ドア・イン・ザ・フェイスとは?大きな頼みを断ると、次の頼みを受け入れやすいのか

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

地域のお祭りの準備で「当日の設営を丸一日手伝ってほしい」と頼まれ、予定が合わずに断ったとします。その直後に「では、朝の30分だけ机を運ぶのを手伝ってもらえませんか」と頼まれたら、最初から30分だけ頼まれた場合とは受け止め方が変わるかもしれません。

ドア・イン・ザ・フェイスとは、最初に大きな頼み事をして断られた後、より小さな頼み事をする方法です。実験では、小さな依頼だけをされた人より、先に大きな依頼を断った人のほうが、次の依頼を受け入れやすくなる場合が確かめられています。ただし、いつでも効果が出るわけではありません。

ドア・イン・ザ・フェイスとは?意味と仕組み

ドア・イン・ザ・フェイスは、相手に大きな頼み事をして断られ、続けて負担の小さい頼み事をする、依頼の順番を表す名称です。英語の名前には、無理な頼み事をして扉を目の前で閉められるほど強く断られる、というたとえが込められています。

基本的な流れは次のとおりです。

  1. まず、引き受けるには負担が大きい依頼をする。
  2. 相手がその依頼を断る。
  3. その後、より負担の小さい依頼をする。

なぜ次の依頼を受け入れやすくなるのでしょうか。Cialdiniら(1975)は、依頼する側が条件を下げたことを「譲ってくれた」と受け止めると、頼まれた側も何か譲ろうと感じるのではないか、と考えました。たとえば「一日中は無理だけれど、30分なら協力しよう」という判断です。Cialdiniら(1975)

ただし、承諾が増えた理由を、この気持ちだけで説明できるとは限りません。大きな頼み事を断ったことで気まずさを感じたり、次の頼み事が比較的小さく見えたりする可能性も検討されてきました。研究全体をまとめた分析では、どの説明が常に正しいかは決まっていません。O’KeefeとHale(1998)

似た名前のフット・イン・ザ・ドアは、まず小さな依頼を引き受けてもらい、それから大きな依頼をする方法です。ドア・イン・ザ・フェイスでは、最初の大きな依頼を断ることから始まる点が異なります。

研究で分かっていること

2年間の活動を断った後、2時間の依頼への承諾が増えた

Cialdiniら(1975)の最初の実験では、大学の構内を歩いていた72人を、24人ずつ3つの条件に分けました。ある条件では、まず非行少年の相談相手として「週2時間、少なくとも2年間」無償で活動してほしいと依頼しました。全員がこれを断った後、今度は少年たちの動物園への外出に「約2時間」付き添ってほしいと頼みました。

大きな依頼を断ってから小さな依頼を受けた人では、50.0%が付き添いを引き受けると答えました。これに対して、最初から付き添いだけを頼まれた人では16.7%でした。大きな活動と小さな活動を同時に紹介され、どちらかに参加するかを尋ねられた人では25.0%でした。Cialdiniら(1975)

この比較は、大きな依頼をただ聞くことよりも、その依頼を自分で断った後に小さな依頼を受ける順番が、承諾に関係する可能性を示しています。なお、研究で調べたのは参加する意思を示したかどうかであり、動物園への付き添いを実際に行った割合ではありません。

後の研究でも、同じ傾向が再び見られた

Genschowら(2021)は、1975年に報告された3つ目の実験を、約45年後にドイツで再検証しました。大学構内で、一部の人にはまず少年の相談相手を週2時間、少なくとも2年間続けるよう頼み、断った人に動物園への約2時間の付き添いを依頼しました。比較する条件では、動物園への付き添いだけを頼むか、先に同じ約2時間の博物館への付き添いを頼み、その返事を聞いてから動物園への付き添いを頼みました。

動物園への付き添いを引き受けると答えた割合は、大きな依頼を断った後の条件で約51%、動物園への依頼だけの条件で約38%、同程度の博物館への依頼を先にした条件で約30%でした。1975年の3つ目の実験でも、大きな依頼を断った後の条件で、ほかの条件より承諾率が高くなっていました。Genschowら(2021)

ただし、ここで確かめられたのは特定の頼み事への反応です。あらゆる頼み事に同じように当てはまるとまでは言えません。

多くの研究をまとめると、平均的な影響は小さい

O’KeefeとHale(1998)は、それまでの研究をまとめ、ドア・イン・ザ・フェイスによる承諾の増え方は平均すると小さいと報告しました。また、誰が誰のために依頼するのか、依頼する内容や間隔などによって結果が異なり、最初の依頼からどれだけ負担を下げたかだけでは、効果の大きさを説明できませんでした。O’KeefeとHale(1998)

Feeleyら(2012)の研究分析では、「引き受ける」と答えることには小さな平均効果が見られましたが、実際に行動したかどうかを調べた39件の比較では、はっきりした効果を確認できませんでした。Feeleyら(2012)

その後、Feeley(2025)は50年間の研究を改めてまとめました。言葉での承諾については89件、実際の行動については53件の比較を分析し、どちらにも統計的な差を確認しました。ただし、平均的な影響の大きさは、言葉での承諾でr=0.14、実際の行動でr=0.08と、いずれも小さいものでした。ここでの数値は研究全体での影響の大きさを表し、承諾する人の割合ではありません。Feeley(2025)

したがって、研究によって小さな依頼への反応が変わる場合はありますが、大きな依頼を先に出せば必ず承諾される、という方法ではありません。

身近な場面で考える:大きな頼み事を断った後

冒頭のお祭りの例では、依頼する側が「丸一日の設営」から「朝の30分だけの手伝い」へ条件を下げています。頼まれた人がその変更を譲歩と受け取れば、次の依頼に応じようと感じるかもしれません。

実際に30分の手伝いを引き受けるかどうかは、その人の予定や体調、活動への関心にも左右されます。最初の依頼を断ったからといって、次の依頼に応じる義務が生まれるわけではありません。

自分が頼まれる側なら、最初の大きな頼み事との比較だけで決めず、「今頼まれている30分の手伝いを、最初から頼まれていたとしても引き受けたいか」と考えると、今の依頼そのものを評価しやすくなります。

頼む側にとっても、大きな依頼をわざと断らせることが必要なのではありません。相手が負担を理由に断った場合は、事情を聞いて無理のない内容に直し、次の依頼も自由に選んでもらうことが大切です。これは研究で効果が保証された手順ではなく、相手の意思を尊重するための考え方です。

ドア・イン・ザ・フェイスは、大きな依頼を断られた後に小さな依頼をする方法で、次の依頼を受け入れる人が増える場合があります。結果は依頼の内容や状況に左右されるため、相手の譲歩に引きずられず、その都度自分にとって妥当な依頼かを判断することが役立ちます。

参考文献・出典