イマジネーション膨張とは?想像した出来事を実際に経験したと思いやすくなる現象

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

子どもの頃、家で転んで窓ガラスを割ってしまった場面を想像したとします。最初は「そんなことはなかったはず」と思っていても、あとから「本当に経験したかもしれない」と感じることはあるのでしょうか。

イマジネーション膨張とは、過去の出来事を具体的に想像した後、その出来事が実際に起きたと思う確信が高まることがある現象です。研究では、特に子どもの頃に起きたかどうか分からない出来事について調べられています。ただし、確信が少し高まることと、その出来事の詳しい記憶ができることは同じではありません。

イマジネーション膨張とは?何が変わる現象なのか

この現象は、ガリー、マニング、ロフタス、シャーマンが1996年に発表した研究で「イマジネーション膨張(imagination inflation)」と名付けられました。研究者たちは、幼い頃の出来事を想像した後で、「その出来事が自分に起きた」とどのくらい確信するかが変わるかを調べました(Garryら、1996)。

たとえば、子どもの頃に木に登って降りられなくなった場面を想像する人がいるとします。その人は、木の高さや周りにいた人などを、自分の知っている場所や人を使って思い浮かべるかもしれません。こうして場面が想像しやすくなると、あとで「そんなことがあったか」という質問を受けた際、以前よりも「あり得た」と感じる場合があります。

大切なのは、研究で測定するものの違いです。起きたと思う確信は、「絶対になかった」から「なかったと思うが、少し自信がない」へ変わっても高まります。一方、出来事を実際に思い出せるという感覚には、当時の光景や行動を記憶として思い出していると本人が感じることが含まれます。イマジネーション膨張の基本的な実験では、主に前者の変化を調べています(Brewin・Andrews、2017)。

想像した出来事が「起きたかもしれない」と感じられる理由

考えられる理由の一つは、想像することで、その出来事が頭に浮かびやすくなることです。一度具体的に思い描いた場面は、次に考えたときにも浮かびやすくなる場合があります。その思い浮かべやすさを「以前、本当に経験したからだ」と判断すると、実際に起きたという確信につながり得ます。

もう一つは、その場面をどこで知ったかの取り違えです。あとから木に登る場面を思い浮かべたとき、子どもの頃の経験を思い出したのか、最近自分で想像した場面を思い出したのかが曖昧になる可能性があります。

これらは研究者が検討してきた説明であり、一つの仕組みだけで、すべての反応が起こると決まったわけではありません。また、人は日常的にさまざまな出来事を空想していても、その大半を実際の経験だと思い込むわけではありません(Garryら、1996;Sharmanら、2004)。

研究で分かっていること

1996年:想像した出来事では、確信が高まる回答が多かった

ガリーら(1996)の実験では、大学生46人が最初の調査に参加し、そのうち38人が最後まで参加しました。最初に、「10歳になる前に、手で窓ガラスを割ったことがある」など40種類の出来事について、実際に起きたとどれほど確信しているかを、1~8の数字で答えてもらいました。

2週間後、研究者が選んだ8種類の出来事のうち、参加者ごとに4種類だけを想像してもらいました。参加者は、何が起き、周りに何があり、その後どうしたかを具体的に思い描き、短い質問にも答えました。残る4種類は想像せず、その後、最初と同じ40種類の出来事について再び確信を答えました。

最初に「おそらく起きていない」と答えた出来事に限ると、二度目の確信の点数が上がった割合は、想像した出来事で34%、想像しなかった出来事で25%でした(Garryら、1996)。

これは、参加者の34%が存在しない体験を詳しく思い出した、という数値ではありません。参加者と出来事の組み合わせについて、最初より「起きた」と思う点数が高くなった割合です。また、想像していない出来事でも点数が上がることがありました。研究者たちは、想像した出来事の方が、その上昇が多かったことに注目しました。

1999年:別の出来事を使った実験でも、似た結果が見られた

ヒープスとナッシュ(1999)は、1996年の研究とは異なる子ども時代の出来事の一覧を使い、想像する前後で「本当に起きた」と思う程度を調べました。

その結果、想像した出来事は、想像しなかった出来事より、実際に起きたと判断されやすくなる傾向が再び見られました。一方、確信の変わり方には個人差もありました(Heaps・Nash、1999)。

この結果からも、想像したら誰でも必ず確信が高まるということではなく、反応の大きさが人によって異なると考えられます。

2001年:想像の効果なのか、繰り返し質問した影響なのかが議論された

ペズデクとエディ(2001)は、最初に「起きていない」と低い点数を付けた出来事は、同じ質問をもう一度受けるだけでも、点数が多少高くなりやすいのではないかと考えました。以前の研究に似た手順で、若い成人と年長の成人を調べました。

