ピークエンドの法則とは?体験の印象に関わる「山場」と「終わり方」

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

友人と出かけた一日を「楽しかった?」と振り返るとき、特に楽しかった場面や帰り際の出来事が、一日全体の評価に影響することがあります。

ピークエンドの法則とは、ある体験をあとから全体として評価するとき、感情が特に強く動いた「山場(ピーク)」と、体験の「終わり(エンド)」が、その評価に強く関わりやすいという傾向です。

体験中のすべての時間が、あとからの全体評価に同じ重みで反映されるとは限らない、という点が大切です。ただし、山場と終わり方だけで印象が決まるわけではありません。

ピークエンドの法則とは?体験中の気持ちと、あとからの評価の違い

たとえば、映画を観ている間に退屈な場面も楽しい場面もあったとします。見終わったあとで「全体として面白かった?」と聞かれると、最も心を動かされた場面や結末が、映画全体の評価に強く関わるかもしれません。

ここでいうピークは、一番楽しい瞬間だけを指す言葉ではありません。楽しい体験を調べるなら最も楽しい場面、つらい体験を調べるなら最も苦しかった場面が、注目する山場になります。エンドは、その体験が終わるころの状態です。

この法則が注目するのは、体験の最中にどう感じたかと、体験が終わったあとに全体をどう評価するかの違いです。あとからの評価は、体験中の各場面の気持ちを均等に足し合わせた結果とは限りません。

研究で分かっていること

最後に少し楽になると、長く痛いほうを選ぶことがあった

Kahnemanら(1993)は、参加者に二通りの冷水体験をしてもらいました。一方は14℃の水に手を60秒間入れる体験です。もう一方は、同じ14℃の水に60秒間入れたあと、さらに30秒間続け、その間に水温を15℃まで徐々に上げる体験でした。追加された30秒も痛みはありましたが、多くの参加者にとっては少し楽な状態でした。

あとで「もう一度行うならどちらがよいか」と尋ねると、痛みを感じていた時間が長い90秒のほうを選ぶ参加者が多数でした(Kahnemanら, 1993)。

この実験は、実際に経験した痛みの長さだけでなく、最後にどれほど痛かったかが、体験後の選択に関わりうることを示しています。冷水を使った実験で得られた結果なので、すべての体験で同じ選択が起こるという意味ではありません。

医療処置では、最も強い痛みと最後の痛みが記憶に関係した

RedelmeierとKahneman(1996)は、大腸内視鏡検査を受けた154人と、結石を砕く治療を受けた133人について、処置中の痛みをその場で記録し、処置後に「全体としてどれほど痛かったか」を評価してもらいました。

すると、あとからの全体評価は、処置中で最も強かった痛みと、最後の3分間の痛みの強さに強く関連していました。一方、処置にかかった時間の長さは、全体評価と強く結びついていませんでした(Redelmeier & Kahneman, 1996)。

これは実際の処置で観察された関係です。山場と最後だけが痛みの記憶を決めると証明した研究ではありません。

複数の研究をまとめても、山場と終わりの重要性が見られた

Alaybekら(2022)は、それまでに報告された研究の結果174件をまとめ、体験のどの部分が振り返ったときの全体評価に関わるかを調べました。この分析は2024年に数値の扱いについて訂正されましたが、山場と終わりが全体評価に強く関わり、体験時間の長さとの関係は小さいという主な結論は維持されました(Alaybekら, 2022、Alaybekら, 2024・訂正)。

ただし、体験中の各場面の評価を平均した値も、あとからの全体評価と強く関係していました。つまり、山場と終わりだけでなく、体験全体がどのようなものだったかも大切なのです。

日常生活の幸福感でも、山場と終わりが関係した

Scharbertら(2025)は、4つの調査から集めた1,889人分の回答を分析しました。参加者には4週間にわたって一日に数回、幸福感を記録してもらい、調査終了後にも普段の幸福感や過去4週間の幸福感を尋ねました。その結果、期間中の幸福感の平均的な水準を考慮しても、特に幸福だった時期や期間の終わりの幸福感が、あとからの評価に関係する条件がありました(Scharbertら, 2025)。

ただし、この関係の強さは、「普段どれくらい幸せか」「過去4週間はどうだったか」などの尋ね方や、山場と終わりを一時点・一日・一週間のどの幅で捉えるかによって変わりました。日常の評価でも山場と終わりの影響は見られますが、どんな質問でも同じように現れるわけではありません。

体験の長さや最初の印象はどう関わる?

FredricksonとKahneman(1993)は、長さなどが異なる楽しい映像と不快な映像を使い、参加者が見ている間にどう感じたかと、見終わってからどう評価したかを調べました。その結果、映像の長さ自体が全体評価に与える影響は小さいものでした(Fredrickson & Kahneman, 1993)。

これは、長い待ち時間や疲れが実際の負担にならないという意味ではありません。体験にかかった時間と、その体験を思い出して付ける評価は、必ずしも同じようには変わらないという話です。

また、どんな場面でも山場と終わりが最も重要とは限りません。McCulloughら(2024)がホテルでの5,497件の宿泊記録を調べた研究では、従業員とのやり取りについて、最初・山場・最後の印象はいずれも宿泊の満足度と関係していましたが、最初の印象が特に強く関係していました(McCulloughら, 2024)。

このように、何を体験したか、どのように評価したかによって、重みを持つ場面は変わります。

身近な場面で考える:日帰り旅行の思い出

たとえば、友人と日帰り旅行に行ったとします。昼間は人混みの中を歩いて少し疲れましたが、夕方には美しい夕焼けを眺めて感動しました。帰りの電車でも友人と楽しく話し、穏やかな気持ちで一日を終えました。

数日後、「旅行は全体としてどうだった?」と聞かれると、昼間の疲れよりも、夕焼けの感動と帰りの楽しい会話が強く評価に関わり、「とてもよい旅行だった」と答えるかもしれません。旅行全体の評価に、感情が最も強く動いた場面と最後の場面が大きく関わりうることを表す仮の例です。実際の評価には、昼間の疲れやほかの出来事も関係します。

同じ場所にまた行くかを決めるなら、印象に残った山場と終わり方に加え、移動の疲れ、費用、日中の過ごしやすさなども振り返ると、体験全体を判断しやすくなります。反対に、人と過ごす時間を考えるときは、途中の心地よさを大切にしながら、最後を慌ただしく終わらせないようにすることも一つの工夫です。

ピークエンドの法則は、体験の途中でどう感じたかと、あとからその体験全体をどう評価するかを分けて考えるための手がかりになります。

参考文献・出典