描画効果とは?覚えたい内容を絵にすると記憶はどう変わるのか

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

覚えたい物の名前を何度も書く場合と、その物の簡単な絵を描く場合では、どちらが後から思い出しやすいのでしょうか。心理学の実験では、自分で絵を描いた方が、文字を書いた場合よりよく覚えられることがあります。

この現象を描画効果と呼びます。覚える情報を絵にして表す行動が、後の記憶を助けるというものです。ただし、研究で特によく確かめられているのは、身近な物を表す単語などを覚える場合です。

描画効果とは?文字を書く場合と何が違うのか

たとえば、画面に「りんご」という言葉が表示されたとします。一方では「りんご」と文字で書き、もう一方では丸い実や葉を描いて、りんごの絵にします。その後、絵や文字を見せずに、覚えている単語を挙げてもらいます。このように、同じ情報を覚えるときに何をしたかを比べるのが、描画効果の代表的な研究方法です。

ここでの「描画」は、用意された絵を眺めることではなく、覚えたいものを自分で絵にする行動です。絵を見た方が文字を見るより覚えやすいという「画像優位性効果」とは、比較する行動が異なります。実際に、描く場合と用意された絵を見る場合を直接比べた研究もあります(Wammesら、2016)。

なぜ絵を描くと覚えやすくなると考えられるのか

絵を描こうとすると、まず言葉の意味を考え、どんな形で表せるかを思い浮かべます。そして、実際に手を動かして線や形を作ります。たとえば「自転車」なら、車輪の位置やハンドルの形を考えながら描くでしょう。

研究者たちは、意味を考えること、物の姿を思い浮かべること、手を動かすことが結び付くため、後で思い出す手がかりが増える可能性を提案しています。絵にした対象を、言葉の意味だけでなく、形や描いた経験からも思い出せるかもしれないという説明です(Fernandesら、2018)。

ただし、この説明は研究結果をもとに提案された仕組みです。最初の研究では、言葉の意味を詳しく考える、頭の中に姿を思い浮かべる、用意された絵を見る、といった方法と比べても、描く場合に記憶の利点が見られました。一つの働きだけで描画効果のすべてを説明できるわけではありません(Wammesら、2016)。

研究で分かっていること

2016年:自分で絵を描いた単語は、文字を書いた単語より思い出された

ワメスら(2016)は、7つの実験で描画効果を調べました。最初の実験では、参加者に身近な物の名前を30語示し、そのうち15語を絵にし、残り15語を文字で書いてもらいました。絵を描く場合も文字を書く場合も、各語について40秒間作業するよう求めました。参加者には後で記憶を試すことを知らせず、約2分間の別の課題を挟んでから、覚えている単語を手がかりなしで答えてもらいました。

結果は、絵を描いた単語の方が、文字を書いた単語より多く思い出されるというものでした。描く時間を短くする、覚える単語を増やす、すべての単語を描く人とすべてを書く人に分けるといった条件でも、描く場合の利点が確認されました(Wammesら、2016)。

ただし、主に絵にしやすい身近な物の名前を使い、比較したのは特定の方法で文字を書いた場合です。複雑な文章や数字を含む情報まで、同じように覚えやすくなると示した研究ではありません。

2017年:定義を絵にする方法は、言い換える方法と同程度だった

ワメスら(2017)は、大学の教科書に出てくる用語と説明を学ぶとき、その内容を絵で表す場合と、文章をそのまま書き写す場合などを比べました。絵にした場合は、書き写す場合より後の記憶がよくなりました。

一方、説明を自分の言葉で言い換える方法と、絵を描く方法では、記憶成績が同程度でした。覚える内容の意味を考え直すことも、記憶の助けになる可能性があります(Wammesら、2017)。

2019年:覚える内容と関係のない落書きでは、同じ利点が見られなかった

ミードら(2019)は、言葉を聞きながら、その言葉が表す物を描く場合、言葉を書く場合、関係のない落書きをする場合を比べました。覚える言葉と無関係な線や形を自由に描く条件では、描く対象を言葉に合わせた条件や文字を書く条件より、後で思い出せた言葉が少なくなりました。

あらかじめ印刷された図形を塗るだけの条件でも、文字を書く場合と同程度の記憶成績でした。何かを描けばよいのではなく、覚える内容そのものを絵で表すことが重要だと考えられます(Meadeら、2019)。

2019年:単語そのものと提示された順番では、記憶への影響が異なった

ジョンカーら(2019)は、単語を見てその物の絵を描く場合と、単語を黙って読む場合を比較しました。実験では、覚えた単語そのものを思い出せるかに加え、単語が示された順番を覚えているかも調べました。

絵を描く方法は単語そのものを思い出す助けになる一方、すべての単語を描いて学んだ場合は、すべてを黙読した場合より、提示された順番の記憶が不正確でした(Jonkerら、2019)。単語を覚えやすくなることと、その並び順まで覚えやすくなることは別です。

2024〜2025年:学び方の組み合わせと描き方で効果は変わる

ハフら(2024)は、絵にする単語と文字で書く単語を同じ一覧に混ぜた場合と、一覧のすべてをどちらか一つの方法で学んだ場合を比べました。どちらの方法でも描く利点は見られましたが、絵と文字を混ぜた場合の差は大きくなりました。その差には、描いた単語がよく覚えられたことに加え、文字だけを書いて学ぶ場合に比べ、混ぜて学んだ一覧の中の文字で書いた単語が思い出されにくくなったことも関わっていました(Huffら、2024)。

さらにナミアスとハフ(2025)は、単語と見本の画像を示し、見本を写して描く場合と、見本とは違う絵を自分で考えて描く場合を比較しました。どちらにも文字を書く場合より記憶上の利点が見られましたが、新しい絵を考えて描く方が、その利点はより安定していました(Namias・Huff、2025)。

研究で比べる学習方法や、後で何を思い出すかによって、効果の大きさは変わります。

身近な場面で考える

たとえば、理科で植物の「根」「茎」「葉」の名前と、それぞれがどの部分かを覚える生徒がいるとします。名前を繰り返し書くだけでなく、植物を簡単に描いて、どこが根でどこが葉かを考えながら書き込む方法も考えられます。これは、意味と形を自分で結び付けるという描画効果の考え方を使った仮の例です。

絵にしにくい細かな定義や数字は文字でも残し、最後に絵やメモを見ずに説明できるか確かめる方法が考えられます。また、理科の実験手順など、順番を覚える必要がある内容では、絵を描くことに加えて、最初から順に説明し直す練習も役立つかもしれません。

描画効果の要点は、覚えたい情報を自分で絵にする行動が、その情報を思い出す助けになる場合があるということです。絵の見栄えを整えることより、何をどう表すか考えながら描くという経験に注目すると、日常の学習でも取り入れ方を考えやすくなります。

参考文献・出典