近接の法則とは?近くにあるものをひとまとまりに見る仕組み
同じ大きさの丸印が六つ、横一列に並んでいるとします。二つの丸印の間を狭くし、次の二つとの間を広くすると、六つをばらばらに見るよりも「二つずつの三組」に見えることがあります。
これは近接の法則と呼ばれる、ものの位置関係によって見え方が変わる現象です。近くにあるものどうしは、見た目が同じでも違っても、ひとまとまりとして捉えられやすくなります。
近接の法則とは?
近接の法則とは、いくつもの点や図形が並ぶとき、互いに近い位置にあるものを同じまとまりとして見やすいという、ものの見え方の原理です。点や図形がどのようにまとまって見えるかを研究する「ゲシュタルト心理学」の中で、古くから取り上げられてきました。
ここでいう「まとまり」は、近くの点が視覚的に一組に見えるということです。その点どうしが、実際に同じ種類や役割を持っているとは限りません。また、ただ距離が短ければよいのではなく、ほかの点との間隔と比べて、どこが近いかが大切です。
たとえば、同じ色の六つの点を「一番目と二番目」「三番目と四番目」「五番目と六番目」の間だけ狭くして並べます。その間の、二番目と三番目、四番目と五番目の間隔は広くします。すると、短い間隔で並んだ二つを一組として見やすくなります。一方、すべての点を等間隔に置くと、どこで二つずつ区切るかという手がかりは弱まります。
最初はどのように説明されたのか
心理学者のマックス・ヴェルトハイマーは、1923年に発表した論文で、同じ点が一列に並んでいても間隔によってまとまり方が変わることを示しました。その説明には、点の間隔が3ミリと12ミリで交互に変わる例が登場します。短い間隔で隣り合う点を組として見やすく、広い間隔をまたぐ組み方は見えにくいと述べています(Wertheimer, 1923/1938)。
この例が示すのは、点そのものの大きさや色を変えなくても、並ぶ位置を変えるだけでまとまり方が変わり得るということです。論文では、色の似た点を集めて見る働きなども説明されており、距離の近さが唯一の手がかりだとはされていません。
実験では距離と見え方をどう調べたのか
点の並びを短時間見せた1995年の研究
クボヴィとヴァーヘマンス(1995)は、点が規則的に並ぶ図を7人に短時間見せ、どの方向に点が連なって見えたかを調べました。使った図には、縦や斜めなど複数の方向に点の列を見いだせるものが含まれています。
研究者らは、点どうしの距離や配置を変えたとき、各方向のまとまりが選ばれる割合を調べました。その結果を基に、近くの点ほど一つの列としてまとまりやすいという関係を使った計算上の説明を作り、観察された回答の割合によく合うことを報告しました(Kubovy & Wagemans, 1995)。
一つの図が必ず一通りに見えるのではなく、複数のまとまり方があり得る場合にも、点の距離がどの見え方を選びやすいかに関わっていたのです。
1998年の研究で確かめた「距離の比率」
クボヴィら(1998)は、1995年の実験結果を改めて分析し、点どうしの距離と、どの方向の列がまとまりとして見えたかの関係を詳しく調べました。その結果、ある方向に沿った点の距離が、別の方向に沿った距離より相対的に短いほど、その方向の列として見える割合が高くなる関係を示しました。
さらに、点の並び全体の大きさを変えた実験や、見せる時間の条件を変えた実験でも、この関係が大きく崩れないことを確かめています(Kubovy et al., 1998)。一定の距離より近ければ必ずまとまるというより、同じ図の中での距離の違いが、どの方向にまとまって見えるかを左右することが重要です。
近いものが必ずまとまって見えるのか
近接の法則は、いつでも距離だけでまとまりが決まるという規則ではありません。たとえば、近い点どうしは色が違い、少し離れた点どうしは同じ色だとします。この場合、距離に沿ったまとまりと、似た色に沿ったまとまりが競い合います。
ベン=アヴとサギ(1995)は、距離によるまとまりと、形や明るさの似たものによるまとまりが、別の方向を示す図を使いました。参加者に、点などが横方向と縦方向のどちらにまとまって見えるかを答えてもらったところ、短い時間では距離によるまとまりが早く見えやすく、情報を見る時間が長くなると似たものどうしのまとまりが優勢になるという結果が得られました(Ben-Av & Sagi, 1995)。
このように、どのまとまりが見えやすいかは、点の距離だけでなく、色や形の違い、見る時間などの条件によっても変わります。
身近な場面で考える
たとえば、地域の講座の案内を一枚の紙にまとめるとします。担当者が「日時」という見出しのすぐ下に開催時刻を書き、少し間を空けて「場所」という見出しと会場名を近くに書いたとします。読む人は、見出しとそのすぐ近くの情報を、それぞれ一組として捉えやすくなるかもしれません。
この例は、点や図形で調べられた位置の近さがまとまり方に関わるという関係を、文字の配置に置き換えたものです。紹介した研究では、実際の講座案内を使って読みやすさを測ったわけではありません。
案内や表を作るときには、同じ内容に属する情報の間隔を狭くし、別の内容との間には少し広い間隔を取ることが、一つの工夫として考えられます。近接の法則は、私たちが情報を一つずつではなく、配置されたまとまりとして受け取ることを理解する手がかりになります。
参考文献・出典
- Wertheimer, M. (1923、英訳1938). Laws of Organization in Perceptual Forms. In W. Ellis (Ed.), A Source Book of Gestalt Psychology (pp. 71–88). 点の短い間隔と長い間隔によって、まとまり方が異なることを示した古典的な説明。
- Kubovy, M., & Wagemans, J. (1995). Grouping by Proximity and Multistability in Dot Lattices: A Quantitative Gestalt Theory. Psychological Science, 6(4), 225–234. 7人に短時間示した点の並びで、まとまりの方向が選ばれる割合を調べた研究。
- Kubovy, M., Holcombe, A. O., & Wagemans, J. (1998). On the Lawfulness of Grouping by Proximity. Cognitive Psychology, 35(1), 71–98. 点の距離の比率とまとまり方、図の大きさや時間の条件を変えたときの結果を調べた研究。
- Ben-Av, M. B., & Sagi, D. (1995). Perceptual grouping by similarity and proximity: Experimental results can be predicted by intensity autocorrelations. Vision Research, 35(6), 853–866. 距離の近さと見た目の似かよい方が異なるまとまりを促す場合の、見え方と観察時間の関係を調べた研究。