プレマックの原理とは?よくする行動が別の行動を後押しする仕組み
宿題を始める前はなかなか机に向かわないのに、「終わったら好きな漫画を読もう」と決めると取りかかりやすくなることがあります。なぜ、別の活動をする機会が、目の前の行動を後押しするのでしょうか。
プレマックの原理とは、普段から自発的によく行う活動を、あまり行わない活動の後にできるようにすると、先に行う活動が増える場合がある、という学習の考え方です。単に「好きなことを与えれば必ず頑張る」という意味ではありません。どの活動を普段よく行うか、その機会をどう結び付けるかが重要です。
プレマックの原理とは?
心理学者デイビッド・プレマックは、食べ物などの品物だけでなく、ある活動をする機会そのものが、別の行動を増やす働きを持つことに注目しました。もともとよく起こる行動を、起こりにくい行動の後でできるようにする、という関係です(Premack, 1959)。
ここでいう「よくする行動」は、周囲の人が楽しそうだと想像した行動ではなく、本人が、特別な約束や制限のない状態で実際に多く行っている活動です。たとえば、ある子どもが普段は自分からお絵描きをすることが多い一方、机の片づけは自分からはめったにしないとします。その子が「片づけが終わったらお絵描きができる」という条件で片づける回数を増やすなら、お絵描きをする機会が片づけを後押ししたと考えられます。
このように、ある行動の後に何かが起こり、その結果としてその行動が増えることは、心理学では「強化」と呼ばれます。プレマックの原理が示そうとしたのは、別の行動をする機会も、強化につながり得るという点です。
研究ではどんな行動が増えたのか
プレマックはラットの「水などを飲む」と「回し車で走る」という二つの行動を調べました。1962年の研究では、二つの行動の起こりやすさが逆転するように条件を変え、同じラットで比較しています。
飲む行動の方が起こりやすい条件では、飲む機会が走る行動を増やしました。反対に、走る行動の方が起こりやすい条件では、走る機会が飲む行動を増やしました(Premack, 1962)。つまり、走ることや飲むことのどちらかが、いつでも決まった「ごほうび」になるのではなく、そのときの行動の起こりやすさによって、後押しする側が変わったのです。
続く実験では、ラットが一定回数水をなめると、回し車を使えるようにしました。飲む行動として必要な回数を10回から300回、車輪を使える時間を2秒から20秒の範囲で変えています。その結果、車輪を使える機会によって水をなめる回数が増え、一度になめ続ける長さにも変化が見られました(Premack, Schaeffer, & Hundt, 1964)。別の活動をする機会が、先に必要とされる行動に影響することを調べた研究です。
普段よくする行動なら、必ず効果があるのか
普段の行動回数の違いは重要な手がかりですが、それだけで結果が決まるわけではありません。別の活動をする機会が、普段よりどれほど制限されるかも関わります。
アリソンとティンバーレイクは、ラットに二種類の甘味液をなめさせる実験を行いました。ラットが比較的好まなかった液をなめる機会を、別の液をなめる行動の後に得られるようにしたところ、その機会が普段より制限される条件では、先に必要とされる行動が増えました。一方、同じような制限にならない条件では、増加は見られませんでした(Allison & Timberlake, 1974)。
この結果は、普段の頻度が低い活動でも、できる機会が制限されると別の行動を増やす場合があることを示しています。そのため、プレマックの原理を「好きなことを後に置けば、どんな行動でも増える」と捉えるのは正確ではありません。
2023年に発表された研究のまとめでも、プレマックの原理を使ったとされる研究が、活動の普段の起こりやすさをどのように調べ、条件をどう設定していたかが検討されています(Herrodほか, 2023)。日常の取り組みに応用するときも、行動が本当に増えたかを確かめる必要があります。
身近な場面で考える
たとえば、ある人が休日に読書をする時間を長く取る一方、部屋の整理はいつも後回しにしているとします。そこで自分で「机の上を10分片づけたら、続きの本を読む」と決め、読書を始める前に片づけるようにしました。以前より片づけに取りかかる回数が増えたなら、読書する機会が片づけを後押ししたと考えられます。
これは研究で確かめた事例ではなく、仕組みを理解するための仮の例です。もともと読書をよくする人でも、その日の気分や時間の余裕によっては、同じ約束で片づけが増えないこともあります。また、読書をいつでも自由に始められる状態なら、「片づけた後に読める」という条件の意味が薄れるかもしれません。
プレマックの原理は、行動を後押しするものが必ずしも食べ物や品物ではなく、本人が日頃よく行っている活動の機会にもなり得ることを教えてくれます。その関係は本人の普段の行動と機会の設定によって変わるため、結果は実際の行動の変化から判断します。
参考文献・出典
- Premack, D. (1959). Toward empirical behavior laws. I. positive reinforcement. Psychological Review, 66(4), 219–233. ある行動の自発的な起こりやすさと、別の行動を増やす働きを結び付けた原理の提案の根拠。
- Premack, D. (1962). Reversibility of the reinforcement relation. Science, 136(3512), 255–257. ラットの飲む行動と走る行動の起こりやすさを変え、行動を後押しする関係が逆転した研究の根拠。
- Premack, D., Schaeffer, R. W., & Hundt, A. (1964). Reinforcement of drinking by running: Effect of fixed ratio and reinforcement time. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 7(1), 91–96. 水をなめる行動の後に車輪を使える条件と、そのときの行動の変化の根拠。
- Allison, J., & Timberlake, W. (1974). Instrumental and contingent saccharin licking in rats: Response deprivation and reinforcement. Learning and Motivation, 5(2), 231–247. 比較的好まれない活動でも、機会を制限する条件では別の行動を増やす場合があることの根拠。
- Herrod, J. L., Snyder, S. K., Hart, J. B., Frantz, S. J., & Ayres, K. M. (2023). Applications of the Premack Principle: A Review of the Literature. Behavior Modification, 47(1), 219–246. プレマックの原理を応用した研究の条件と有効性を検討した総説。