フット・イン・ザ・ドアとは?小さな依頼の後で承諾は変わるのか

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

家族から「荷物を一つ運ぶのを手伝って」と頼まれ、その後で「残りの荷物も全部お願いできる?」と言われたら、最初から全部運ぶよう頼まれた場合とは受け止め方が変わるかもしれません。

フット・イン・ザ・ドアとは、先に小さな依頼を受け入れてもらい、その後でより大きな依頼をする方法です。小さな依頼を経ることで次の依頼への承諾が増えた実験がありますが、研究全体では効果は小さく、逆効果になる条件も見つかっています。

フット・イン・ザ・ドアとは?小さな承諾から始める依頼の方法

「フット・イン・ザ・ドア」は英語で「ドアに足を入れる」という意味です。最初に小さなお願いから始め、段階的に大きなお願いへ進む様子を表しています。心理学では、次のような依頼の順序を指します。

  1. 相手が引き受けやすい小さな依頼をする。
  2. その依頼に応じてもらう。
  3. 後から、それより負担の大きい依頼をする。

たとえば、最初は短い質問に答えてもらい、後日、時間のかかる調査への協力を求める形です。ここで調べたいのは、最初の小さな依頼を経た場合と、大きな依頼だけをした場合で、後の承諾が違うかという点です。

なぜ違いが生じるのでしょうか。自分で一度協力すると「自分はこうした活動に協力する人だ」と感じたり、以前の行動と同じように振る舞いたいと思ったりする可能性があります。ただし、これは説明の候補です。Burger(1999)は複数の研究を整理し、一つの理由だけでは結果を説明できないと論じています。Burger(1999)

研究で分かっていること

短い質問の後で、長時間の調査への承諾が増えた

FreedmanとFraser(1966)は、米国の家庭への依頼を使った実験を行いました。ある条件では、まず電話で家庭用品についての短い質問への協力を求め、数日後に「5〜6人の調査員を約2時間、自宅に入れて家庭用品を調べさせてほしい」と依頼しました。別の条件では、前の小さな依頼をせず、大きな依頼だけをしました。

後の大きな依頼を引き受けた割合は、小さな依頼を先に行った条件で52.8%、大きな依頼だけの条件で22.2%でした。この52.8%は、先の質問に答えなかった家庭も含め、最初の依頼を受ける条件に割り当てられた家庭を数えた結果です。Freedman & Fraser(1966)

この実験では、小さなお願いを先に行った条件で、後の大きなお願いへの承諾が多くなりました。ただし、これは家庭用品の調査という特定の依頼で得られた結果です。

多くの研究をまとめると、効果は強くなかった

Beamanら(1983)は、それまでの研究に含まれる120の実験群を検討しました。その結果、フット・イン・ザ・ドアの効果が見られる研究はあるものの、予想されていたほど強く安定してはいませんでした。研究のほぼ半数では、効果が見られないか、予想とは逆の方向の結果でした。Beamanら(1983)

最初の実験で大きな差が見られたからといって、別の相手や依頼でも同じ程度の差が生まれるとは限らないのです。

同じ人が続けて頼むと、承諾が減った条件もある

Chartrandら(1999)は、大学生181人を対象に、慈善団体への協力を求める実験をしました。小さな依頼を先にする条件では、まず団体を応援するバッジをリュックに付けてもらい、その後、心臓病予防の資料を配る活動に3時間参加してほしいと頼みました。次の依頼をする時期は直後か2日後とし、依頼者も同じ人か別の人かで分けました。大きな依頼だけをされた人たちとの比較も行いました。

大きな依頼への承諾率は、大きな依頼だけを受けた条件で27.0%だったのに対し、同じ人から直後に大きな依頼を受けた条件では7.0%でした。一方、別の人から次の依頼を受けた条件や、2日後に依頼された条件では50.0〜62.5%でした。Chartrandら(1999)

研究者らは、同じ人から間を置かず頼まれると、圧力を感じたり、一方的な頼み事に反発したりする可能性を論じています。ただし、この実験では、そうした気持ちが承諾の減少を引き起こしたと直接確かめたわけではありません。小さな依頼を先にすれば必ず承諾が増えるとは言えないのです。

身近な場面で考える:頼み事が少しずつ大きくなるとき

たとえば、地域の清掃活動の世話役が、知人に「お知らせの掲示だけ手伝って」と頼み、協力してもらった数日後に「清掃当日の準備も2時間お願いできる?」と頼んだとします。

知人は、先に協力した経験から次の手伝いも引き受けたくなるかもしれません。これはフット・イン・ザ・ドアの仕組みを考えるための仮の例であり、この活動で実際に承諾が増えると確かめられたわけではありません。また、掲示と2時間の準備では必要な時間も負担も違います。

頼む側は、最初の協力を理由に次も引き受けるよう迫るのではなく、新しい依頼の内容と時間を伝え、あらためて選んでもらうことが大切です。頼まれる側も「この前引き受けたから」と考えるだけでなく、今回の負担や自分の予定を確かめて判断できます。

フット・イン・ザ・ドアでは、小さな依頼の後に大きな依頼への承諾が増える場合があります。しかし、その影響は場面や頼み方で変わり、逆効果になることもあります。最初の「はい」と次の「はい」は、それぞれ別の判断として考えられます。

参考文献・出典