情報バイアスとは?判断に役立たない情報まで欲しくなる心理
何かを決める前に「もう少し調べてから」と考えることがあります。情報が増えれば判断しやすくなる場合もありますが、どんな答えが見つかっても選ぶものは変わらないのに、調べずには決められないと感じることもあります。
情報バイアスとは、その情報からどのような答えが得られても、目の前の判断や行動を改善できないのに、情報を得ることに価値があると考えやすい偏りです。
情報バイアスとは?「知りたい」と「判断に必要」を分ける
たとえば、映画館までの行き方や上映時間を確認し、映画を観に行くと決めている人がいるとします。予報が晴れでも雨でも、同じ映画館へ行くつもりです。それでも「当日の天気が分からないうちはチケットを予約できない」と感じるなら、予約するかどうかという判断には必要のない情報を待っていることになります。
もちろん、天気は傘を持つか、移動にどれくらい時間をかけるかという別の判断には役立ちます。ここで大切なのは、情報の価値は、何を決めたいのかによって変わるという点です。
バロン、ビーティー、ハーシーの1988年の研究では、質問や検査によって得られる答えが、どれも最終的な行動を変えない場合にも、その質問を有用だと評価する傾向が「情報バイアス」として扱われました(Baronほか, 1988)。
気になることを知るのは、それ自体が楽しみになる場合もあります。情報バイアスで問題になるのは、特に選択を良くするために必要だと考えて情報を集めているのに、その情報が選択を変える役割を果たさない場合です。
なぜ、判断が変わらなくても情報を求めるのか
判断に使える情報かどうかを考えるには、「答えがAの場合にどうするか」と「答えがBの場合にどうするか」をそれぞれ確かめる必要があります。両方で同じ選択をするなら、少なくともその選択を決めるために答えを待つ必要はありません。
ところが、私たちは「この質問なら何か分かる」「詳しい情報が増える」という点に注意を向け、その結果で実際に選び方が変わるかまでは考えないことがあります。1988年の研究者たちは、こうした点を十分に確かめないことが、情報の価値を高く見積もる一因だと説明しました(Baronほか, 1988)。
また、情報を待つ間にその情報が重要そうに思えてきて、結果を知った後には、最初から知っていた場合より判断に強く反映してしまう可能性も研究されています(Bastardi・Shafir, 1998)。ただし、これらは異なる実験で調べられた現象であり、すべての情報収集が同じ理由で起こるという意味ではありません。
研究で分かっていること
1988年:行動を変えない検査にも価値を感じた
バロンらは、質問や検査の役立ち具合をどう評価するかについて、六つの実験を報告しました。このうち第四実験では、三種類の架空の病気を想定し、それぞれの検査が治療対象を判断するのにどれほど役立つかを参加者に評価してもらいました。病気Aの可能性は64%、病気Bは24%、病気Cは12%と設定され、それぞれの病気だった場合に検査が陽性・陰性になる確率も示されました。
それぞれの検査について、参加者は役立ち具合を0点から100点で評価しました。ある検査では、陽性でも陰性でも最も可能性が高い病気Aへの治療を選ぶのが最善であり、研究で設定された「正しい治療を選ぶ」という目的には役立ちません。それでも、そうした検査に0点より高い評価を付ける回答が見られました。
この実験で分析されたのは12人の回答です。研究者たちは、選ぶ治療が変わらなくても、病気について詳しく分かるという点に価値を感じる傾向があると解釈しました。架空の状況での判断を調べた研究であり、医療現場で実際に不要な検査が行われたことを示すものではありません(Baronほか, 1988)。
1998年:情報を待てる条件で、最終的な選択の割合が変わった
バスタルディとシャフィールは、大学生に授業を履修するかどうかを考えてもらいました。その授業は興味深く、卒業までに再び開講される予定はありませんが、人気のある先生が教えるとは限らない、という設定です。
人気の低い先生が担当すると最初から分かっていた140人のグループでは、82%が履修すると答えました。一方、担当の先生が翌日まで分からない149人のグループでは、42%がすぐに履修を決め、2%が履修しないと決め、56%が翌日まで判断を待つことを選びました。待つと答えた人には、人気の低い先生が担当すると伝えられました。その後、149人全体の29%に相当する人が履修を選び、27%に相当する人が履修を見送りました。最初に履修を決めた人と合わせると、最終的に履修すると答えた人は71%でした。
先生の情報を初めから知っていたグループでは82%が履修を選んだのに対し、情報を待てるグループでは最終的に71%でした。この71%には、情報を待たずに最初から履修を決めた人も含まれます。研究者たちは、いったん情報を求めると、その結果を判断に強く反映して選択が変わる可能性を示しました。ただし、比較したのは異なる参加者のグループであり、実際の履修記録ではなく、仮の状況についての回答です(Bastardi・Shafir, 1998)。