その結果、最初に低く評価した出来事は二度目に点数が上がり、最初に高く評価した出来事は点数が下がる傾向が見られました。こうした変化は、想像した出来事だけに限られず、想像しなかった出来事でも生じました。研究者たちは、もともと極端だった点数が二度目には中間へ近づくという統計的な理由で、少なくとも一部の結果を説明できると主張しました(Pezdek・Eddy、2001)。

これに対してガリーら(2001)は、その説明だけでは想像の有無による違いを十分に説明できないと反論しました(Garryら、2001)。つまり、点数の上昇をすべて想像の効果とみなすことにも、すべて統計的な変化として片付けることにも慎重さが必要です。

2004年:想像以外の方法でも確信が高まり、繰り返す回数の上乗せはなかった

シャーマンら(2004)は、子どもの頃に起きたと考えにくい複雑な出来事を、頭の中で想像する場合と、文章を言い換える場合で比較しました。取り上げた出来事に触れる回数も、0回、1回、3回、5回に分けました。

すると、想像した場合も言い換えた場合も、その出来事が実際に起きたと思う確信が高まりました。ただし、1回触れる場合と比べて、3回や5回に増やしたことによる追加の効果は見られませんでした(Sharmanら、2004)。

この研究は、想像によって場面を鮮明にすることだけでなく、出来事について考えたり言葉にしたりすることで、その内容に親しみが生じることも関係している可能性を示しています。想像を重ねるほど際限なく確信が増すと示した結果ではありません。

2005年:二種類の手がかりを組み合わせた条件では、変化が抑えられた

シャーマンら(2005)は、想像した出来事の出どころを判断しやすくする手がかりと、出来事を考えたことで親しみが生まれたと気付きやすくする手がかりを用意しました。具体的には、想像する場面をどの視点から捉えるかを変えたり、出来事の起こりやすさを判断する質問票を使ったりしました。

その結果、二種類の手がかりを両方与えた条件では、想像後に確信が高まる現象が見られませんでした。一種類だけの条件では、同じようには防げませんでした(Sharmanら、2005)。

想像したことと実際に経験したことを区別する際には、どこから生まれたイメージか、なぜ親しみを感じるのかという複数の情報が手がかりになり得ると考えられます。ただし、この実験の方法をそのまま日常で行えば、必ず思い違いを防げるという意味ではありません。

「実際に経験した記憶が作られた」とは、どこまで言えるのか

イマジネーション膨張の研究では、出来事が実際に起きたと思う程度を、想像する前後に点数で答えてもらうことが多くあります。この点数が上がっても、その出来事の具体的な記憶が作られたことや、実際に起きなかったと確かめられたこととは別の問題です。

ブリューインとアンドリュース(2017)は、想像、誤った情報を伝えること、架空の出来事を自伝的な記憶として思い出させることを用いた研究を区別して整理しました。その結果、想像した後に「起きた」と思う程度が高まっても、平均的な変化は小さく、その後も「起きた可能性は低い」と判断する場合が多かったと報告しています(Brewin・Andrews、2017)。

この現象の意味は、想像と現実の区別がいつも失われることではありません。過去の出来事についての確信は、その出来事を想像したこと自体によっても変わり得るという点にあります。

身近な場面で考える

たとえば、同級生から「小学生の頃、遠足であなたが池に落ちかけたんじゃなかった?」と聞かれ、思い当たる記憶がない人がいるとします。その人が、遠足の景色や当時の友達の顔を使って、その場面を何度も頭に思い浮かべたとします。数日後、「もしかすると本当にあったかも」と感じるようになるかもしれません。

これは仕組みを理解するための仮の例であり、その人に実際に変化が起きると予測したものではありません。また、友人が話したことによる影響と、自分で想像したことによる影響は、同じものとは限りません。

大切な過去の出来事を確かめたいときは、「実際に覚えていたこと」「誰かから聞いたこと」「後から自分で想像したこと」を分けて考えると、情報の出どころを整理しやすくなります。写真や当時の記録などがある場合は、それも確かめる手がかりになります。ただし、振り返りだけで出来事の真偽が確定するわけではありません。

イマジネーション膨張を知ることは、想像する力そのものを疑うためではなく、鮮明に思い浮かぶことや、起きた気がすることを、実際に起きた証拠とすぐに同一視しないための視点につながります。

参考文献・出典