サイモン効果とは?関係のない位置情報が反応に与える影響
たとえば、ゲームで「赤い印なら右のボタン、青い印なら左のボタン」と決められているとします。答えを決めるのは色だけなのに、赤い印が画面の右に出るときと左に出るときでは、ボタンを押す速さが変わることがあります。
サイモン効果とは、色や形などを見て反応を選ぶとき、正解には関係のない印の位置が、反応する速さに影響する現象です。典型的には、印が現れた側と正しいボタンの側が一致する場合、一致しない場合より速く反応できます。
サイモン効果とは?色と位置を分けて考える
研究でよく使われる課題では、画面の左か右に出る印の色を見て、左か右のキーを押してもらいます。どちらを押すかは色で決まっており、印がどこに現れたかは正解を決める手がかりではありません(Lu・Proctor、1995)。
先ほどの「赤なら右、青なら左」というルールで、赤い印が画面の右側に現れた場合を考えてみましょう。このときは、印の位置も正しいキーも右側です。一方、赤い印が左側に現れた場合は、印は左側ですが、押すべきキーは右側のままです。
正しい答えも印の色も同じなのに、印の位置と押すキーの左右が一致するときの方が、反応が速くなる傾向があります。場所について答える課題ではなく、色など別の特徴について答える課題で位置の影響が現れることが、サイモン効果の特徴です。
なぜ関係のない位置が反応に影響するのか
一つの有力な説明では、画面の右側に印が現れると、その位置に引かれて「右側のキーを押す」という反応も起こりやすい状態になると考えます。それとは別に、参加者は「赤なら右、青なら左」という課題のルールを使って、正しいキーを選ぼうとします。
位置によって起こりやすくなった反応と、色によって決まる正しい反応が同じなら、二つはぶつかりません。異なる場合は、位置に引かれた反応と、ルールに従う反応が競い合うため、正しいキーを選ぶまでに時間がかかると考えられています(Lu・Proctor、1995)。
これは実験結果を説明するための考え方です。位置の影響は、反応に使う手段、注意の向け方、これまでに覚えた操作の対応関係などによっても変わります。位置がいつでも同じ強さで反応を妨げるわけではありません。
研究で分かっていること
1969年:音が聞こえた左右の位置が、キーを押す速さに影響した
サイモンとスモール(1969)は、左耳または右耳に聞こえる音を使って反応時間を調べました。参加者は、高い音か低い音かに応じて、左か右のキーを押します。正しいキーを決めるのは音の高さであり、音がどちらの耳に届くかは答えとは無関係です。
ところが、音が聞こえた耳の側と押すキーの側が一致すると、一致しないときより反応が速くなりました。この研究をまとめたルーとプロクター(1995)の総説では、左側への反応でも右側への反応でも、およそ60ミリ秒の差が報告されています。聞こえた音の高さに答える課題でも、音の来た方向が反応の速さに関わったのです(Simon・Small、1969;Lu・Proctor、1995)。
1999年:繰り返し練習しても位置の影響は残った
プロクターとルー(1999)は、大学生60人に文字とキーの組み合わせを使った課題を行ってもらいました。このうち30人は、画面の左か右に現れる「S」または「H」を見て、文字の種類に応じた左右のキーを押す練習を3回に分けて合計1,800回以上行いました。文字が現れる位置は、押すキーを決めるうえでは無関係です。残る30人は、最初の3回は文字が画面中央に現れる課題に取り組みました。
左右に文字が現れる課題を繰り返した30人では、位置と押すキーが一致する場合と一致しない場合の反応時間の差が、最初の回の約22ミリ秒から、2回目と3回目の約14ミリ秒に縮まりました。それでも、位置の影響は残っていました。一方、文字を中央で見ていた別の30人が4回目に左右へ文字が現れる課題に移ると、約21ミリ秒の差が見られました(Proctor・Lu、1999)。
これらは、各条件で多くの反応時間を測って得た平均的な差です。練習により影響が小さくなる場合がある一方、練習しただけで必ずなくなるとはいえません。
位置と反対側を押す練習では、逆の結果も見られた
同じ論文の別の実験では、「左に出たら右、右に出たら左」というように、印の位置と反対側のキーを押す練習を行った後、位置を無視して文字に応じたキーを押す課題に切り替えました。
すると、この練習をした条件では、通常とは逆に、印の位置と正しいキーの側が一致しない場合の方が反応が速いという結果になりました(Proctor・Lu、1999)。位置と反応の結び付きには、その前にどのようなルールで操作していたかも関係します。
身近な場面で考える
たとえば、家で友人と音当てゲームをするとします。ヘッドホンから高い音が聞こえたら右のボタン、低い音なら左のボタンを押すルールです。音は毎回、左右どちらか一方の耳から聞こえるようになっています。
高い音が右耳から聞こえても左耳から聞こえても、正解は右のボタンです。それでも、右耳から聞こえたときの方が素早く押せるかもしれません。音の高さで答えを決めるのに、聞こえる側が反応に影響するという点がサイモン効果とつながります。
これは研究を身近な状況に置き換えた仮の例です。実際に誰かの反応が遅れたとしても、その原因をこの効果だけで決めることはできません。サイモン効果は、判断に使わないはずの位置情報でも、行動を選ぶ速さに関わりうることを教えてくれます。
参考文献・出典
- Simon, J. R., & Small, A. M., Jr. (1969). Processing auditory information: Interference from an irrelevant cue. Journal of Applied Psychology, 53(5), 433–435. 音の高さで左右のキーを選ぶ課題と、音が届いた耳の位置による反応時間の違いを扱った原著。方法と結果の詳細はLu・Proctor(1995)の総説による記述も参照。
- Lu, C.-H., & Proctor, R. W. (1995). The influence of irrelevant location information on performance: A review of the Simon and spatial Stroop effects. Psychonomic Bulletin & Review, 2(2), 174–207. サイモン効果の典型的な課題、音を使った初期研究、反応が競い合うという説明と影響を変える条件を整理した総説。
- Proctor, R. W., & Lu, C.-H. (1999). Processing irrelevant location information: Practice and transfer effects in choice-reaction tasks. Memory & Cognition, 27(1), 63–77. 文字に反応する練習で位置の影響が小さくなった結果と、反対側への反応を練習した後に逆の結果が現れた実験。