2007年:待つことの不利益によって結果が変わった
ダンカンら(2007)は、大学生160人に、仮の授業について、その場で履修する・履修しない・翌日まで決定を待つ、という三つから回答を選んでもらいました。担当の先生はまだ分からない場合と、人気の低い先生だと最初から分かっている場合を設け、空席が6席ある場合と、残り1席しかない場合を比べました。
担当の先生がまだ分からない人では、空席が6席ある条件で40人のうち48%が翌日まで待つことを選びました。一方、残り1席の条件では40人のうち待つ人はいませんでした。待つ間に席が埋まって履修できなくなる可能性が高いと、すぐに決める回答が増えたのです。
先生が人気の低い人だと最初から分かっている人でも、空席が6席のときは32%、残り1席のときは21%が決定を先延ばしにしました。空席が6席の場合、先生が分かっている人の32%と分からない人の48%という差は、統計的には明確ではありませんでした。研究者たちは、情報がまだ分からないことだけでなく、選択への自信のなさも、判断を待つ理由になり得ると考えています(Duncanほか, 2007)。
身近な場面で考える
たとえば、旅行用のかばんを買おうとしている人がいるとします。大きさ、重さ、価格を確認し、どちらの色でも買いたいと思える商品を見つけました。しかし、注文前に「次回入荷する色を知ってから決めよう」と考え、その情報を調べるために購入を先延ばしにします。
もし青色でも黒色でもそのかばんを買うと決めていて、色によって届く時期や価格も変わらないなら、入荷する色の情報は購入するかどうかを決めるためには必要ありません。これは研究で調べた買い物の実例ではなく、仕組みを理解するための仮の場面です。
情報を探し始めたときには、「どのような答えが出たら、今の選択を変えるだろうか」と考えてみると、調べる必要がある情報を整理できます。もし答えによって選択が変わるなら、その情報を確かめる意味があります。どちらの答えでも同じ選択なら、急いで決めなければならない場面では、情報を待たずに判断することも考えられます。
ただし、その情報が後の判断に役立つ場合や、知ること自体が大切な目的である場合には、調べる価値があります。実際、将来の行動を変えられない結果についても、人が事前に知りたがる程度は、良い結果が起こる見込みなどによって変化することが報告されています(Liewほか, 2023)。これは情報バイアスそのものの再検証ではなく、情報を求める理由が一つではないことを考える関連研究です。
情報バイアスを知ると、情報を集める前に、何を決めたいのか、その情報で選択がどう変わり得るのかを確かめる大切さが分かります。
参考文献・出典
- Baron, J., Beattie, J., & Hershey, J. C. (1988). Heuristics and Biases in Diagnostic Reasoning: II. Congruence, Information, and Certainty. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 42(1), 88–110. 情報バイアスの説明、架空の病気と検査を使って判断を調べた実験の根拠。
- Bastardi, A., & Shafir, E. (1998). On the Pursuit and Misuse of Useless Information. Journal of Personality and Social Psychology, 75(1), 19–32. 履修を決める場面で、情報が最初から分かる場合と待ってから知る場合を比較した研究の根拠。
- Duncan, S. M., Wengrovitz, S. M., Sedlovskaya, A., & Patalano, A. L. (2007). Weighing Waiting: The Influence of Information Certainty and Delay Penalty on Waiting for Noninstrumental Information. Judgment and Decision Making, 2(6), 351–358. 判断を待つ不利益や選択への自信に関する実験の根拠。
- Liew, S. X., Embrey, J. R., & Newell, B. R. (2023). The Non-unitary Nature of Information Preference. Psychonomic Bulletin & Review, 30, 1966–1974. 事前に結果を知りたい程度が、結果の見込みなどで変わるという関連研究の根拠。