実行意図とは?「もし〜なら、〜する」と決める計画の仕組み

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

「毎日少しずつ本を読もう」と決めたのに、夜になると別のことをして、そのまま忘れてしまうことがあります。読む気持ちはあっても、いつ本を開くかが決まっていないと、行動を始める機会を逃すかもしれません。

実行意図とは、「もし、この状況になったら、この行動をする」とあらかじめ決める計画です。目標に向かう行動と、その行動を始める合図になる場面を結び付けることで、実際に行動しやすくなると考えられています。

実行意図とは?目標と行動の合図を結び付ける計画

心理学者のゴルヴィッツァーは、達成したいことを決めるのと、それを実行する場面や行動を決めるのを区別しました。「本をもっと読みたい」は達成したい目標を表します。一方、「もし夕食の食器を片付けたら、机に座って本を5ページ読む」は、その目標のためにどんなときに、何をするかまで決めています。後者が実行意図です(Gollwitzer、1999)。

「もし」に当たるのは、ある時刻になったとき、特定の場所に着いたとき、別の行動が終わったときなど、自分で気づける状況です。「そのとき、どうするか」に当たるのは、実際に始められる行動です。

実行意図は、ただ目標を細かくするだけの計画ではありません。決めた場面に出会うことと、決めた行動を始めることを一組にするのが特徴です。

なぜ「もし〜なら」と決めると行動しやすくなるのか

本を読むつもりがある人でも、夕食後に「何から始めようか」と考えたり、ほかのことに気を取られたりすると、行動を先延ばしにすることがあります。そこで「食器を片付け終えたら本を開く」と決めておくと、食器を片付けること自体が、本を読む行動を思い出す手がかりになります。

ゴルヴィッツァーは、実行意図を作ることで、指定した状況に気づきやすくなり、その状況になったときに行動を始める反応が起こりやすくなると説明しています。毎回その場で行動を選び直す負担が小さくなるという考え方です(Gollwitzer、1999)。

ただし、決めた状況が実際に訪れなかったり、予定した行動を行える環境がなかったりすれば、計画どおりには動けません。また、そもそも目標に取り組む気持ちが弱い場合には、実行意図だけで行動が変わるとは限りません。実行意図は、本人が目指している目標を実際の行動につなぐための工夫として位置付けられます(Gollwitzer・Sheeran、2006)。

研究で分かっていること

いつ、どこで書くかを決めた人は、期日内に取り組みやすかった

GollwitzerとBrandstätter(1997)は、大学生86人に、クリスマスイブの過ごし方について、直後の2日間の休暇中に報告を書くよう依頼しました。参加者を無作為に2つの条件に分け、一方には報告を書く日時と場所を具体的に決めてもらい、もう一方にはその計画を求めませんでした。

報告を返送した人のうち、どちらの条件だったか判定できた36人について調べると、指定された2日間に報告を書いた人は、計画を立てた条件で17人中12人(約71%)、計画を求めなかった条件で19人中6人(約32%)でした。ただし、この割合は参加者86人全員について計算したものではありません。報告を返送した人数自体には、条件間で明確な違いは確認されていません(Gollwitzer・Brandstätter、1997)。

この実験は、書く場面を具体的に決めることが、予定した時期に行動を始める助けになる可能性を示しています。

研究をまとめても、目標達成を後押しする傾向が見られた

GollwitzerとSheeran(2006)は、実行意図を作ることと目標達成の関係を調べた94件の独立した検証結果をまとめました。全体として、実行意図を作ることには目標達成を後押しする効果が認められました。また、行動を始める機会に気づき、その場で行動することが、効果に関わると報告しています(Gollwitzer・Sheeran、2006)。

一方で、研究ごとに目標の内容も、計画を作る方法も異なります。計画を立てた人が全員目標を達成するという結果ではありません。

日付と時刻を書き込む計画が、実際の行動につながった

Milkmanら(2011)は、大企業の従業員を対象に、職場で無料のインフルエンザ予防接種を受けるかどうかを調べました。全員に接種会場と開催日時を知らせたうえで、通常の案内だけを受ける人、接種予定の日付を書き込む人、日付と時刻の両方を書き込む人に、無作為に分けました。

実際に職場の会場で接種した割合は、通常の案内では33.1%、日付だけを書き込む条件では35.6%、日付と時刻を書き込む条件では37.1%でした。通常の案内との違いが統計的に確認されたのは、日付と時刻の両方を書き込む条件でした(Milkmanら、2011)。

この研究で参加者が書いたのは、厳密な「もし〜なら」という文ではなく、実行する日付と時刻です。行動する機会を具体的に決める計画が、実際の行動に関わり得ることを示した例といえます。

身近な場面で考える

たとえば、週末にたまった領収書を整理したい人がいるとします。「土曜日に整理しよう」だけでは、いつ取りかかるかはまだ決まっていません。そこで「もし土曜日の朝食の食器を片付けたら、机にある領収書を5枚整理する」と決めたとします。

この計画では、食器を片付け終えたことが行動の合図で、領収書を5枚整理することが、その場で始める行動です。朝食の片付けが終わったときに次の行動を思い出しやすくなると考えられます。これは理論を理解するための仮の例であり、領収書の整理について実験で確認された結果ではありません。

実行意図の要点は、「やりたい」という気持ちを、出会う予定のある場面と具体的な行動に結び付けることです。行動を始めるきっかけが曖昧なときに役立つ可能性がありますが、実行する時間や環境、本人の目標への気持ちもあわせて考えることが大切です。

参考文献・出典