心理的不応期とは?続けて二つの課題に反応すると遅れが生じる仕組み
二つの合図が立て続けに出たとき、どちらにも気づいているのに、後から出た合図への反応が遅れることがあります。最初の合図にどう反応するかを考えている間に、次の合図が来るためです。
心理的不応期とは、短い間隔で示された二つの合図にそれぞれ素早く反応しようとすると、二つ目の反応に余分な時間がかかりやすくなる現象です。二つの反応を選ぶ作業の一部を同時には進めにくいことが、その理由として研究されています。
心理的不応期とは?二つの合図の間隔と反応時間
研究では、最初の合図に合わせて一つ目のキーを押し、少し後に現れる別の合図に合わせて二つ目のキーを押してもらいます。たとえば、先に聞こえた音の高さで押すキーを選び、続けて画面の色に合わせて別のキーを選ぶ課題です。それぞれの合図が現れてから、対応するキーを押すまでの時間を測ります。
一般に、二つの合図が現れる間隔が短いほど、二つ目の合図から反応までの時間が長くなります。一つ目の反応時間は、合図の間隔を変えてもあまり変わらない場合が多くあります。このような差を調べることで、二つの課題を続けて行うときの時間的な制約を確かめます(Otermansほか、2022)。
ここで測っている中心的な結果は、二つ目の情報を見落としたかどうかではなく、反応するまでにどれだけ時間がかかったかです。短時間に現れた二つ目の情報を正しく報告できるかを調べる研究とは、測定するものが異なります(Arnell・Duncan、2002)。
なぜ二つ目の反応に待ち時間が生じるのか
合図に反応するとき、人はまず音や形などを捉え、何をするかを選び、実際に体を動かします。このうち、合図を見たり聞いたりする初めの段階は、二つの課題である程度同時に進められる場合があります。
一方、どのキーを押すかなど、反応を選ぶ段階は順番待ちになりやすいと考えられています。二つ目の合図をすでに捉えていても、一つ目に対する反応を選び終えるまで、二つ目の反応を選ぶ作業が進みにくくなるのです。
合図の間隔が長ければ、二つ目が現れるまでに最初の反応を選ぶ作業が進んでいます。間隔が短いと、二つの作業が重なる部分が増え、二つ目の反応に待ち時間が生じやすくなります。これは「二つ目が見えていなかった」ことだけでは説明できない遅れです。ただし、どの段階でどれほど遅れるかは課題の組み合わせにも左右されます(Pashler、1984)。
研究で分かっていること
1984年:続けて課題を行うと、後の反応が遅れた
パシュラー(1984)は五つの実験を行いました。そのうちの一つでは、大学生8人に、まず画面の白い印が上と下のどちらにあるかをキーで答えてもらい、その100ミリ秒(0.1秒)後に現れる文字の並びに「Y」が含まれているかどうかを、別のキーで答えてもらいました。
後の文字探しだけを行う場合と、二つの課題を続けて行う場合を比べると、後者では文字探しへの反応が平均254ミリ秒遅くなりました。また、文字の数などを変えて調べた結果は、後の文字を見分ける作業の一部は先の課題と重ねて進められても、反応を選ぶ作業には待ち時間が生じるという説明に合っていました(Pashler、1984)。
254ミリ秒という値は、この実験の参加者と課題の条件で得られた平均です。人が二つのことを続けてすると必ず同じだけ遅れるという意味ではありません。
2022年:合図が近いほど、二つ目の反応が遅れた
オーターマンズらの研究では、覚えた文字を記憶している間に、音の高低に対応するキーと画面の色に対応するキーを順に押してもらいました。音と色の合図の間隔は50、125、200ミリ秒の三つの条件で変えました。
その結果、間隔が短い条件ほど、色への反応が遅くなりました。一方、最初の音への反応時間は、この三つの間隔で大きく変わりませんでした(Otermansほか、2022)。先に現れた合図への反応を選んでいる間、後の反応を選ぶ作業が待たされるという見方を支える結果です。
練習や課題の条件によって、遅れ方は変わる
一方、シューマッハーら(2001)は、簡単な二つの選択反応課題を使った三つの実験で、練習を重ねた参加者の一部が、二つの課題を同時に行っても反応時間がほとんど増えない状態に達したと報告しました。どちらの課題を優先するよう指示するかも、反応の遅れ方に影響しました(Schumacherほか、2001)。
したがって、反応を選ぶ作業が常に同じ長さだけ止まると考えるのは適切ではありません。心理的不応期は多くの条件で観察される傾向ですが、練習や課題の内容によって変わる余地があります。
身近な場面で考える
たとえば、ゲームで効果音が高いときは右のボタン、低いときは左のボタンを押すとします。その直後に画面が赤か青に変わり、今度は色に応じた別のボタンを押さなければならない場面を考えてみましょう。
音を聞き分け、画面の色にも気づいていたとしても、それぞれに対応するボタンを素早く選ぶ必要があります。二つの合図が近いと、後のボタンを決める作業が待たされるかもしれません。これは研究の仕組みを理解するための仮の例であり、実際のゲームで反応が遅れた原因を特定したものではありません。
この現象から分かるのは、二つの情報を受け取れることと、それぞれに対する反応を同時に選べることは別だという点です。素早い反応が必要な場面では、立て続けに複数の判断を求めると遅れが生じうることを考慮するとよいでしょう。
参考文献・出典
- Pashler, H. (1984). Processing Stages in Overlapping Tasks: Evidence for a Central Bottleneck. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 10(3), 358–377. 五つの実験の方法と結果。とくに二つ目の課題を単独で行う場合との比較、反応を選ぶ過程についての検討。
- Otermans, P. C. J., Parton, A., & Szameitat, A. J. (2022). The working memory costs of a central attentional bottleneck in multitasking. Psychological Research, 86, 1774–1791. 音と色の合図の間隔を変えて反応時間を比較した実験と、二つの課題を順に処理する仕組み。
- Arnell, K. M., & Duncan, J. (2002). Separate and shared sources of dual-task cost in stimulus identification and response selection. Cognitive Psychology, 44(2), 105–147. 二つ目の反応時間を測る研究と、二つ目の目標を正しく報告できるかを測る研究の区別。
- Schumacher, E. H., Seymour, T. L., Glass, J. M., Fencsik, D. E., Lauber, E. J., Kieras, D. E., & Meyer, D. E. (2001). Virtually perfect time sharing in dual-task performance: Uncorking the central cognitive bottleneck. Psychological Science, 12(2), 101–108. 一部の参加者の練習後の成績と、課題の優先順位に関する指示の影響。公開要旨で確認できる範囲を記載。