行動変容ステージモデルとは?行動を変える準備から維持までの段階

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

「本を読む習慣をつけたい」と思っても、まだ考え始めたばかりの人もいれば、すでに読み始めて続け方を工夫している人もいます。同じように行動を変えたいと考えていても、準備の状況が異なるのはなぜでしょうか。

行動変容ステージモデルは、行動を変えることへの関心から、準備、実行、維持までを、主に五つの段階に分けて理解する心理学のモデルです。行動を変えることを一度の決意で終わる出来事とは捉えず、途中で迷ったり、以前の習慣に戻ったりする過程も考えます。

行動変容ステージモデルとは?変わろうとする過程を捉える考え方

心理学者のプロチャスカとディクレメンテは、禁煙を試みる人の研究から、人が行動を変える際には、始める前と始めた後で取り組み方が異なることに注目しました。1983年の研究では変化の段階ごとに使われる方法を調べ、1992年にはノークロスも加わって、準備から維持までを含む五段階を整理しています(Prochaska & DiClemente, 1983、Prochaska, DiClemente, & Norcross, 1992)。

このモデルの「段階」は、その人の性格を表すものではありません。たとえば同じ人でも、読書については始める準備ができていて、運動についてはまだ変えようと考えていないかもしれません。特定の行動を、どの程度変えようとしていて、実際にどこまで取り組んでいるかを整理するための区分です。

なお、1983年の研究では「再び喫煙する状態」が五つの区分の一つでした。後の1992年の整理では「準備期」を含む五段階になり、以前の行動に戻ることは段階を行き来する過程として扱われています。どちらの研究も、変化が一直線に進むとは想定していません。

行動を変える五つの段階

  1. 無関心期:今のところ行動を変えようと思っていない段階です。たとえば「読書の時間を増やしたいとは考えていない」という状態です。
  2. 関心期:変えようかと考えているものの、まだ迷いがある段階です。「本を読みたいけれど、毎日は難しそう」と感じている場合が当てはまります。
  3. 準備期:近いうちに始めようと思い、具体的な用意をする段階です。「読む本を選び、夕食後に読む時間を確保しよう」と決める場面です。
  4. 実行期:実際に行動を変え始めた段階です。「週に数回、本を開くようになったが、忙しい日には忘れることもある」という状態が考えられます。
  5. 維持期:変えた行動を一定期間続け、以前の習慣へ戻らないよう工夫している段階です。「読むことが生活の一部になり、予定に応じて時間を調整している」といった状態です。

禁煙などを扱う研究では、「今後6か月以内に変えるつもりがあるか」「約30日以内に始めようと思うか」「実行を始めて6か月以内か、それ以上か」という期間で段階を区別することがあります(Cahill, Lancaster, & Green, 2010)。これらは研究で用いられる目安で、すべての行動に当てはまる絶対的な境界ではありません。半年続けば自動的に習慣が完成する、という意味でもありません。

段階が進んだり、以前の段階へ戻ったりするのはなぜか

行動を変える前は、「変えるとどんな良いことがあるか」「どんな負担がかかるか」を考えることがあります。始めてからは、思いどおりに取り組めない場面でどう対処するか、周囲からどんな支えを得られるかが気になるかもしれません。

このモデルでは、変えることの利点と負担、実行できそうだという自信、変化のために使う方法などにも注目します。段階が異なる人では、何に注意を向け、どのように取り組んでいるかが違う可能性があるためです(Prochaska et al., 1992)。

ただし、家族の事情や体調、仕事の予定など、本人の意欲だけでは変えられない条件もあります。始めた行動が途切れる場合にも、もとの習慣へ戻ったことだけで本人の意欲がないと決めつけることはできません。取り組む準備や、続ける条件を改めて考えるという見方ができます。

研究で分かっていること

1983年:禁煙に取り組む872人の方法を比べた

プロチャスカとディクレメンテ(1983)は、専門的な支援を受けずに喫煙習慣を変えようとしていた872人を調べました。参加者を当時の五つの区分に分け、どのような方法で行動を変えようとしていたかを比較しました。

