希薄化効果とは?関係の薄い情報が加わると判断材料の重みが弱まる現象

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

ある人の勉強ぶりを予想するとき、「週に何時間勉強しているか」は判断の手がかりになりそうです。ところが、その人の趣味や休日の過ごし方まで詳しく知らされると、最初の情報から受けた印象が弱まることがあります。

希薄化効果とは、結果の予測に役立つ手がかりに、予測とは関係の薄い情報が加わることで、もとの手がかりが判断に与える影響が小さくなることがある現象です。

希薄化効果とは?関係の薄い情報が判断を変える

何かを予測するとき、示された情報はどれも同じように役立つとは限りません。たとえば、学生の試験成績を予測するなら、勉強時間は参考になるかもしれません。一方、休日にテニスをするか、好きな飲み物は何かという情報は、その成績を考えるうえではあまり役立たない可能性があります。

希薄化効果の研究では、予測の手がかりになると判断された情報だけを示された人と、同じ情報に加えて、予測に役立たないと判断された情報も示された人を比べます。後者の方が予測を控えめにし、平均的な値に近づけることがあるのです(Nisbettほか, 1981)。

ここで弱まるのは情報の事実としての正しさではなく、その情報が予測に及ぼす影響です。たとえば、勉強時間が長いという情報に、趣味の話が加わったからといって、勉強時間そのものが短くなるわけではありません。

また、ある情報が無関係かどうかは、何を判断するかによります。趣味は成績の予測には役立たなくても、本人と一緒に休日を過ごす計画には大切な情報かもしれません。

研究で分かっていること

1981年:人物情報を増やすと、予測の差が小さくなった

ニスベット、ズーカー、レムリー(1981)は、大学生の専攻から、その学生がどのように行動するかを予想する研究を行いました。最初の実験では108人が、理系・文系の専攻と、電気刺激にどれほど耐えるか、映画をどれほど見るかなどの予測に関する課題に参加しました。

ある人たちには、予測対象の学生の専攻や進路だけが示されました。別の人たちには、それに加えて、出身地、家族、趣味などについて答える約2分間のインタビュー映像も示されました。追加した項目は、別の参加者にあらかじめ評価してもらい、今回の行動予測にはあまり役立たないと判断されたものでした。

その結果、専攻や進路だけを知らされた人たちは、専攻の違いによって行動に大きな差があると予測しました。しかし、人物の詳しい情報を見た人たちでは、専攻による予測の差が小さくなりました。続く実験では、インタビュー内容を映像ではなく文章で示しても同様の傾向が見られ、映像で本人を見たことよりも、追加情報があることの影響が大きいと報告されました(Nisbettほか, 1981)。

ただし、専攻と行動の結び付きは、参加者がもっていたイメージを手がかりとしたものです。この研究は、そのイメージどおりに実際の学生が行動したことを証明するものではなく、与えられた情報によって予測がどう変わったかを調べています。

1996年:追加情報を選んだ理由の説明でも効果が変わった

テトロックら(1996)は、ある学生の成績を予測してもらいました。学生が週に3時間、または31時間勉強するという情報だけを示す条件と、それに加えて、テニスをする頻度や友人からの評判など、成績の予測には役立たないと事前に判断された情報も示す条件を比べました。

また、研究者が示した情報について「予測のために吟味して選んだ」と説明する場合と、「コンピューターの記録から無作為に取り出した」と説明する場合などを設けました。さらに、後で判断の理由を説明することを予告された人と、そうでない人も比較しました。

後で理由を説明すると告げられた人では、研究者が情報を選んだと思う場合、関係の薄い情報が加わると成績予測が平均へ近づきました。しかし、情報は無作為に選ばれたと説明されると、この人たちには同じ傾向が見られませんでした。一方、判断理由の説明を求められなかった人たちには、無作為と説明された条件でも希薄化効果が見られました(Tetlockほか, 1996)。

この結果は、単に情報が多いから判断が変わるというだけでなく、「わざわざ示された情報なら何か意味があるはずだ」という受け止め方も関わることを示しています。ただし、無作為に選ばれたと伝えるだけで、すべての人の偏りがなくなるわけではありません。

