敵対的メディア認知とは?同じ報道を自分の側に不利だと感じる心理

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

あるニュースを見て「自分が支持する立場への批判が多すぎる」と感じたのに、反対の立場の人も「こちらに不利な報道だ」と感じることがあります。同じ番組や記事を見ているのに、なぜ正反対の不満が生まれるのでしょうか。

敵対的メディア認知とは、意見が対立する話題について、同じ報道を見た人たちが、それぞれ自分の支持する側に不利で、反対側に有利な報道だと受け止めやすい現象です。報道の内容だけでなく、見る人の立場も公平さの評価に関わります。

敵対的メディア認知とは?同じ報道が不公平に見える心理

たとえば、ある制度の導入に賛成する人と反対する人が、賛否双方の説明を取り上げたニュースを見るとします。賛成する人は「反対側の批判ばかり紹介している」と感じ、反対する人は「賛成する側の利点ばかり強調している」と感じるかもしれません。

この現象で比べるのは、同じ報道に対する、立場の異なる人たちの評価です。どちらが先にそのニュースを知ったかや、別々の番組を選んだかという違いだけではありません。

ただし、双方が不公平だと感じたことだけでは、報道が実際に公平だったとも、偏っていたとも判断できません。実際のニュースには情報の選び方や説明の偏りがある場合もあります。敵対的メディア認知は、まず報道がどのように受け止められたかを扱う研究上の現象です。

研究で分かっていること

1985年:同じテレビニュースを見ても、双方が相手に有利だと感じた

ヴァローン、ロス、レッパー(1985)は、1982年にレバノンの難民キャンプで起きた民間人の虐殺と、イスラエルの責任について報じた米国のテレビニュースを使って調べました。参加したスタンフォード大学の学生144人には、イスラエル側を支持する68人、アラブ側を支持する27人、立場が混在または中立だと答えた49人が含まれていました。

全員が同じ六つのニュース映像、計約36分を見た後、報道がイスラエルに有利か不利かを9段階で評価しました。1点はイスラエルに強く不利、5点は公平、9点は強く有利という意味です。

平均は、イスラエル側を支持する人たちが2.9点、アラブ側を支持する人たちが6.7点でした。立場が混在または中立だと答えた人たちは3.8点でした。同じ映像を見たにもかかわらず、対立する二つの支持者集団は、報道の偏りを反対の方向に評価したのです(Valloneほか, 1985)。

さらに、両者は映像の中にイスラエルに有利な説明と不利な説明がそれぞれどれほどあったかについても、異なる割合を答えました。研究では、支持する立場によって、ニュースの公平さだけでなく内容の受け取り方も違う可能性が示されました。ただし、参加者の支持する立場を研究者が無作為に割り当てた実験ではありません。

2004年:同じ内容でも「新聞記事」か「学生の文章」かで違った

ガンサーとシュミット(2004)は、遺伝子を組み換えた食品の利用に賛成する人と反対する人に、利点と懸念の両方を説明した文章を読んでもらいました。文章は新聞記事の形式で示す場合と、学生が書いた文章の形式で示す場合に分けられました。両者の本文はほぼ同じで、学生の文章には軽い誤字が加えられていました。

強い賛成の立場だった87人と強い反対の立場だった64人について調べた結果、新聞記事として示された場合には、双方が自分の立場に不利な方向の偏りを感じる傾向が見られました。一方、学生の文章として示された場合には、同じような敵対的な評価の差は確認されませんでした(Gunther・Schmitt, 2004)。

研究者らは、新聞記事は多くの人に届き、その人たちの考えを動かすかもしれないという予想が、受け止め方に関係すると考えました。これは研究結果を説明する一つの考え方であり、情報が届く人数だけで結果が決まると確定したわけではありません。

2004年:文章のどこを「自分に不利」と捉えるかも違った

別の研究で、シュミットら(2004)は、遺伝子を組み換えた食品に賛成する87人と反対する63人を対象に、報道の受け止め方を調べました。

研究者らは、同じ内容についても、どの説明を賛成側に有利・不利と分類するかが参加者の立場によって異なることを確かめました。説明の正しさを評価する基準の違いも見られましたが、敵対的メディア認知とのつながりが確認されたのは、内容の有利・不利の捉え方の違いでした(Schmittほか, 2004)。

これは「自分に都合の悪い説明だけを覚えている」という一つの理由では説明しきれないことを示しています。そもそも同じ説明を読んだ時点で、その意味をどちらに有利だと考えるかが違う場合があるのです。

2011年:34研究をまとめると、関心の強さも関係していた

ハンセンとキム(2011)は、敵対的メディア認知を調べた34の研究結果をまとめました。全体では、対立する立場の人が報道を自分の側に不利だと受け止める傾向が確認され、その違いの大きさは中程度でした。

また、話題に強く関わっている人ほど、この傾向は強くなりました。ただし、関心や関わりが比較的低い条件でも傾向は報告されています。新聞かテレビかという報道の形式や、実験か調査かという研究方法によって効果の大きさが明確に違うという結果は得られませんでした(Hansen・Kim, 2011)。

この分析は、現象が一つの政治的対立だけに限られないことを示します。一方で、個々のニュースや人について、必ず同じ程度の不公平感が生じると予測できるわけではありません。

なぜ、同じニュースなのに受け取り方が違うのか

自分が正しいと思う立場を持っていると、その根拠がニュースでも十分に紹介されるはずだと考えることがあります。その期待と実際の報道が食い違うと、反対側の説明が多すぎるように感じられるかもしれません。さらに、同じ言葉や出来事を自分の立場に不利だと読み取る場合もあります。

また、ニュースを発信する人や媒体への印象も関係します。ガンサーら(2017)は、学校で進化について教える内容をめぐる意見の対立を題材に、賛成側・反対側・中立の立場から出されたとする意見記事と、賛否に関する記事内容を組み合わせて調べました。その結果、記事の内容だけでなく、どの立場の人が発信したと示されるかも、偏りの評価に関係していました(Guntherほか, 2017)。

つまり、敵対的メディア認知は、報道内容の読み取り方や、公平さへの期待、情報を出した人への見方などが関係する現象です。それらのどれが強く働くかは、扱う話題や報道の条件によって変わります。

身近な場面で考える

たとえば、学校で制服を導入するかどうかが話題になっているとします。制服に賛成する保護者と反対する保護者が、同じ地域ニュースを読みます。記事には「毎朝の服選びの負担が減る」という賛成意見と、「購入費がかかる」という反対意見が紹介されています。

賛成する保護者は費用の問題が大きく扱われすぎだと感じ、反対する保護者は利点ばかりが目立つと感じるかもしれません。これは仕組みを理解するための仮の例です。実際にその記事の配分が偏っているかどうかは、書かれた内容や取材対象を確かめなければ分かりません。

自分の側に不利な報道だと感じたときには、まず実際に書かれている説明と、自分が十分に扱ってほしいと思う説明を分けてみると、違和感の理由を考えやすくなります。どんな発言が引用され、何が省かれているかを具体的に確認することも判断材料になります。こうした確認が必ず偏りを取り除くと実証されたわけではありませんが、報道の内容と自分の受け止め方を区別する助けにはなります。

敵対的メディア認知を知ることで、意見が対立する話題について同じニュースを見ても相手は違う部分を不公平だと感じているかもしれないと考えられます。

参考文献・出典