アインシュテルング効果とは?慣れた解き方が別の解決策を見えにくくする心理

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

何度も使ってきた方法で問題が解けると、次も同じ方法を試したくなります。しかし、もっと簡単に解ける問題に出会っても、いつもの手順を続けてしまうことがあります。なぜ、ほかの解き方が見えにくくなるのでしょうか。

アインシュテルング効果とは、以前に成功した解き方が頭に浮かびやすくなり、別の方法や、より簡単な解決策に気づきにくくなる現象です。慣れた方法が間違いでなくても、ほかにもっとよい方法があることを見落とす場合があります。ただし、経験を積んだ人がいつも柔軟さを失うという意味ではありません。

アインシュテルング効果とは?成功した方法が次の問題への見方を変える

「アインシュテルング」はドイツ語に由来し、問題に向き合うときの「構え」や、決まった考え方を表す言葉です。心理学者アブラハム・ルーチンスは1942年、同じ方法で解ける問題を繰り返すと、後の問題でもその方法を使いやすくなることを調べました(Luchins、1942)。

前の問題で成功した手順を覚えること自体は便利です。毎回最初から方法を探さずに済むからです。しかし、新しい問題には別の手順の方が適しているのに、以前の方法を優先すると、余分な手間がかかったり、解ける問題を解けないと思ったりすることがあります。

ここで中心になるのは「この問題も前と同じやり方で解けるはずだ」という解き方への偏りです。道具をいつもの用途でしか見られなくなる「機能的固着」と似ていますが、機能的固着は主に物の使い道に、アインシュテルング効果は以前の問題で使った解決手順に注目します。

水差しの問題で見る、遠回りな解き方を選んでしまう仕組み

ルーチンスの代表的な研究では、容量の異なる水差しを使って指定された量の水を量る方法を、参加者に紙の上で考えてもらいました。水は自由に使え、差し引きの手順を書いて答える課題です。

たとえば、容量が21・127・3の水差しがあり、100の量を作る問題があります。127入る大きい水差しから、21入る分を1回、3入る分を2回取り除くと、127-21-3-3=100になります。同じ形の問題を何度か解くと、この手順を覚えやすくなります。

次に、容量が23・49・3の水差しで、20の量を作る問題が出たとします。これも覚えた手順なら49-23-3-3=20で解けます。しかし、23-3=20という、もっと短い方法もあります。前の手順に慣れていると、こちらの簡単な方法が見えにくくなるのです(Luchins、1942;Binz・Schulz、2023)。

重要なのは、以前の方法が計算として間違っているわけではないことです。正解できる方法を知っているのに、さらに簡単な方法を見つけにくくなるという点に、この効果の特徴があります。また、前の手順では解けない問題を出すと、手順を変えられずに行き詰まる場合も調べられました。

研究で分かっていること

1942年・2023年:練習した方法を、必要がなくなっても使い続けた

ルーチンス(1942)は、水差しの問題を使い、複数の問題で同じ少し複雑な手順を練習した人たちと、その練習をしなかった人たちを比べました。先に練習した人たちは、より直接的な解き方がある後の問題でも、以前の手順を使いやすくなりました。最初の実験の一部の集団では、練習後の二つの問題で77〜82%が慣れた手順を使った一方、比較対象の集団ではその手順を使った人はいませんでした(Luchins、1942;Binz・Schulz、2023)。

ビンツとシュルツ(2023)は、この1942年の研究で報告された数値を整理し直しました。元の研究では、練習する問題の数、別の解き方の問題を途中に挟むこと、時間的な制約などによっても、慣れた手順を使い続ける割合が変わっていました。研究者たちは、考える時間や手間を抑えながら、以前うまくいった方法を選ぶことでも、結果の一部を説明できるという数式による考え方を示しています(Binz・Schulz、2023)。

