愛着理論とは?安心を求める相手との結び付きを考える

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

小さな子どもが初めての場所で遊ぶとき、近くにいる大人の姿を確かめたり、怖いことがあるとその人のもとへ戻ったりすることがあります。安心できる相手がいることは、子どもが外の世界に関心を向けることともつながっています。

愛着理論(アタッチメント理論)は、不安や危険を感じたときに頼れる相手との結び付きが、安心を得ることや周囲を探索することにどう関わるかを説明する考え方です。もともとは乳幼児と養育者の関係から発展し、現在では成人の親しい関係も研究されています。

愛着理論とは?安心できる相手が探索を支える仕組み

心理学者のJohn Bowlby(ボウルビィ)は、1969年に刊行した『Attachment and Loss』第1巻で、幼い子どもが特定の大人に近づき、離れると不安を示す行動を、食事をもらうためだけのものではなく、身を守り安心を得るための働きとして捉えました(Bowlby, 1969)。

ここでいう「養育者」は、子どもの世話を継続して担う親や、そのほかの身近な大人です。子どもが安心を求める相手を、必ず母親一人に限る理論ではありません。

安心して戻る場所と、安心して出かける拠点

  • 怖いときに戻れる場所:知らない人や大きな音が怖いときなど、頼れる相手に近づいて気持ちを落ち着かせようとすることです。
  • 安心して探索できる拠点:相手が必要なときに助けてくれると感じられることで、その場を離れて遊んだり、新しい物を調べたりしやすくなることです。

一見反対のように見える「近づくこと」と「離れて遊ぶこと」は、同じ関係の中で結び付いています。子どもが大人にいつもくっついていることだけを、安定した愛着の印として扱うわけではありません(Cassidyら, 2013)。

一人の性格を決めつける理論ではない

愛着の研究では、子どもが誰とどんな経験を重ねているかを重視します。ある相手との間で安心して頼れるかどうかと、別の相手との間でどう感じるかは、完全に同じとは限りません。また、泣いた、抱っこを求めた、親から離れたといった一場面だけで、その子の愛着のあり方を判断することもできません。

愛着研究で使う関係の分類は、子どもに一生変わらない性格の名前を付けるものではありません。まして、実験での分類と「愛着障害」という診断は同じではなく、安易な決めつけは不適切な対応や家族への不当な非難につながりかねないと指摘されています(内山, 2025)。

研究で分かっていること

乳児と養育者を家庭と実験室の両方で観察した

Mary Ainsworth(エインズワース)は、米国の中流家庭26組について、乳児が生まれて間もない時期から約1歳まで、家庭での母親と子どものやり取りを繰り返し観察しました。家庭訪問では約3週間ごとに4時間の観察を行い、乳児が生後およそ51週以降になると、初めての部屋を使った実験室での観察も実施しました(Ainsworth, 1974)。

この実験室での方法は、後に『Patterns of Attachment』(1978年)などで詳しく整理されました。子どもが大人と部屋にいるとき、短時間離れたとき、再会したときにどう遊び、近づき、慰めを受け止めるかを観察します。特に再会したときの反応を含め、複数の行動を合わせて関係を評価する方法です(Ainsworthら, 1978;Cassidyら, 2013)。

この研究では、安心を求めて慰めを受ける様子や、接触を避ける様子、近づきながら抵抗する様子など、異なる行動のパターンが扱われました。ただし、もともとの調査は限られた家庭の観察であり、これだけであらゆる家庭の子どもを分類できると示したものではありません。

同じ乳児でも母親と父親への反応は必ずしも一致しなかった

Lamb(1978)は、乳児32人について、母親と一緒の場合と父親と一緒の場合に、実験室での短い別れと再会をそれぞれ観察しました。

32人のうち、母親と父親の両方に安定した愛着を示すと評価された乳児は16人で、両方との関係が安定していないと評価された乳児は7人でした。残る9人は、母親との関係と父親との関係とで分類が一致しませんでした(Lamb, 1978)。

同じ子どもでも、相手との関係によって行動の現れ方が異なることがあると分かります。ただし、何が違いを生んだのかを、この観察だけで特定することはできません。

子どものサインに応じる養育と、安心できる関係には関連があった

Madiganら(2024)は、養育者が子どもの求めることや関心に気づき、適切に応じる様子と、子どもがその養育者に安心して頼れるかどうかの関係を、174研究、親子など計22,914組のデータからまとめました。

その結果、養育者が子どものサインを受け止めて応じるほど、その相手との愛着が安定している傾向が見られました。二つの特徴の関連の強さを表す数値は平均で0.25でした。この数値は、片方が決まればもう片方も決まるほど強い一致を示すものではありません(Madiganら, 2024)。

母子を対象とした研究では関連の数値は0.26、父子を対象とした研究では0.21で、両者の差は統計的には明確ではありませんでした。調べられた研究数は母子のほうが多く、父子についてはより多くの研究が必要です。また、これらは主に関連をまとめた結果で、養育者の一つの行動が必ず子どもの愛着の状態を決めるという意味ではありません。

関わり方を支える取り組みで、小さな改善も見られた

Bakermans-Kranenburgら(2003)は、親の子どもへの応答の仕方や、乳児との愛着の安定性に関する70件の支援研究をまとめました。親の応答の仕方については計7,636人分、愛着については計1,503人分のデータが含まれ、分析する結果によって対象人数は異なりました。

無作為に支援条件を割り当てた研究をまとめると、支援を受けた条件では、親の応答の仕方と乳児の愛着の安定性に、それぞれ平均して改善が見られました。ただし、愛着についての改善の大きさは小さく、支援を受ければ必ず安定した関係になると示したものではありません(Bakermans-Kranenburgら, 2003)。

身近な場面で考える

たとえば、祖父と初めて児童館に来た幼い子どもがいるとします。最初は祖父のそばで遊具を見ていますが、少しずつ離れて遊び始めました。突然大きな音がして驚くと祖父のもとへ戻り、声を掛けてもらって落ち着くと、また遊び始めるかもしれません。

これは研究で観察された出来事ではなく、仕組みを説明するための仮の例です。子どもが祖父に近づくことは不安への対応であり、安心して遊びに戻れることは、その関係が探索を支える働きとして理解できます。ただし、実際にその子どもの愛着が安定しているかどうかを、この一場面から判定することはできません。

愛着理論は、乳幼児だけに限られた話でもありません。成人の親しい関係でも、困ったときに頼り合い、安心を得たり相手の挑戦を支えたりする働きが研究されています(古村・戸田, 2020)。ただし、幼いころの一つの経験から、大人になってからの人間関係が一つに決まると考えることはできません。

参考文献・出典