実演効果とは?動作を実際に行うことが言葉の記憶に与える影響

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

「手をたたく」「コップを持ち上げる」といった動作を表す言葉を覚えるとき、読むだけでなく、実際にその動きをしてみると、後で思い出しやすくなることがあります。

実演効果とは、動作を表す言葉を覚える際に、その意味に合った動作を自分で行うと、言葉を読んだり聞いたりするだけの場合より記憶の成績がよくなる現象です。特に短い動作の言葉や文を使った実験で調べられています。

実演効果とは?言葉を覚えるときに動作を加える

たとえば「コップを持ち上げる」という文を示されたとします。ある人はその文を読んで覚え、別の人は文を読みながら実際にコップを持ち上げます。後から文を見せずに覚えている言葉を答えてもらうと、実際に動作した人の方がよく思い出せる場合があります。これは研究方法を説明するための仮の例です。

実験では、本物の道具を使うこともあれば、道具があるつもりで動作をすることもあります。また、覚えた言葉を何も見ずに挙げてもらう方法と、候補の中から以前に見た言葉を選んでもらう方法があります。何を比べ、どう記憶を確かめるかは、結果を理解するうえで重要です(Robertsら、2022)。

実演効果で注目するのは、覚えたい動作の意味と、自分が行う動作が対応していることです。単に身体を動かすだけで、どんな情報でも覚えやすくなるという現象ではありません。

なぜ動作をすると言葉が記憶に残りやすいのか

「コップを持ち上げる」という文に合わせて動くには、何を持ち、どちらへ動かすのかを考え、手の動きを準備する必要があります。言葉を理解することと、自分で動作を計画して実行することが結び付くのです。

研究者たちは、この動作を考えて準備する過程と、実際に身体を動かす経験の両方が、後から言葉を思い出す手がかりになると考えています(Robertsら、2022)。

ただし、動作を考えることと身体を動かすことが、それぞれどれほど記憶に役立つかは、覚える言葉や実験の条件によって変わります。動作を計画したから必ず覚えられる、という決まりが確かめられたわけではありません。

研究で分かっていること

言葉の指示で動く場合と、見てまねする場合では違いがあった

ジマーとエンゲルカンプ(1996)は、4つの実験で、動作を言葉で指示されて自分で行う場合、誰かが行う動作を見てまねする場合、見るだけの場合、言葉だけで覚える場合を比較しました。後から覚えた動作を手がかりなしで答えてもらいました。

その結果、言葉の指示に合わせて自分で動作した場合の方が、見てまねした場合より多く思い出されました。また、手本を見る場合と、その動きをまねする場合の成績は同程度で、言葉だけで覚える場合はそれらより低い成績でした(Zimmer・Engelkamp、1996)。

研究者たちは、人の動きをそのまままねする場合と違い、言葉だけで指示された人は自分で動作を組み立てる必要がある点に注目しました。動くことに加え、どう動くかを考える過程も関わる可能性があります。

覚える言葉と無関係な身ぶりには、同じ利点がなかった

シヴァシャンカーとフェルナンデス(2022)は、動作を表す言葉を覚えるとき、言葉の意味に合う動作をする場合、関係のない身ぶりをする場合、読むだけの場合を比べました。最初の実験では45の動作を表す単語を使い、後から覚えている単語を自由に答えてもらいました。

意味に合った動作をした単語は、読むだけの場合や、関係のない身ぶりをした場合より多く思い出されました。別の実験で空中に文字を書く動きをさせた場合にも、意味に合う動作をする利点が確認されました(Sivashankar・Fernandes、2022)。

この比較からは、手を動かすこと自体よりも、覚える言葉に対応する動作を考えて行うことが大切だと考えられます。

高校生の実験では、聞く・書く・実演する方法で差が見られた

セーデルルンドら(2023)は、ノルウェーの高校生100人に、動作を表す短い文を覚えてもらいました。12文ずつの一覧を用いて、動作を実際に行う、文を聞くだけ、手書きする、キーボードで入力するという4つの方法を比較しました。

後から思い出せた項目は、実演した場合が最も多く、次に聞くだけの場合でした。手書きと入力では、どちらもこの2つの方法より少なくなりました(Söderlundら、2023)。

この研究が調べたのは、短い動作の文を覚えた後で思い出す成績です。学校の授業全体の理解や、ノートを取ることの価値まで比べたものではありません。

多くの研究で効果は確認されたが、比べる相手によって結果は変わる

ロバーツら(2022)は、実演効果に関する145件の行動研究の結果をまとめて分析しました。全体として、動作を実際に行った場合に記憶の成績がよくなる傾向が確認されました。一方で、言葉を読む場合と比べるのか、他人の動きを見る場合と比べるのか、実験をどのように組み立てるのかによって、効果の大きさは異なっていました(Robertsら、2022)。

特に「自分で動く場合」と「人の動きを見る場合」の比較には条件があります。ステフェンスら(2015)が研究を整理したところ、一つの一覧にある動作をすべて自分で行う場合と、すべて見て覚える場合を比べ、後で手がかりなしで思い出す実験では、両者の成績が同程度のものが多くありました。一方、同じ一覧の中に自分で行う動作と見るだけの動作を混ぜると、実演した動作をよく思い出す傾向が見られました(Steffensら、2015)。

新しい作業の一連の手順についても、すべて自分で行う場合と、他人が行う様子をすべて見る場合とを比べた研究では、思い出す成績で実演が一貫して優れるとは確認されていません(Steffensら、2015)。

さらにウェイら(2025)は、若い参加者48人に、短い一連の身体動作を示す動画を見せました。参加者は、動画に合わせて自分も動作する場合と、見るだけの場合の両方を経験しました。その後、以前とまったく同じ動作の動画と、似ているものの動きが異なる動画を示され、学習時に見たものかどうか判断しました。正しく見分けた割合は、自分も動作した場合が67.0%、見るだけの場合が61.9%でした(Weiら、2025)。

2015年の研究整理と2025年の実験では、覚える内容や記憶の確かめ方が違います。動作を覚える目的が、言葉を思い出すことなのか、以前見た動きを見分けることなのかによっても結果の読み方は変わります。

身近な場面で考える

たとえば、体操教室に通い始めた人が、「両腕を上げる」「右足を前に出す」という短い指示を覚えようとしているとします。言葉を聞くだけでなく、その指示に合わせて実際に身体を動かせば、後から指示を思い出す手がかりが増えるかもしれません。

これは実演効果を日常に置き換えた仮の例です。複数の動作を順番どおりに覚えるときは、自分で動く方が、他人の動作を見て覚えるより有利とは限りません。また、動作の正確さや運動の上達については、ここで紹介した記憶の研究からは結論を出せません。

覚えたいものが短い動作の指示なら、言葉の意味を確かめながら、実際にその動きをしてみる方法が考えられます。その後で指示を見ずに、どの動作だったかを思い出してみると、記憶を確かめられます。

実演効果が示しているのは、言葉の内容と身体の動きを結び付けることで、その言葉の記憶がよくなる場合があるということです。何を覚えたいのか、言葉だけで学ぶのか、人の動きを見るのか、自分で動くのかを分けて考えることが大切です。

参考文献・出典