共通運命の法則とは?同じ方向に動くものをひとまとまりに見る仕組み
画面にたくさんの小さな丸印が散らばっているとします。そのうち四つだけが同時に右へ動き、ほかは別の方向へ動き始めると、右へ動く四つが一つの仲間のように見えることがあります。
これは共通運命の法則と呼ばれる、ものの見え方の原理です。離れた場所にあるものでも、同じ方向に動くなど変化の仕方がそろっていると、ひとまとまりとして捉えやすいという傾向を表します。
共通運命の法則とは?
共通運命の法則は、複数の点や図形を見たとき、一緒に動いたり、同じように変化したりするものを一つの集まりとして見やすいという原理です。心理学者マックス・ヴェルトハイマーが1923年に示した、ものの見た目がどうまとまるかについての考え方の一つです(Wertheimer, 1923/1938)。
たとえば、同じ大きさの点が並び、最初はどれも止まっているとします。数個の点がそろって上へ動き、残りの点が動かなければ、動いた点どうしを一組として見やすくなります。反対に、点がそれぞれ違う方向へ動くと、同じ動きによるまとまりを見つけにくくなります。
この「運命」は、ものの将来や人間関係の運命を意味する言葉ではありません。ここでは、見えている点が同じ変化をたどることを指しています。また、一組に見えた点が現実にも同じものの一部だと証明されるわけではありません。
1923年の原典では、動きによってどうまとまりが変わったのか
ヴェルトハイマーは、点の間隔によって、近くの点どうしが先に組として見える例を示しました。そのうえで、並んだ点の一部を、見ている人が予想していないときに、そろって少し上へ動かす例を取り上げています。
もともと一組として見えていた点が一緒に動く場合には、その変化は比較的自然に受け取られました。一方、それまでの組をまたぐように別の点が一緒に動く場合は、まとまり方と動きが食い違い、変化が不自然に感じられました。動いた点どうしが、新たな一組として見える場合もあったと説明されています(Wertheimer, 1923/1938)。
つまり、止まっているときには点の近さがまとまりを決める手がかりになっていても、動きが加わると、どの点が一組に見えるかが変わることがあるのです。
研究では何が確かめられたのか
2000年:四つの点の動き方と並び方を比較した研究
Uttalら(2000)は、多くの点がばらばらに動く画面の中に、目標となる四つの動く点を置き、その集まりを見つけられるか調べました。目標の点の動き方と位置の並び方を変え、見つけやすさを比較しました。
その結果、四つの点が平行な道筋を動き、点の位置も一直線に並ぶ場合に見つけやすくなりました。一方、移動する道筋が交差し、点の位置も一直線に並ばない場合には見つけにくく、点の動きを使わず形だけで判断する条件に近い結果でした(Uttal et al., 2000)。
この研究は、共通する動きがまとまりを見つける手がかりになることと同時に、点の並び方や移動する道筋によって、その手がかりの働き方が違うことを示しています。
2001年:位置が動かなくても、明るさの変化がそろうとまとまる
セキュラーとベネット(2001)は、画面上の要素が一緒に明るくなったり、一緒に暗くなったりしたときの見え方を、三つの実験で調べました。要素どうしの明るさが同じでなくても、変化する方向がそろうと、まとまりとして捉えられやすくなりました。
さらに、もともとの明るさが違うだけではこの結果を説明できず、時間とともに明るくなるか暗くなるかという変化の一致が重要だと報告しています(Sekuler & Bennett, 2001)。
これは、共通運命の法則に関わる手がかりが、場所の移動だけでなく、明るさの変わり方にも広がることを示す研究です(Wagemans et al., 2012)。
2011年:同じ動きの組が多いと、探すのが難しくなった
レヴィンタールとフランコネリ(2011)は、同じように動く二つの点を一組とし、横並びの組の中から縦並びの組を探す課題を行いました。比較する条件として、二つの点を細い線で直接結んだ組も使いました。
その結果、動きだけを手がかりに作られた組を探す条件では、画面にある組の数が増えるほど探す時間が長くなりました。線で直接結ばれた組を探す場合は、組の数が増えても時間の伸び方が小さくなりました(Levinthal & Franconeri, 2011)。
著者らは、同じ動きの組をいくつも同時に詳しく見分けることには限界があると考えています。ただし、これは特定の画面で目標の組を探す実験結果であり、日常で動くものを一組として見ることができないという意味ではありません。
近接の法則・類同の法則との違い
ものがまとまって見える手がかりには、動きのほかにも、位置や見た目があります。近接の法則は互いに近くにあるもの、類同の法則は色や形の似ているものを、一組として見やすいという原理です。
それに対して共通運命の法則は、一緒に動くか、同じように変化するかに注目します。たとえば、互いに離れている点でも同じ方向へ動けば一組に見えることがあり、逆に近くの点どうしでも別々の方向へ動けば、違う集まりに見える場合があります。
実際の見え方では、動き、距離、色、形などが一緒に関わります。共通運命の法則は、ほかの手がかりを無視して必ず一つのまとまりが決まるという規則ではありません。
身近な場面で考える
たとえば、家で親子が短い動画を見ているとします。動画には色や大きさが同じ丸印がいくつも描かれています。そのうち四つだけが同時に右へ動き、残りは左へ動くとします。親は、右へ動く四つを、画面の中で一組として感じるかもしれません。
これは共通運命の法則を理解するための仮の例です。紹介した研究が直接調べたのは、実験用の点や図形のまとまりを見つける反応であり、家庭で動画を見た親子の感じ方ではありません。
共通運命の法則を知ると、動いているものを見るときに、位置や色だけでなく、時間とともに変わる様子も一つの集まりを見つける手がかりになると理解できます。
参考文献・出典
- Wertheimer, M. (1923、英訳1938). Laws of Organization in Perceptual Forms. In W. Ellis (Ed.), A Source Book of Gestalt Psychology (pp. 71–88). 点の一部を同時に移動させたときのまとまりの変化を示した原典。
- Uttal, W. R., Spillmann, L., Stürzel, F., & Sekuler, A. B. (2000). Motion and shape in common fate. Vision Research, 40(3), 301–310. 四つの動く点の道筋や位置の並び方によって、集まりの見つけやすさが異なることを調べた研究。
- Sekuler, A. B., & Bennett, P. J. (2001). Generalized Common Fate: Grouping by Common Luminance Changes. Psychological Science, 12(6), 437–444. 明るさが同じ方向に変化する要素どうしがまとまって見えることを調べた研究。
- Levinthal, B. R., & Franconeri, S. L. (2011). Common-Fate Grouping as Feature Selection. Psychological Science, 22(9), 1132–1137. 動く点の組を探す難しさと、線で結んだ組との違いを調べた実験。
- Wagemans, J., Elder, J. H., Kubovy, M., Palmer, S. E., Peterson, M. A., Singh, M., & von der Heydt, R. (2012). A century of Gestalt psychology in visual perception: I. Perceptual grouping and figure–ground organization. Psychological Bulletin, 138(6), 1172–1217. 共通運命と、明るさの変化によるまとまりを含めた視覚研究の総説。