じ方が増える速さを表します。このnを「指数」と呼びます(Stevens, 1957)。

たとえば、刺激を2倍にしたときの関係を、仮の数値で考えると次のようになります。

指数の例 刺激を2倍にしたときの感じる強さ 増え方の特徴
0.5 約1.4倍 物理的な刺激よりゆるやかに増える
1 2倍 刺激と同じ割合で増える
2 4倍 刺激より急に増える

この表は式の意味を説明するための計算例で、音や光の実験結果をそのまま示したものではありません。重要なのは、指数が異なれば、同じ2倍という刺激の変化でも感じ方が変わるという点です。

感じる強さを数字でどう調べたのか

刺激の強さは機器で測れますが、感じる強さを直接測ることはできません。そこでスティーブンスは、人に感じ方を数字で答えてもらう方法を重視しました。

たとえば、最初に聞いた音の大きさを「10」とするとします。次の音がその2倍の大きさに聞こえれば「20」、半分に聞こえれば「5」と答えてもらいます。研究では複数の強さの刺激を提示し、与えられた数字と物理的な強さの関係を調べます。この数字は物理的な音量の単位ではなく、本人が音を何倍に感じたかを表すためのものです。

これにより、強さの変化がどのような形で感じ方に対応するかを調べられます。ただし、人が付ける数字は判断の仕方にも左右されるため、数式に合ったことだけで感覚の仕組みがすべて分かったとはいえません(Stevens, 1957)。

音の大きさと、別の感覚では増え方が違う

スティーブンス(1955)は、それまでに行われた音の大きさの研究を整理しました。一定の高さの音について、音が運ぶエネルギーの強さと、聞こえる大きさとの関係を検討したものです。

その結果をもとに、典型的な聞き手では、音の物理的な強さが約10倍になったとき、聞こえる大きさは約2倍になるという近似的な関係を示しました。刺激の強さが10倍でも、感じる大きさは10倍にはならない例です。この論文は複数の研究を整理したもので、全員がどの音でも同じ割合で感じると確かめたわけではありません(Stevens, 1955)。

一方、スティーブンス(1957)は、感じる強さの増え方を表す指数が、扱う感覚によって異なることを整理しました。音の大きさのように指数が1より小さい場合もあれば、光の点滅の速さをどう感じるかなど、指数が1より大きい例も挙げています(Stevens, 1957)。

ここで比べているのは、音のエネルギーの強さと聞こえる大きさ、光の点滅の頻度と感じる速さという、それぞれ異なる組み合わせです。どの感覚でも同じ数値を当てはめることはできません。

研究の条件を変えると、指数も変わるのか

TeghtsoonianとTeghtsoonian(1978)は、大学生を対象に、音の大きさや、目の前の物までの距離の感じ方を調べました。参加者に聞こえた音や見えた距離を数字で答えてもらう方法と、指定された数字に合うように音の強さや物の位置を調整してもらう方法を使っています。

実験では、比べる音量や距離の範囲を複数用意しました。音の大きさの課題では、感じた大きさを数字で答える方法でも、数字に合う音量に調整する方法でも、比較する範囲によって求められた指数に明確な差が見られました。一方、距離の課題では、数字に合う位置へ対象を動かす方法では差が確認されたものの、見えた距離を数字で答える方法では、統計的に明確な差は確認されませんでした。また、二つの回答方法で求められる指数の大小関係も、比較する範囲によって変わりました(Teghtsoonian & Teghtsoonian, 1978)。

さらにBernasconiとSeri(2016)は、刺激の範囲、基準となる刺激の位置、複数人の回答のまとめ方によって指数の見積もりが変わる問題を、過去の研究データと数理的な分析から検討しました(Bernasconi & Seri, 2016)。

そのため、ある実験で得られた指数を、その感覚に固有で変わらない数字として使うことには注意が必要です。べき法則は感覚と刺激の関係を整理する有力な方法ですが、測定条件にかかわらず必ず成り立つ規則という意味ではありません。

ウェーバーの法則・フェヒナーの法則とは何が違うのか

似た名前の考え方でも、答えようとする問いが異なります。

  • ウェーバーの法則:もとの刺激から、どの程度変われば違いに気づけるかを扱います。
  • フェヒナーの法則:刺激が同じ倍率ずつ増えたとき、感じる強さは同じ幅ずつ増えると考えます。
  • スティーブンスのべき法則:刺激が同じ倍率ずつ増えたとき、感じる強さが何倍になるかを、感覚に応じた指数で表します。

フェヒナーとスティーブンスは、どちらも刺激と感じる強さを結び付けようとした点で共通します。ただし、両者が示した数式の形は異なります。どちらがある感覚のデータをよく説明するかは、扱う刺激や測定方法を踏まえて検討する必要があります(Stevens, 1957)。

身近な場面で考える

たとえば、家で音楽を聴く人が、スピーカーの音を少し大きくしたとします。つまみの位置や機器の出力が2倍になっても、本人が「音が2倍の大きさになった」と感じるとは限りません。耳に届く音の物理的な強さと、聞こえる大きさは、同じ物差しでは測れないからです。

これは考え方を理解するための仮の例です。実際には、スピーカーのつまみの位置、音のエネルギー、聞こえる大きさの間に、それぞれ別の関係があります。日常のつまみ操作だけから、べき法則の指数を求められるわけではありません。

この法則を知ると、同じ「2倍」という物理的な変化でも、人の感じ方まで2倍になるとは限らない理由を考えやすくなります。何の刺激をどんな条件で比べ、その人がどの程度の強さに感じたのかを分けて捉えることが大切です。

参考文献・出典

Stevens, S. S. (1957). On the psychophysical law. Psychological Review, 64(3), 153–181. 感じる強さを数値で表す方法と、感覚ごとに異なる指数を持つべき法則を提案した論文です。確認できた要旨と書誌情報に基づいて参照しました。

Stevens, S. S. (1955). The measurement of loudness. The Journal of the Acoustical Society of America, 27(5), 815–829. 特定の高さの音について、物理的な音の強さと聞こえる大きさの関係を、過去の研究から整理した根拠です。

Teghtsoonian, R., & Teghtsoonian, M. (1978). Range and regression effects in magnitude scaling. Perception & Psychophysics, 24(4), 305–314. 音の大きさと距離の判断を使い、比較する範囲や回答方法によって指数がどう変わるかを調べた実験の根拠です。

Bernasconi, M., & Seri, R. (2016). What are we estimating when we fit Stevens’ power law?. Journal of Mathematical Psychology, 75, 137–149. 刺激の範囲や回答のまとめ方によって指数の推定が変わる問題を、理論と研究データから検討した論文です。