ゼイガルニク効果とは?未完了の課題は本当に記憶に残りやすいのか
途中でやめた作業のことが、終わった作業よりもよく頭に残ると聞いたことはないでしょうか。実際にそうなる場合はありますが、未完了だから必ず覚えやすいとはいえません。
ゼイガルニク効果とは、終える前に中断された課題の方が、終えた課題よりも後で思い出されやすいとする心理現象です。1927年の研究で報告されましたが、後の研究では反対の結果も見られ、2025年に多くの研究をまとめた分析でも、全体として未完了の課題の記憶が優れる結果は確認されませんでした。
ゼイガルニク効果とは?何を比べているのか
この効果が調べているのは、途中で中断された課題と、最後まで終えた課題のどちらを後からよく思い出せるかという違いです。たとえば、一人にいくつもの問題を出し、その一部は解いている途中でやめてもらい、残りは終わりまで取り組んでもらいます。後で、どのような問題に取り組んだかを思い出して答えてもらい、二種類の問題の記憶を比べます。
ここで測るのは、問題の正解を覚えているかとは限りません。どの課題に取り組んだかを思い出せるかが中心です。また、未完了の作業が気になったり、続きをやりたくなったりすることと、記憶テストでその作業を多く思い出せることは、別の事柄です。
なぜ、未完了の課題が記憶に残ると考えられたのか
初期の研究では、何かを終えようという気持ちが生まれると、その課題に向かう心の働きが続き、完了すると落ち着くという説明が提案されました。途中で止められると「まだ終わっていない」という状態が残るため、課題を思い出しやすくなるという考え方です(Ghibellini・Meier、2025)。
ただし、これは記憶の違いを説明するための考え方であり、未完了の課題が必ず強く記憶される仕組みを確かめたものではありません。どれほど長く課題に取り組んだか、問題の難しさ、どの時点で作業が止まったかなども、後の記憶に関わる可能性があります。
研究で分かっていること
1927年の研究では、中断した課題を多く思い出した
心理学者ブルーマ・ゼイガルニクは1927年、参加者に計算問題やパズル、手を使って物を作る作業など、およそ20種類の課題を行ってもらいました。その約半分は途中で中断し、残りは最後まで行えるようにしました。その後、取り組んだ課題を思い出してもらったところ、完了した課題より中断した課題の方が多く挙げられたと報告しました(Seifert・Patalano、1991による原研究の紹介)。
この結果から、未完了の状態が記憶に関わるという考え方が広まりました。しかし、同じような課題を後から調べた研究では、いつも同じ結果が得られたわけではありません。
1991年の再検証では、課題の条件で結果が反対になった
セイファートとパタラーノ(1991)は、大学生39人に20の文章問題を解いてもらいました。半分は考えている途中で研究者が止め、残りは解答を終えるまで取り組んでもらい、その後どの問題を覚えているかを調べました。
思い出せた問題の割合は、中断した問題で平均39%、最後まで取り組んだ問題で平均54%でした。初期の報告とは逆に、終えた問題の方がよく記憶されていたのです。ただし、最後まで取り組んだ問題の方が、考える時間も長くなっていました。
続く実験では大学生69人に問題ごとの取り組み時間をほぼ同じにし、時間内に解けた問題と、解けなかった問題を比べました。すると、思い出せた割合は解けなかった問題で平均45%、解けた問題で平均33%となり、今度は未解決の問題の方がよく思い出されました(Seifert・Patalano、1991)。
ただし、後の実験では、研究者が途中で止めたのではなく、参加者自身が時間内に解けなかった問題を未完了としています。解けた問題と解けなかった問題の数にも違いがありました。したがって、この二つの実験だけで、記憶の差が中断や未完了だけによって生まれたとは判断できません。
2025年に38報をまとめた分析では、全体の記憶の差は見られなかった
ギベリーニとマイヤー(2025)は、課題を中断した場合と完了した場合の記憶を比べた研究をまとめて調べました。そのうち38報の結果を、参加者数を考慮してまとめると、中断された課題を思い出した平均数と、完了した課題を思い出した平均数の比は0.99でした。
比が1なら両方の記憶は同程度という意味です。0.99はほぼ1なので、この分析では、中断された課題が全体として特によく思い出されるという結果は得られませんでした。1927年の研究を集計から除いても同じ値でした(Ghibellini・Meier、2025)。
研究によって課題の種類や中断の仕方、参加者の取り組み方は異なります。個々の条件で未完了の方がよく思い出される場合がある一方、「未完了の課題なら必ず記憶に残りやすい」という一般的な規則は支持されていません。
「未完了のことが気になる」とはどう違うのか
まだ終えていない仕事や用事が、作業を離れた後も気になることはあります。ウェンシェら(2026)は、未完了の仕事と、勤務時間外に仕事について考えることとの関係を調べた複数の研究をまとめ、両者の間に関連があると報告しました(Wendscheら、2026)。
ただし、これは仕事を離れた時間に仕事のことを考える傾向を調べた結果です。完了した仕事より未完了の仕事を記憶テストで多く思い出せたと示したわけではなく、未完了の仕事が思考を増やしたという因果関係まで確かめたものでもありません。
また、中断した課題を自分から再開しようとする傾向は「オヴシアンキーナ効果」と呼ばれ、課題をどれだけ思い出せるかを扱うゼイガルニク効果とは区別されます(Ghibellini・Meier、2025)。
身近な場面で考える
たとえば、休日に旅行の予定を考え始めた人が、訪ねたい場所を調べている途中で用事が入り、作業をやめたとします。夜になって旅行のことが気になり、調べかけた場所を思い出すかもしれません。
しかし、その人が別の日に最後まで決めた旅行の予定と比べて、今回の未完了の予定をより多く覚えているかどうかは、実際に比べてみないと分かりません。気になって思い浮かぶことと、後から正確に思い出せることは同じではないからです。これは研究結果を置き換えたものではなく、違いを理解するための仮の例です。
ゼイガルニク効果を知ると、未完了の課題が気になる理由を考えるきっかけになります。ただし、覚えたいことをわざと途中でやめれば記憶がよくなる、とはいえません。中断したかどうかに加え、どのような課題を、どれくらい取り組んだかも考える必要があります。
参考文献・出典
- Seifert, C. M., & Patalano, A. L. (1991). Memory for Incomplete Tasks: A Re-examination of the Zeigarnik Effect. Proceedings of the Thirteenth Annual Conference of the Cognitive Science Society, 114–119. 1927年の実験の概要、および1991年に行った二つの問題解決実験の条件・記憶結果の根拠。
- Ghibellini, R., & Meier, B. (2025). Interruption, recall and resumption: a meta-analysis of the Zeigarnik and Ovsiankina effects. Humanities and Social Sciences Communications, 12, Article 962. 38報の記憶比較をまとめた結果、当初の説明、課題の再開と記憶の区別の根拠。
- Wendsche, J., Weigelt, O., & Syrek, C. J. (2026). Unfinished work tasks and work-related thoughts during off-job time: meta-analysis of the Zeigarnik effect in a work-recovery context. Anxiety, Stress, & Coping, 39(4), 385–407. 未完了の仕事と勤務時間外の仕事関連の思考との関係をまとめた研究。公開要旨の範囲で確認。