検索誘導性忘却とは?一部を思い出すことが他の記憶に与える影響

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

いくつかの果物の名前を覚えたあと、「みかん」や「りんご」だけを繰り返し思い出したとします。練習した二つは答えやすくなる一方、同じ果物の仲間でも練習しなかった名前が、後で出てきにくくなる場合があります。

検索誘導性忘却とは、覚えた情報の一部を繰り返し思い出すことで、それと関連する別の情報が、後の記憶テストで思い出しにくくなる現象です。ここでいう「検索」はインターネット検索ではなく、頭の中から記憶を探し出すことを指します。ただし、思い出した内容に関連するものが必ず忘れられるわけではありません。

検索誘導性忘却とは?何と何を比べるのか

この効果を調べる実験では、まず「果物―りんご」「果物―みかん」「動物―うさぎ」のように、仲間の名前と個々の言葉を組にして覚えてもらいます。「果物」や「動物」は、後で名前を思い出すときの手がかりになります。ここで挙げた日本語の言葉は、実験方法を説明するための例です。

次に、いくつかの仲間から一部の言葉だけを選び、「果物―み○○」のようなヒントを使って、覚えた名前を繰り返し答えてもらいます。最後には、初めに覚えた名前をできるだけ思い出してもらいます。

このとき、言葉は三つの種類に分かれます。

  • 練習した言葉:「果物」の仲間から選び、繰り返し思い出した「みかん」など
  • 同じ仲間で練習しなかった言葉:「果物」の仲間として覚えたが、思い出す練習をしなかった「りんご」など
  • 仲間ごと練習しなかった言葉:「動物」の仲間など、思い出す練習をしなかった仲間に含まれる言葉

効果を判断するうえで重要なのは、二つ目と三つ目の比較です。同じ仲間で練習しなかった言葉の方が、仲間ごと練習しなかった言葉よりも思い出しにくい場合、関連する言葉を選んで思い出したことによる影響があると考えられます。練習した言葉と練習しなかった言葉だけを比べても、この影響を十分には区別できません(Andersonら、1994)。

研究で分かっていること

1994年:練習した言葉は覚えやすく、関連する別の言葉は思い出しにくくなった

アンダーソンら(1994)は、大学生を対象に三つの実験を行いました。最初の実験では36人が、八つの仲間に分けられた言葉を各六つずつ学びました。その後、八つの仲間のうち四つについて、六つの言葉から三つを選び、仲間の名前と最初の数文字を手がかりに、それぞれ三回ずつ答える練習をしました。

約20分後の記憶テストでは、練習した言葉は平均73.6%思い出されました。一方、同じ仲間でも練習しなかった言葉は37.5%で、仲間ごと練習しなかった言葉の48.4%を下回りました。これらは最初の実験で調べた言葉の種類ごとの平均であり、日常生活での忘却率ではありません(Andersonら、1994)。

後の二つの実験では、答える順番が結果に影響する可能性も調べました。関連する言葉への影響は、練習した言葉を先に答えたことだけでは説明できず、少なくとも約20分後まで確認されました。一方、仲間の中でよく挙げられる言葉の方が、珍しい言葉より影響を受けやすいという条件の違いも見られました。

2000年:何を思い出す練習にするかで結果が違った

アンダーソンら(2000)は、初めに覚えた言葉の一部を練習する方法を変えました。一方の条件では「果物―み○○」のように、仲間の名前から個々の言葉を思い出させました。もう一方では、個々の言葉を見せて、そこから「果○」のようなヒントを使い仲間の名前を答えさせました。

どちらの条件でも練習に使った言葉は後でよく思い出されましたが、練習しなかった関連語が思い出しにくくなったのは、仲間の名前から個々の言葉を探して答えた条件だけでした。研究者は、関連するほかの言葉も候補に上がる状況で、目標以外の言葉を抑える働きが関わる可能性を指摘しました(Andersonら、2000)。