その結果、まだ変えようと考えていない人では変化のための方法が少なく、変えようと考えている人では情報を集めたり、自分の行動を見直したりすることが比較的目立ちました。禁煙を実行する段階では、周囲の支援を得たり、喫煙の代わりになる行動や環境の調整を利用したりする傾向が示されました(Prochaska & DiClemente, 1983)。

これは段階ごとの違いを調べた研究です。特定の方法を使わせれば、必ず次の段階に進むことまで実証したものではありません。

1985年:半年後の喫煙状況の変化を調べた

プロチャスカら(1985)は、自分で禁煙に取り組む成人866人について、行動を変えるために使っている方法、喫煙の誘惑、禁煙できそうだという自信、喫煙の良い点と悪い点の評価などを調べました。そして、最初の回答が半年後の喫煙状況の変化とどう関係するかを分析しました。

その結果、自分の行動を見直すこと、周囲の助けを得ること、禁煙できるという見込み、喫煙の利点と負担の評価などが、その後の変化を予測する手がかりになりました(Prochaska et al., 1985)。禁煙に関する集団で見られた関連であり、個人がどの段階へ進むかを確実に言い当てられるわけではありません。

禁煙支援を段階に合わせれば、効果は高まるのか

ケーヒルら(2010)は、禁煙支援について41件の実験研究をまとめました。参加者は合わせて3万3,000人を超え、少なくとも6か月後までの禁煙状況を調べた研究が対象でした。

段階別の支援は、支援をしない場合や通常の対応と比べると禁煙に役立つ傾向が見られました。一方、同じ種類の支援について、段階に合わせた方法と合わせない方法を直接比較した4件の実験では、段階別にすることの明確な上乗せ効果は確認されませんでした。つまり、支援が役立つことと、段階に合わせること自体が役立つことは分けて考える必要があります(Cahill, Lancaster, & Green, 2010)。

運動の研究では、段階の変化と実際の運動量を分けて調べた

シエら(2025)は、子どもと若者の運動を対象に、行動変容ステージモデルに基づく取り組みを検討した22件の研究をまとめました。参加者は合計1万4,242人で、無作為にグループを分けた実験と、それ以外の介入研究が含まれていました。

段階に合う方法を使い、複数の工夫を組み合わせた取り組みでは、実際の運動量が増える結果が比較的多く見られました。ただし、取り組みの内容や運動量の測り方は研究ごとに異なり、結果は一様ではありませんでした。「行動する気持ちが強くなった」ことと「実際に体を動かす時間が増えた」ことも、別の結果です。段階が進んだと報告されても、運動量が増えたとは限りません(Xie et al., 2025)。

禁煙と運動では対象者も行動も異なります。段階を考えることは変化の状況を整理する助けになりますが、段階に合わせた働きかけが、どんな行動にも必ず最も有効だとはいえません。

身近な場面で考える:読書の時間を増やすとき

たとえば、ある人が仕事帰りに友人から最近読んだ本の話を聞き、「自分も読書を始めてみようかな」と思ったとします。それまでは読書の時間をつくることを考えていませんでしたが、今は読みたい気持ちと、時間が取れるかという迷いがあります。

その人が図書館で一冊借り、夕食後に読む時間を決めたら、始める準備を進めています。実際に週3回、10分ずつ本を開くようになれば、実行する段階として捉えられます。しばらく継続し、忙しいときにも読む時間を調整できるようなら、維持の状態に近いと考えられます。

ところが、予定が重なって一週間読めない場合もあるでしょう。そのときは読む時間を決め直したり、今は別のことを優先しようと考えたりするかもしれません。これはモデルを理解するための仮の例で、誰もが同じ順番を進むという実例の報告ではありません。

行動変容ステージモデルからは、相手がまだ行動していなくても「やる気がない」と決めつけず、今は変えたいと思っているのか、始める準備はあるのか、続けるときに何が障害になるのかを具体的に考える視点が得られます。どこかの段階に人を固定するためではなく、変化の途中の状況を理解するためのモデルです。

参考文献・出典