メンタルモデル理論とは?頭の中で状況を組み立てて推論する仕組み

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

「赤い箱は青い箱より左、青い箱は緑の箱より左」と聞けば、赤い箱は緑の箱より左にあると判断できます。メンタルモデル理論は、このような判断を、言葉から状況を頭の中に組み立て、そこから結論を考える働きとして説明する理論です。ただし、思い描いた状況が一つしかないとは限りません。

メンタルモデル理論とは?頭の中に「あり得る状況」を作る考え方

メンタルモデル理論は、人が情報を理解し、そこから何かを推測するとき、与えられた条件に合う状況を頭の中に組み立てて考えるという理論です。心理学者フィリップ・ジョンソン=レアードが1983年の著書『Mental Models』で体系的に示しました。メンタルモデルとは、物や人、出来事の関係を頭の中に表した、いわば「仮の状況」のことです(Johnson-Laird, 1983)。

理論では、推論するときに、おおむね次のような働きがあると考えます。

  1. 聞いたことや読んだことに合う状況を組み立てます。
  2. その状況から、成り立ちそうな結論を考えます。
  3. 条件に合う別の状況も探し、そこで結論が成り立つかを確かめます。

ここでいう「推論」とは、分かっていることを手がかりに、まだ直接知らないことについて結論を考えることです。もし一つでも条件に合う別の状況があり、そこでは結論が成り立たないなら、その結論は与えられた情報だけでは確定しません。一方、考えられるどの状況でも成り立つなら、その結論を導けます。こうした説明は、その後の理論整理でも示されています(Johnson-Laird, 2010)。

一つの並び方と、複数の並び方を考える違い

たとえば、赤・青・緑の3つの箱を、横一列の別々の場所に置くとします。箱の位置について、二つの説明を聞いたときの違いを考えてみましょう。

  • 「赤は青より左」「青は緑より左」:左から「赤・青・緑」という順番に決まります。赤が緑より左にあることも分かります。
  • 「赤は青より左」「赤は緑より左」:左から「赤・青・緑」と「赤・緑・青」の両方が考えられます。青と緑のどちらが左かは、この情報だけでは決められません。

後者で最初に「赤・青・緑」を思い浮かべると、その並びだけを正しいと感じるかもしれません。しかし「赤・緑・青」でも、聞いた条件はすべて満たしています。メンタルモデル理論では、ほかのあり得る状況を見つけられるかどうかが、判断の正確さに関わると考えます。

研究で分かっていること:考える配置が増えると難しくなる?

バーンとジョンソン=レアードは1989年、人が物の位置関係をどう推測するか、二つの実験で調べました。参加者は複数の物の前後左右についての説明を聞き、そこから特定の二つの物がどのような位置関係にあるかを答えました。

実験では、説明に合う配置が一通りの問題と、複数の配置を考えて結論を確かめる必要がある問題を比較しました。どちらも正しい位置関係を答えられる問題同士で比べた第2実験では、正答率は一通りの配置で考えられる問題が70%、複数の配置を考える必要がある問題が46%でした。研究者たちは、頭の中で考えなければならない配置の数が、推論の難しさに関係するという理論の予測を支持する結果だと解釈しています(Byrne & Johnson-Laird, 1989)。

ただし、配置の数だけで難しさが決まるわけではありません。1999年の別の実験では、複数の配置があり得る問題でも、並び方が一通りに決まらないことを示す説明が最後に出てくる場合は、最初に出てくる場合より解きやすく、一通りの配置の問題と同じ程度に解ける結果も報告されました。説明を示す順番も、推論の難しさに関わると考えられます(Van der Henst, 1999)。

ここで確かめられたのは、文章から物の位置関係を推測する課題についての結果です。

身近な場面で考える

たとえば、待ち合わせをしている友人から「家を出たよ」と連絡が来たとします。その言葉を聞いて「もうすぐ着くはず」と考える人もいるでしょう。しかし、友人がすぐに電車に乗れた場合もあれば、駅で電車を待っている場合もあります。どちらも「家を出た」という情報には合うため、その情報だけで到着時刻は決まりません。

理論の考え方を日常に当てはめるなら、一つの状況だけを思い浮かべたとき、同じ情報に合う別の状況もないか考えることが手がかりになります。実際の到着時刻を知りたいなら、移動手段や現在地など、足りない情報を確かめる必要があります。

参考文献・出典