ただし、これは過去の実験記録を再分析し、モデルと照らし合わせた研究です。参加者が実際に頭の中でその計算をしていたと直接確かめた結果ではありません。

2008年:チェスの熟練者も、最初に浮かんだ手に引っ張られた

ビラリッチら(2008)は、チェスの経験が豊富な選手たちに、よく知っている手順でも解けるものの、別の手順の方が早く勝てる問題を考えてもらいました。すると、実力のある選手でも、慣れた手順が先に浮かぶことで、よりよい手順を見落とす場合がありました。一方、より熟練した選手ほど、別の解き方を見つけることができ、影響は弱くなる傾向も見られました(Bilalićら、2008a)。

同じ研究者たちは別の実験で、選手がどこを見ているかを記録しました。選手は「もっとよい手を探している」と答えていても、目の動きは、最初に考えた手に関係する盤面へ繰り返し向いていました(Bilalićら、2008b)。

この結果は、ほかの方法を探そうと思っていても、最初の考えが、何に注意を向けるかに影響する可能性を示しています。ただし、目の動きだけで考えていた内容のすべてが分かるわけではありません。

2011年:紙で考えるか、実物を動かすかでも結果が違った

ヴァレ=トゥランジョーら(2011)は、水差しの課題を使って二つの実験を行い、紙に書かれた問題を読んで解く条件と、流し台で実際の水差しを使い、水を移しながら解く条件を比較しました。

その結果、実物の水差しを使えた条件では、以前に覚えた解き方を使い続ける傾向が弱まりました(Vallée-Tourangeauら、2011)。物を動かし、その結果を目で確かめられることが、紙の上で手順を考える場合とは違う手がかりになった可能性があります。

ただし、この研究が比べたのは特定の水差し課題です。どんな問題でも実物を動かせば同じ効果が得られると確認されたわけではありません。

2013年・2014年:慣れた考えが役立つ面も、妨げになる面もある

シェリダンとラインゴールド(2013)は、チェスの熟練者17人と、クラブで活動する経験の浅い選手17人を対象に、問題を解くときの目の動きを調べました。慣れた手が有利ではあるものの最善ではない場合には、その手を選んだ人たちは関連する盤面を見続けやすくなりました。ところが、慣れた手が明らかに悪い選択になる場合には、熟練者全員と、経験の浅い選手の大半がその手を避けました(Sheridan・Reingold、2013)。

また、エリスとラインゴールド(2014)は、英語を使う大学生60人に、中央に並んだ三文字と、その周囲の三文字のうち二文字を組み合わせ、五文字の英単語を作る課題を出しました。中央の三文字が、それだけで意味のある単語になっている場合と、同じ三文字を並べ替えた意味のない文字列になっている場合を比較しました。

正解した問題で答えるまでの平均時間は、意味のある単語の条件で15.3秒、意味のない並びの条件で13.4秒となり、前者の方が長くなりました。一方、正解率には明確な差はありませんでした。目の動きを調べると、中央の三文字から初めて視線を外すまでの時間は、意味のある単語の条件で短く、周囲の文字を一度見始めてから見続ける時間は長くなりました(Ellis・Reingold、2014)。

つまり、慣れた考え方や知識は問題を解く助けにもなりますが、別の手順へ切り替える必要があるときには妨げになる場合があります。影響は問題の難しさや、慣れた方法がその場面でどの程度役立つかによって異なります。

身近な場面で考える

たとえば、家族の写真を毎月整理する人が、以前は写真を一枚ずつ開き、撮影日を確かめてからフォルダーに移していたとします。その方法で何度も整理に成功したので、新しい写真の整理でも同じ手順を続けています。

しかし、使っているアプリに撮影日で自動的に並べ替える機能があるとしたら、以前の方法を続けるより早く整理できるかもしれません。いつもの手順で問題なく作業できるために、別の方法を探す機会が少なくなっている例です。

これは仕組みを考えるための仮の例です。写真整理の方法を変えれば誰でも作業が速くなると実験で確かめた話ではありません。ただ、やり慣れた手順を使うときに、「今回も同じ手順が必要か」「もっと短い方法はあるか」と確認することは、別の解き方を考えるきっかけになります。

アインシュテルング効果は、以前に役立った解き方が、その後の問題で使える選択肢を狭める場合があることを示します。慣れた方法の便利さを保ちながら、問題が変わったときには別の方法も候補に入れることが大切だと考えられます。

参考文献・出典