自己説明効果とは?学んだ内容を自分で説明すると理解が深まる仕組み
算数の解答例を読んで「分かった」と思っても、数字が少し変わると解けなくなることがあります。答えを眺めるだけでなく、「なぜここでこの計算をするのか」と自分に説明しながら学ぶと、考え方を理解しやすくなる場合があります。
自己説明効果とは、学んでいる内容について、理由や知識同士のつながりを自分で説明することで、理解や問題を解く成績がよくなることがある現象です。実験では、説明するよう促された人と、そうした指示なしで学んだ人などを比較しています。
自己説明効果とは?自分で「なぜ」を説明する学習
自己説明は、読んだ文章や解答例について、「どうしてそうなるのか」「今まで知っていたこととどうつながるのか」を自分なりに考えて説明することです。誰かに教える必要はなく、頭の中で考えたり、声に出したり、ノートに書いたりする形が考えられます。
たとえば、算数の「3+4=□+5」を学ぶとします。「答えは2」と覚えるだけなら、計算結果を記憶しています。一方、「左側は7なので、右側も7になる必要がある。5に2を足せば7になる」と説明するなら、等号の意味と答えの求め方を結び付けて考えています。これは現象を説明するための仮の例です。
単に教材の言葉を言い換えたり、内容を短くまとめたりする場合とは、理由や関係を自分で考える点が異なります。自己説明効果の研究では、解答例の各手順を説明する課題や、文章を読んで新しい内容と以前の知識をつなげる課題が用いられています(Chiら、1989、Chiら、1994)。
なぜ自分で説明すると理解が深まると考えられるのか
解き方を見ているだけなら、「最初にこの数字を使い、次にこの計算をする」という手順だけを追うこともできます。しかし、各手順の理由を説明しようとすると、「この計算は何を求めているのか」「前に学んだ決まりを使っているのか」と考える必要があります。
研究者たちは、新しく学ぶ内容を、すでに知っている考え方と結び付けることが理解を助けると考えています。また、説明が途中で止まれば、どこをまだ理解できていないかに気づくきっかけにもなります(Chiら、1994)。
ただし、これらは研究結果を説明するための考え方です。自分が作った説明が間違っていたり、必要な知識が足りなかったりすれば、それだけで正しい理解にたどり着けるとは限りません。研究でも、説明の質を支える問いかけがある場合の方が、学習の成果につながりやすいと報告されています(Rittle-Johnsonら、2017)。
研究で分かっていること
1989年:よく理解した学生は、解答例の理由を多く説明していた
チーら(1989)は、力学の問題の解答例を学ぶ学生が、どのようなことを考えながら例題を読んでいるかを調べました。解答例の手順を教科書の原理と結び付けて説明する学生は、そのような説明が少ない学生と比べ、後で例題だけに頼らずに問題を解く傾向がありました(Chiら、1989)。
これは、学習中に学生が実際にした説明と、その後の問題解決との関係を調べた研究です。この研究だけで、説明を多くすれば必ず成績が上がると因果関係を断定することはできません。
1994年:説明するよう促された生徒は、文章の理解が進んだ
チーら(1994)は、中学2年生に相当する生徒を対象に、人の血液循環について説明した文章を使って実験しました。14人には文章を一行読むごとに、自分で内容を説明するよう求めました。別の10人は同じ文章を2回読みましたが、自己説明をするようには求められませんでした。
全員に学習前後の理解を調べる問題を出したところ、自己説明を促された生徒の方が、学習前から学習後への成績の伸びが大きくなりました。さらに、説明を多く作った生徒ほど、文章に直接書かれていない働きを推測するような難しい問題で、理解が進んでいました(Chiら、1994)。
ただし、参加者は合わせて24人で、扱った内容は血液循環の説明文です。さまざまな教材でも必ず同じ結果になることを示した実験ではありません。
2006年:学んだ計算方法を別の問題に使う力が高まった
リトル=ジョンソン(2006)は、8~11歳の子ども85人を対象に、等号を含む算数の問題を使って学習方法を比較しました。解き方を教わるか自分で考えるかという違いに加え、学んだ考え方について自己説明をする場合と、しない場合を設けました。
その結果、自己説明を行った子どもは、学んだ手順を新しい形式の問題に使う成績がよくなりました。一方、計算の考え方そのものを別の方法で調べたテストでは、自己説明による明確な改善は見られませんでした(Rittle-Johnson、2006)。
この研究からは、解き方をほかの問題に使えるようになることと、数学の考え方全体を深く理解することは、同じ結果として扱えないと分かります。
多くの研究をまとめても利点が見られたが、条件によって変わる
