オヴシアンキーナ効果とは?中断した課題を再開したくなる傾向
途中まで解いたパズルを、電話がかかってきたためにいったん閉じたとします。電話が終わると、ほかのことを始めるより先に、パズルの続きを解きたくなるかもしれません。なぜ中断した作業に戻ろうとするのでしょうか。
オヴシアンキーナ効果とは、取り組んでいた課題を途中で中断されると、再び取り組める状況になったときに、自分からその課題を再開しようとする傾向です。実験では再開する人が比較的多いことが報告されていますが、どの作業も必ず再開したくなるという意味ではありません。
オヴシアンキーナ効果とは?中断後に何をするかを調べる現象
この効果で注目するのは、作業を止めたときの気分だけでなく、再開する機会が与えられたときに実際に何を選ぶかです。たとえば、参加者がパズルを解いている途中で別の課題を頼まれ、元のパズルが未完成のままになったとします。その後、パズルに戻ることも、別の作業をすることもできる場面で、参加者が自分から元のパズルを再開するかを調べます。
1928年に心理学者マリア・オヴシアンキーナは、途中で止められた課題を、参加者が再び取り組めるときに自発的に再開しようとすることを報告しました。後の研究でも、途中でやめた課題に戻る行動が調べられています(Ghibellini・Meier、2025)。
「続きをやりたい」と思っただけの場合と、実際に手を動かして再開した場合は区別が必要です。研究によっては、再開しようとする様子まで記録しており、何を再開と数えるかも同じではありません。
なぜ中断した課題に戻ろうとするのか
この効果のもとになった考え方では、人が「この課題を終えたい」という目標を持つと、達成するまでその目標に向かう気持ちが残ると説明されます。途中で止められると、目標が達成されないため、続きに戻ろうとするという考え方です(Ghibellini・Meier、2025)。
ただし、これは観察された再開行動を説明する一つの考え方です。実際に再開するかどうかには、その課題を面白いと感じているか、代わりにできることは何か、失敗を避けたい気持ちがあるかなども関わります。中断によって必ず同じ強さの「やり遂げたい気持ち」が生まれると確かめられたわけではありません。
研究で分かっていること
2025年の統合分析では、約67%が再開した
ギベリーニとマイヤー(2025)は、オヴシアンキーナ効果について報告した21報の研究をまとめました。研究ごとの参加者数を考慮して再開の割合を平均すると、約67%でした。1928年の最初の研究を除いても、平均は約67%とほぼ変わりませんでした(Ghibellini・Meier、2025)。
この数字は、研究で用意された機会に、中断した課題を再開した人、または再開しようとする様子が記録された人についての集計です。研究ごとに課題の種類や中断の仕方、別の作業を選べるかどうかが異なり、比較の基準となる条件も揃っていません。そのため、日常生活で誰もが67%の確率で作業に戻るという意味ではなく、この数字だけで中断そのものが再開したい気持ちを強めると断定することもできません。
別の課題を選べるとき、得失の条件で再開の選び方が変わった
リーバーマンら(1999)は、途中で止めた課題を再開するか、代わりの課題に移るかという選択を人にしてもらいました。最初の二つの研究では、課題を終えると得点を得られるようにする場合と、終えないと得点を失うようにする場合を比べました。
その結果、得点を失うことを避ける条件の参加者の方が、得点を得ることを目指す条件の参加者よりも、途中で止めた課題を再開しやすい傾向が見られました(Libermanら、1999)。
ここでは、課題を再開できるだけでなく、別の課題に進む選択肢もありました。再開する行動には、未完了だったことに加えて、どのような結果を避けたり得たりしようとしたかも関わると考えられます。
ゲームの中断でも、再開する操作に違いが見られた
バークら(2020)は、成人がコンピューターゲームをしている途中で通信障害を知らせる表示を出し、その表示を消して再開するか、表示が消えるまで待つかを調べました。ゲームの途中で中断した場合と、一回のゲームが終わった直後に中断した場合も比較しました。
三つの研究では、状況に応じて自分から行動を始めやすいと回答した人ほど、ゲームの途中で中断されたときに、再開のためのボタンを自分から押しやすく、押すまでの時間も短い傾向がありました(Birkら、2020)。
この研究で調べたのは、ゲーム画面を再開するためのボタン操作です。途中で止められたゲームへの戻りやすさには個人差があることを示しますが、日常の仕事や勉強をどれだけやり遂げるかを直接測ったものではありません。
ゼイガルニク効果との違い
二つの効果は、どちらも未完了の課題を扱うため混同されやすいものです。しかし、調べている行動が違います。
- オヴシアンキーナ効果:中断された課題に、機会ができたとき自分から戻るかを調べます。
- ゼイガルニク効果:中断された課題を、完了した課題より後で多く思い出せるかを調べます。
2025年の統合分析では、課題を再開する傾向は比較的一貫して見られましたが、中断された課題の記憶が優れているという結果は全体として確認されませんでした(Ghibellini・Meier、2025)。課題の続きをやりたくなったことだけで、内容をほかの課題よりよく覚えているとはいえません。
身近な場面で考える
たとえば、家で写真を整理している人が、途中で家族に呼ばれて作業を中断したとします。用事が終わったあと、テレビを見ることもできますが、片づけかけた写真が気になり、また整理を始めたとします。
この例では、写真の整理を終えたいという目標が残っていたため、作業に戻ったのかもしれません。ただし、整理が好きだったから、目の前に写真があったからなど、ほかの理由も考えられます。これは効果を理解するための仮の場面であり、一つの出来事から心理的な原因を断定できるわけではありません。
オヴシアンキーナ効果を知ると、作業を中断したときに、続きを再開したくなる気持ちや行動が生じることを理解する手がかりになります。その一方で、すべての中断がやる気を高めるわけではありません。中断の仕方や、その後に選べることによって再開のしやすさが変わる点も大切です。
参考文献・出典
- Ghibellini, R., & Meier, B. (2025). Interruption, recall and resumption: a meta-analysis of the Zeigarnik and Ovsiankina effects. Humanities and Social Sciences Communications, 12, Article 962. 1928年の原研究の紹介、21報をまとめた再開率、記憶との区別、結果の条件による違いの根拠。
- Liberman, N., Idson, L. C., Camacho, C. J., & Higgins, E. T. (1999). Promotion and prevention choices between stability and change. Journal of Personality and Social Psychology, 77(6), 1135–1145. 中断課題を再開するか別の課題を選ぶかと、得失の条件の関係を調べた研究。公開要旨と上記の統合分析による方法の説明を確認。
- Birk, M. V., Mandryk, R. L., & Baumann, N. (2020). Just a click away: Action–state orientation moderates the impact of task interruptions on initiative. Journal of Personality, 88(2), 373–390. ゲーム中断のタイミング、再開のボタン操作、行動を始める傾向との関係を調べた三つの研究。公開された方法・結果の該当箇所と要旨を確認。