2002年:商品の性能を考えるときにも確認された

メイヴィスとヤニシェフスキ(2002)は、商品やサービスが求める性能を備えていそうかどうかを調べました。最初の実験には大学生36人が参加し、パソコン、歯磨き粉、配送サービスなど、八種類の商品・サービスについて回答しました。

たとえば、速いパソコンを探しているときに、「性能の高い処理装置を備えている」という情報だけが示される場合と、その情報に加えて「インターネットで注文できる」など速度とは関係の薄い説明が三つ加わる場合を比べました。

求める性能を備えていそうかを9段階で評価した結果、八種類の商品の評価をまとめた平均は、性能を裏付ける情報だけの場合が6.28点、関係の薄い情報も加えた場合が5.83点でした。追加情報があると、商品が望む性能を備えているという見込みが弱まりました(Meyvis・Janiszewski, 2002)。

同じ論文の後続の実験では、どのような目的で情報を見るかによっても結果が変わりました。求める性能を確認しようとしながら情報を見ると、関係のない説明まで「その性能を裏付けていない情報」として扱い、評価を弱める場合があると研究者たちは考えています。

2022年:成績予測の再検証では効果が確認されなかった

ハイハウスら(2022)は、希薄化効果の基本的な結果を確かめるため、実験前に調査方法を定めて、796人を対象に研究しました。大学生の成績について、高い成績または低い成績を予想させる情報だけを示す場合と、そこに「自分は明るい性格だ」といった関係の薄い情報を加える場合を比べました。

しかし、この研究では情報を追加したことで成績予測が平均に近づくという結果は確認されませんでした。研究者たちは、希薄化効果は従来考えられていたほど安定して現れるとは限らないと指摘しています(Highhouseほか, 2022)。

これまでの実験で効果が報告されたことと、同じ効果が別の参加者や条件でも必ず見られることは、分けて考える必要があります。

なぜ、無関係な説明が予測に入り込むのか

研究では、いくつかの説明が検討されています。一つは、人物の特徴を多く知ると、最初の手がかりが思い起こさせた典型的な人物像と、実際に紹介された人物との印象が一致しにくくなるという考え方です。1981年の研究者たちは、このような人物全体の印象の変化を説明として提案しました。

もう一つは、情報を示す側が「判断に役立つ情報を選んでいるはずだ」と思い、関係の薄い項目まで使おうとすることです。1996年の研究は、情報がどのように選ばれたと説明されるかが結果に関わることを示しました。

また、2002年の商品研究では、欲しい性能を裏付ける情報を探していると、関係の薄い説明を「裏付けにならない情報」としてまとめて捉え、確信を弱めるという説明が示されました。

これらは、希薄化効果の起こり方を説明する考え方です。どの場面でも一つの仕組みが働くと確定したわけではありません。追加情報が実際には重要な欠点や別の利点を示すなら、評価が変わることは合理的な判断にもなります。

身近な場面で考える

たとえば、家族が新しいパソコンを探していて、動画の編集を快適にできるかを知りたいとします。販売ページで処理装置や作業用の記憶容量を確認すると、希望する作業に使えそうだと思うかもしれません。

ところが、同じ性能の説明に、箱のデザイン、店の広告、配送時の包装といった、編集の速さにあまり関係のない紹介まで続くと、買う人の印象が最初ほどはっきりしなくなることも考えられます。これは仕組みを理解するための仮の例で、この販売ページについて実際に実験したわけではありません。

判断したいことが「動画を快適に編集できるか」なら、処理装置や作業用の記憶容量、実際の編集作業での性能を中心に確かめる方が目的に合っています。一方、箱や包装も贈り物として選ぶ際には意味を持つかもしれません。どの情報が大切かは、判断する目的によって変わります。

希薄化効果は、情報が多いほど判断が必ず正確になるわけではないことを考える手がかりです。新しい情報が加わったときには、それが何を裏付け、何には関係しないのかを確かめると、判断の理由を整理しやすくなります。これは研究から考えられる工夫であり、どの場面でも判断の誤りを防ぐと実証された方法ではありません。

参考文献・出典