注意の瞬きとは?続けて現れる情報を見落とす仕組み
画面の同じ場所に文字が次々と現れるとします。「最初の目当ての文字は分かったのに、その少し後に出た別の文字には気づかなかった」ということがあるかもしれません。文字が見える時間の短さだけでなく、直前の情報に注意を向けていたことも関わります。
注意の瞬きとは、短い間隔で続けて現れる二つの目標を見つけようとすると、一つ目を捉えた後、およそ0.2〜0.5秒以内に現れた二つ目を報告しにくくなる現象です。英語では「attentional blink」と呼ばれます。目を閉じる普通のまばたきとは異なり、注意と視覚情報の処理についての現象です。
注意の瞬きとは?画面に続けて出る二つの目標を調べる
研究では、画面の同じ位置に数字や文字を短時間ずつ続けて表示します。たとえば、約0.1秒ごとに数字が入れ替わる中に、二つのアルファベットを紛れ込ませます。参加者には、表示が終わってから、その二つの文字が何だったかを答えてもらいます。
このとき、一つ目の文字が出てから二つ目の文字が出るまでの間隔を変えます。一つ目からすぐに二つ目が出る場合、間に数字がいくつか入る場合、十分に間隔がある場合を比べます。研究者は一般に、一つ目を正しく答えられた場合に限って、二つ目を正しく答えられた割合を調べます。こうすると、一つ目に気づいていなかったため二つ目も答えられなかった場合と区別しやすくなります(Dux・Marois、2009)。
ここでいう「目標」は、参加者が探すよう指示された文字などです。その間に現れる、答える必要のない数字などは、目標ではない情報です。二つ目が画面上に現れなかったのではなく、実際に表示されたにもかかわらず、後で正しく報告されにくくなる点が重要です。
どのくらいの間隔で起こるのか
典型的な実験では、二つ目の目標が一つ目のおよそ200〜500ミリ秒後に現れると、離れた時間に現れる場合よりも報告しにくくなります。200ミリ秒は0.2秒、500ミリ秒は0.5秒です。この時間の範囲は研究でよく見られる目安であり、すべての人や表示方法で同じ長さになるわけではありません(Chun・Potter、1995)。
興味深いのは、二つ目が一つ目の直後に現れると、かえって正しく答えられる場合があることです。たとえば一文字あたり約0.1秒で表示する実験では、二つの目標が途中の数字を挟まず続いたとき、後ろの目標への成績が保たれる場合があります。一つ目と二つ目の間に数字が入った場合とは結果が違うのです。この例外も、注意の瞬きの仕組みを考える手がかりになります(Dux・Marois、2009)。
なぜ二つ目を見落としやすくなるのか
一つの説明は、一つ目の文字を見分け、その内容を後で答えられるようにしている間は、二つ目にも同じように注意を向けることが難しくなるというものです。最初に目標を見つける処理と、その内容を確かな記憶にする処理には、時間や注意が必要だと考えられています。
また、目標のすぐ後に現れる、答える必要のない文字などが、目標の見分けやすさに影響するという説明もあります。目標と目標でない情報を区別する働きや、新しい目標に注意を向け直す働きも研究されています。
2009年の総説でダックスとマロワは、一つ目の目標を選んで記憶し、次の目標に注意を向け直す過程など、複数の働きが関わると整理しています(Dux・Marois、2009)。したがって、目が情報を全く受け取らなかった、あるいは注意を一つ目に全部使い切ったと決めつけることはできません。
研究で分かっていること
1992年:一つ目を見分けた後に、二つ目の検出が一時的に難しくなった
レイモンドら(1992)は、画面に文字を次々と表示し、参加者にはまず、決められた特徴を持つ一つ目の文字を特定してもらいました。続いて別の指定された文字があったかどうかを答えてもらいました。二つ目を検出できるかどうかを、表示するタイミングを変えて調べたのです。
一つ目の文字は比較的正確に答えられましたが、二つ目がその約180〜450ミリ秒後に現れると、検出しにくくなりました。一方、直後に現れた場合や、さらに遅く現れた場合には検出しやすくなりました。
また、一つ目の直後に短い空白を入れたり、一つ目の文字を特定する課題をなくしたりすると、同じ低下は見られませんでした(Raymondら、1992)。この実験は、二つ目の情報の表示時間だけでなく、一つ目の情報を処理することや、直後に何が表示されたかが関わる可能性を示しました。
1995年:二つの文字を探す実験でも、同じ時期の見落としが確認された
チュンとポッター(1995)は、数字の間に現れる二つのアルファベットを答えてもらうなど、七つの実験を行いました。一つ目を正しく答えられたときでも、二つ目が約200〜500ミリ秒後に現れると、答えられない場合が増えました。
二つ目だけでなく三つ目の目標を加えた実験や、一つ目の直後に現れる数字と目標がどれくらい区別しやすいかを変える実験も行いました。その結果を踏まえ、研究者は、素早く目標を見つける段階と、それを確実に覚えておく段階を分ける説明を提案しました(Chun・Potter、1995)。この二段階の説明は理論であり、実験によって二つの独立した場所が直接見えたという意味ではありません。