2011年:言葉同士のつながりが強いと、忘却が見られなくなった

グッドモンとアンダーソン(2011)は、練習した言葉と練習しなかった言葉の間に、意味のつながりが多い場合と少ない場合を比べる四つの実験を行いました。

言葉同士のつながりが少ない条件では、練習していない関連語が思い出しにくくなりました。しかし、つながりが多い条件では、その違いが見られなくなりました。同じ仲間の情報がどのように結び付いているかによって、忘却の起こり方が変わることを示した結果です(Goodmon・Anderson、2011)。

2012年:競い合う言葉を探さない練習でも、忘却が見られた

一方、ラーイマーカーズとヤカブ(2012)は、個々の言葉を示し、その仲間の名前を答える方法を使って二つの実験を行いました。この方法では、同じ仲間のほかの言葉を選び出す必要はありません。

それでも、練習に使わなかった関連語は、仲間ごと練習しなかった語より思い出されにくくなりました。2000年の研究とは異なる結果であり、別の言葉を思い出さないよう抑える働きが、常に必要とは限らないという説明を支えています(Raaijmakers・Jakab、2012)。

2014年の統合分析でも、仕組みについての議論が続いた

村山ら(2014)は、多数の検索誘導性忘却研究をまとめ、なぜこの現象が起こるのかを検討しました。全体としては、目標以外の情報を抑えるという説明を支持する結果が多くありました。しかし、その説明では捉えにくい結果もあり、どの方法で記憶を調べるかによって結論が変わることが示されました(Murayamaら、2014)。

つまり、関連する情報を選んで思い出すと、ほかの情報が答えにくくなる現象は研究で確認されてきましたが、その仕組みが一つに確定したわけではありません。

なぜ一部を思い出すと、ほかの記憶が出てきにくくなるのか

一つの説明は、目当ての言葉を探すとき、同じ仲間のほかの言葉も頭に浮かびやすくなるため、目当て以外を一時的に抑えて答えを選ぶというものです。その影響が後の記憶テストにも残れば、練習しなかった言葉が思い出しにくくなる可能性があります。

別の説明は、練習した言葉が強く思い出されるようになり、後で仲間の名前を手がかりにしたとき、ほかの言葉より先に出てきてしまうというものです。この場合、練習しなかった言葉そのものが弱くなったと考えなくても、答えにくさを説明できます。

2000年と2012年の実験結果が異なることや、2014年の統合分析を踏まえると、どちらか一方だけであらゆる条件を説明するのは難しい状況です。ここでいう「忘却」は、特定の記憶テストで思い出しにくくなることを指し、覚えた内容が脳から完全に消えたと確かめたわけではありません。

テスト効果との違い

覚えたことを自分で思い出す練習をすると、練習した情報自体が後でも思い出しやすくなることがあります。これは「テスト効果」と呼ばれ、検索誘導性忘却と矛盾しません。

検索誘導性忘却で注目するのは、練習したものではなく、同じ手がかりに結び付いているのに、練習しなかった情報です。1994年の実験では、練習した言葉の記憶がよくなったことと、ほかの関連語が思い出しにくくなったことが、同じ実験の中で見られました(Andersonら、1994)。

身近な場面で考える

たとえば、家族で旅行したときの出来事を友人に話す場面を考えます。その人は旅行中に入った店のうち、特に気に入った一軒の話を何度もしています。後になって「ほかにはどんな店に入った?」と尋ねられると、別の店の名前がすぐには出てこないかもしれません。

これは検索誘導性忘却を理解するための仮の例です。実際に店の名前が出てこない理由には、最初からよく覚えていなかったことや時間の経過なども考えられます。一つの出来事を繰り返し話したから必ずほかの出来事を忘れる、という研究結果ではありません。

この現象を知ると、思い出す練習が役立つ一方で、どの情報ばかりを思い出し、どの情報には触れていないかにも目を向けられます。試験勉強などで一部の項目だけを練習した場合は、まだ確かめていない関連項目にも目を通すことを考えられますが、これだけで忘却を確実に防げるという意味ではありません。

参考文献・出典