閉合の法則とは?欠けた輪郭を補って形を見る仕組み

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

紙に描かれた円の輪郭が、ところどころ途切れているとします。それでも、離れた線を一つずつ見るより、欠けたところがつながるような「一つの円」として感じられることがあります。

これは閉合の法則と関係する見え方です。私たちは、線の一部が欠けていても、その並びから一つの形を捉えることがあります。ただし、いつでも欠けた部分が補われるわけではなく、線の配置や調べる課題によって見え方は変わります。

閉合の法則とは?

閉合の法則とは、複数の線や図形を見たとき、周囲を囲む閉じた形になるまとまりを捉えやすいという、ものの見え方の原理です。目に入る部分を一つずつ別のものとして見るだけでなく、全体としてどんな形になるかを手がかりにします。

たとえば、円周を四つの短い曲線に分け、それぞれの間に小さなすき間を作ったとします。曲線の向きが円につながるように並んでいれば、四本の線を別々に見るより、一つの丸い輪郭として感じるかもしれません。実際には描かれていない部分まで、つながりを推測して見ている例です。

ここで大切なのは、描かれていない線が必ず実際に見えるという意味ではないことです。線が途中で切れていると分かっていても、全体として円の形だと捉える場合があります。「欠けたところを補って形を見る」とは、こうした形のまとまり方を指します。

もともとはどのように説明されたのか

心理学者のマックス・ヴェルトハイマーは、1923年の論文で、人が線や点をどのようにまとめて見るかを論じました。閉合については、同じ線分が与えられていても、二つの閉じた形になるつなぎ方と、そうならないつなぎ方があるとき、閉じた形のまとまりが選ばれやすい例を示しました(Wertheimer, 1923/1938)。

つまり、閉合の法則は、途切れた線を補う見え方だけでなく、複数の線をどのまとまりとして捉えるかにも関係します。ヴェルトハイマーは同じ論文で、閉じたまとまりよりも、線が自然につながる方向の方が優勢になる例も挙げています。閉合だけが見え方を決めるわけではありません。

研究では何が確かめられているのか

1993年:閉じた輪郭は形を見分けやすかった

エルダーとズッカー(1993)は、輪郭だけで描かれた図形を複数示し、その形の違いを見分けてもらう実験を行いました。輪郭が完全に閉じた図形と、一部が開いている図形を用意し、閉じ具合も段階的に変えました。

その結果、この課題では閉じた輪郭の方が形を素早く見分けられ、開いた輪郭では時間がかかりました。また、輪郭の閉じ具合を少しずつ変えると、見分ける速さも連続的に変化しました。完全に閉じた形だけを認識できるわけではなく、どの程度欠けているかも関わることが示されました(Elder & Zucker, 1993)。

1993年:短い線が集まった輪郭にもまとまりが見られた

コヴァーチとジュレシュ(1993)は、無関係な短い線が多数ある画面の中に、特定の輪郭を作る線分を紛れ込ませて調べました。短い線分が輪のように並ぶ閉じた輪郭と、端がつながらない開いた輪郭の見つけやすさを比べました。

この実験では、離れた線分どうしでも、全体として閉じた輪郭を作る場合に見つけやすくなる結果が報告されました。さらに、閉じた輪郭の内側に現れた目標を見つけやすくなる結果もありました(Kovács & Julesz, 1993)。別々の線分でも、囲まれた領域としてまとまって捉えられることを示す研究です。

2004年:閉じていることの優位性が見られない条件もあった

一方、トヴェルスキーら(2004)は、閉じた輪郭と開いた輪郭の見つけやすさを、五つの実験で比較しました。輪郭が現れる位置の予測しにくさや、周囲の線分の密度など、結果に影響し得る条件を調整しています。

その結果、五つのうち四つの実験では、閉じた輪郭が開いた輪郭より見つけやすいという差は確認されませんでした。残る一つの実験の結果も、閉合だけに特別な働きがあると考えなくても説明できるものでした(Tversky et al., 2004)。

1993年の研究で調べた形の見分けや、背景に紛れた輪郭の発見と、2004年の実験で調べた発見のしやすさは、条件が同じではありません。これらを合わせると、閉じた形が見やすくなる場合はあっても、どの課題でも閉合だけで優位になるとはいえないことが分かります。

欠けた輪郭を補うとき、ほかに何が関わるのか

途切れた輪郭を一つにまとめられるかどうかは、閉じた形になりそうかということだけでなく、線の向きや、線どうしの距離にも関係します。曲線の端が滑らかにつながりそうな配置なら、別々の線分を一つの輪郭として捉えやすくなります。

たとえば、円の一部が欠けていても、残った曲線が同じ円周に沿っていれば円として捉えやすいでしょう。一方、残った線分があちこちを向き、どの線が続きなのか分かりにくければ、ひとまとまりの形は見えにくくなります。これは条件の違いを考えるための例です。

視覚の研究をまとめたワーヘマンスら(2012)も、閉合と、近さや線の滑らかなつながりなどを、関連するものの見え方の原理として整理しています(Wagemans et al., 2012)。そのため、欠けた形が一つに見えた理由を、閉合の法則だけで説明できるとは限りません。

身近な場面で考える

たとえば、地域のイベントで使う案内板に、大きな丸い枠を描くとします。担当者が枠の一部をわざと空けても、残された曲線が円周に沿って並んでいれば、見る人は一つの丸い枠として捉えるかもしれません。このとき、途切れた線をどのように一つのまとまりとして見ているかを考えると、閉合の法則を理解しやすくなります。

これは日常に置き換えた仮の例です。紹介した研究では、案内板の分かりやすさや読み取りやすさを直接測ったわけではありません。実際の表示では、すき間が大きすぎたり、ほかの線と交わったりすると、意図した形に見えないことも考えられます。

閉合の法則が示しているのは、私たちが見えている線だけをそのまま受け取るのではなく、その線が作る全体の形や囲まれたまとまりも手がかりにしているということです。

参考文献・出典