2009年:目標の間に邪魔な文字がなくても、見落としが起きた
ニューヴェンシュタインら(2009)は、二つの目標の間に数字などを挟まず、空白の時間を置く条件でも調べました。二つ目の文字を短く表示し、その直後に別の模様を表示して見分けにくくした条件では、二つ目を答えにくくなる現象が確認されました。
一方、目標と目標の間に、さらに答える必要のある文字を続けて表示したり、二つ目の直前に別の目標を示したりすると、その低下が弱くなりました(Nieuwensteinら、2009)。1992年の実験とは、空白の入れ方や二つ目の見分けにくさなどが異なります。結果を合わせると、邪魔な文字があることだけでは、この現象を説明しきれないと分かります。
2023年:直後の目標を拾う場合にも、表示速度の限界があった
キマタら(2023)は、十枚の画像を順番に表示し、あらかじめ示した目印の画像の直後に出る画像を答えてもらう課題を使いました。五つの実験で画像を切り替える速さや、一枚の画像を表示する長さなどを変えました。
目印の画像から直後の画像に注意を向けるには、およそ50〜100ミリ秒の時間が必要だと考えられる結果でした。画像が現れている時間だけを短くした場合よりも、次の画像へ切り替わる速さを上げた場合に成績が下がりました(Kimataら、2023)。直後の二つ目を捉えやすいという例外にも、時間的な条件があることを示しています。
身近な場面で考える
たとえば、学校の催しで、参加者が画面に一瞬ずつ表示される数字の中から二つの文字を見つけるゲームをしたとします。最初の文字は見つけたのに、少し後に現れた二つ目は答えられなかったとします。
この場合、二つの文字が現れた時間の間隔や、間に表示された数字、最初の文字を覚えようとしていたことなどが影響したかもしれません。ただし、これは研究で調べた現象を考えるための仮の例であり、その人が答えられなかった原因を一つに特定するものではありません。
注意の瞬きを知ると、一つ目の情報が見えたからといって、その直後の情報も同じように受け取れるとは限らないことが分かります。重要な案内を短時間に続けて示す場合、見る時間や確認する機会を設けることは考えられますが、特定の表示方法なら見落としを必ず防げると確かめた研究結果ではありません。
参考文献・出典
- Raymond, J. E., Shapiro, K. L., & Arnell, K. M. (1992). Temporary suppression of visual processing in an RSVP task: An attentional blink? Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 18(3), 849–860. 一つ目の文字の特定後、二つ目の指定文字を検出しにくくなる時間と、直後の空白・課題の有無の影響を示した原著。原著の冒頭と公開要旨を確認。
- Chun, M. M., & Potter, M. C. (1995). A two-stage model for multiple target detection in rapid serial visual presentation. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 21(1), 109–127. 二つの目標を見つける課題の七つの実験と、二段階による理論的説明。公開要旨を確認。
- Nieuwenstein, M. R., Potter, M. C., & Theeuwes, J. (2009). Unmasking the attentional blink. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 35(1), 159–169. 二つの目標の間が空白であっても起こる見落としと、目標を連続表示した場合の改善。公開全文の方法と結果を確認。
- Dux, P. E., & Marois, R. (2009). The attentional blink: A review of data and theory. Attention, Perception, & Psychophysics, 71(8), 1683–1700. 典型的な時間の範囲、直後の目標が見落とされにくい条件、複数の仕組みの説明を整理した総説。公開本文・要旨を確認。
- Kimata, A. R., Zheng, B., Watanabe, T., & Asaad, W. F. (2023). The temporal cost of deploying attention limits accurate target identification in rapid serial visual presentation. Scientific Reports, 13, Article 3590. 続けて現れる画像を使い、次の画像に注意を向ける速さと表示時間の違いを調べた五つの実験。公開全文の方法と結果を確認。