ブーバ・キキ効果とは?音と形の間に共通の印象を感じる現象
初めて見る二つの図形があるとします。一つは丸いふくらみがいくつもある形、もう一つは先の尖った突起がいくつもある形です。この二つに「ブーバ」「キキ」という名前を付けるなら、どちらを選ぶでしょうか。
多くの人は、丸みのある形に「ブーバ」、尖った形に「キキ」を結び付けます。このように、言葉の音と目で見た形に、共通する印象を感じて対応づける傾向をブーバ・キキ効果と呼びます。
ブーバ・キキ効果とは?
「ブーバ(bouba)」と「キキ(kiki)」は、もともと特定の形を指す決まった名前ではありません。研究では、意味を決めていないこうした音を聞いた人に、丸みのある図形と角ばった図形のどちらが合うと思うかを選んでもらいます。
たとえば「ブーバ」を聞いて丸い図形を選ぶ人が多く、「キキ」を聞いて尖った図形を選ぶ人も多ければ、形の選び方が音によって偏っていることになります。正解を知っているかどうかを調べるのではなく、聞こえた音からどのような形を連想するかを比べているのです。
ただし、すべての人が同じ組み合わせを選ぶわけではありません。どのような人々にも当てはまるのかを確かめるため、異なる文化や言語での研究が行われています。
文化や言語が違っても同じように感じるのか
ナミビアのヒンバの人々を調べた2013年の研究
ブレムナーら(2013)は、アフリカ南部のナミビアで、西洋の文化に触れる機会が少なく、普段は文字を使わないヒンバの人々を調べました。分析の対象となった34人に、丸い輪郭の形と尖った輪郭の形を示し、「ブーバ」「キキ」という名前をどちらに付けるか尋ねました。
その結果、34人中28人が丸い形を「ブーバ」、尖った形を「キキ」と対応づけました。西洋の文字や生活に慣れていない人々にも、同じような結び付きが見られたことになります(Bremner et al., 2013)。
25言語・917人を調べた2022年の研究
チェヴィエクら(2022)は、日本語を含む25言語を話す計917人を対象に、インターネット上で調査しました。参加者は「ブーバ」「キキ」の音声を順番に聞き、その都度、画面に並んだ丸い図形と尖った図形のうち、音に合うと思う方を選びました。
全体では、ブーバを丸い形、キキを尖った形に対応させる傾向が確認されました。調査には10種類の文字の仕組みを使う言語が含まれ、文字の見た目がこの対応に与える影響は比較的小さいという結果でした(Ćwiek et al., 2022)。
一方、この調査では、ルーマニア語、中国語、トルコ語などの参加者の回答では、一般的な組み合わせが半数未満の言語もありました。言語ごとに参加者の人数も異なるため、特定の言語を話す人が必ずどちらを選ぶとまではいえません。多くの言語に共通する傾向があっても、例外があるのです。
なぜ音と形が結び付くのか
一つの説明として、「ブーバ」と発音するときの唇の丸みと、「キキ」と発音するときの口の動きの違いが、形の印象に関係するという考え方があります。しかし、口の形だけで説明できるかについては検証が続いています。
パッシとアルン(2024)は、人が普通には発音しにくい音でも、形との対応が起こるかを調べました。45人が参加した実験では、話し声を逆再生した音や物をたたいたときの音などを聞かせ、丸い形と尖った形のうち合う方を選んでもらいました。別の28人を対象に、音の高さが異なる単純な音も調べました。
その結果、話し言葉でない音でも、音の特徴によって選ばれる形が変わる傾向が見られました。特に、高い音の成分が多いものほど尖った形を選ぶ傾向があり、発音のしやすさや測定された口の開き方よりも、音自体の特徴の方が回答とよく結び付いていました(Passi & Arun, 2024)。
この研究から、音と形の共通した印象は、発音するときの口の動きだけで生じるわけではないと考えられます。ただし、音のどの特徴がどの程度関わるか、そうした結び付きをどのように身に付けるかについては、引き続き研究が必要です。
身近な場面で考える
たとえば、友人と架空の生き物が登場する絵本を作るとします。丸くふくらんだ体の生き物と、尖った突起のある生き物に名前を付けるとき、「ブーバ」は前者に、「キキ」は後者に似合うと感じるかもしれません。その感覚は、研究で見られた音と形の対応を考える手がかりになります。
これは研究結果を理解するための仮の例です。紹介した実験が直接調べたのは、決められた音と形をどのように組み合わせるかという判断であり、絵本の登場人物の名前として好まれるかどうかではありません。
ブーバ・キキ効果から分かるのは、意味を知らない音であっても、形について似た印象を抱く人が多いということです。ものの名前と見た目が「なんとなく合っている」と感じるときにも、音の響きが判断の手がかりになっている可能性があります。
参考文献・出典
- Bremner, A. J., Caparos, S., Davidoff, J., de Fockert, J., Linnell, K. J., & Spence, C. (2013). “Bouba” and “Kiki” in Namibia? A remote culture make similar shape–sound matches, but different shape–taste matches to Westerners. Cognition, 126(2), 165–172. ヒンバの人々34人の音と形の対応づけを調べた研究。
- Ćwiek, A., et al. (2022). The bouba/kiki effect is robust across cultures and writing systems. Philosophical Transactions of the Royal Society B, 377(1841), 20200390. 25言語・917人における対応の傾向、言語ごとの違い、文字の影響を調べた研究。
- Passi, A., & Arun, S. P. (2024). The Bouba–Kiki effect is predicted by sound properties but not speech properties. Attention, Perception, & Psychophysics, 86, 976–990. 逆再生音声、物音、単純な音を使い、音そのものの特徴と形の選択の関係を調べた研究。