リトル=ジョンソンら(2017)は、数学の学習について複数の研究をまとめ、自己説明を促すと、学んだ直後の手順の理解や問題解決などが、全体として改善する傾向を報告しました。特に、どのように説明すればよいかを手助けする条件では、成績の改善が大きい傾向がありました。ただし、通常の教室での効果や、時間がたった後も知識が残るかについては、根拠が限られていました(Rittle-Johnsonら、2017)。
ビスラら(2018)は、数学だけでなく、説明文を読む学習や問題の解き方を学ぶ場合などを含む64件の研究報告から、69の分析結果をまとめました。自己説明を促された人は、比較対象となった人より、全体として学習成績がよい傾向を示しました(Bisraら、2018)。ただし、研究ごとに学ぶ内容や説明の促し方、成績の測り方は異なります。
2023年:説明を求める問いを足せば必ず有利になるわけではない
バルビエリら(2023)は、算数・数学の解答例を示して学ぶ方法について、43本の論文に含まれる55件の研究をまとめました。その分析では、解答例とともに自己説明を促す問いを使った研究では、問いを使わなかった研究に比べ、解答例による成績の改善が小さい傾向が報告されました(Barbieriら、2023)。
これは、自己説明そのものの効果だけを直接比較した実験結果ではなく、解答例を用いた研究の特徴をまとめて比べたものです。「説明を加えると成績が下がる」と決めつけることはできませんが、自己説明の問いを増やすだけで常に学習がよくなるとは限らないことを考える材料になります。
身近な場面で考える
たとえば、家で分数の足し算を勉強している子どもが、「2分の1+3分の1=6分の5」という解答例を読んだとします。答えを写すだけではなく、「2分の1は6分の3、3分の1は6分の2。どちらも6分の1を何個分かで表してから足すので、6分の5になる」と説明できれば、計算の理由を考えたことになります。
これは自己説明を日常に置き換えた仮の例です。実際に試すなら、解答例の一つの手順について「なぜこの計算をしたのか」と問い、分からない部分は教材の説明と照らし合わせる方法が考えられます。まだ習っていない決まりまで、無理に自分だけで説明しようとする必要はありません。
自己説明効果は、学んだことをただ繰り返すのではなく、その理由やつながりを自分で組み立てることが、理解を助ける場合があると示しています。役立ち方は教材や学び方によって変わるため、説明の正しさを確かめながら使うことが大切です。
参考文献・出典
- Chi, M. T. H., Bassok, M., Lewis, M. W., Reimann, P., & Glaser, R. (1989). Self-explanations: How students study and use examples in learning to solve problems. Cognitive Science, 13(2), 145–182. — 力学の解答例を学ぶ学生の自己説明と、その後の問題解決との関係を調べた研究。
- Chi, M. T. H., de Leeuw, N., Chiu, M.-H., & LaVancher, C. (1994). Eliciting self-explanations improves understanding. Cognitive Science, 18(3), 439–477. — 血液循環の文章を学ぶ生徒に自己説明を促し、理解の変化を比べた実験。
- Rittle-Johnson, B. (2006). Promoting transfer: Effects of self-explanation and direct instruction. Child Development, 77(1), 1–15. — 子ども85人の算数学習で、自己説明が新しい問題への応用などに与える影響を調べた実験。
- Rittle-Johnson, B., Loehr, A. M., & Durkin, K. (2017). Promoting self-explanation to improve mathematics learning: A meta-analysis and instructional design principles. ZDM – Mathematics Education, 49, 599–611. — 数学の自己説明研究をまとめ、学習直後の効果や説明を支える条件を整理した研究。
- Bisra, K., Liu, Q., Nesbit, J. C., Salimi, F., & Winne, P. H. (2018). Inducing self-explanation: A meta-analysis. Educational Psychology Review, 30, 703–725. — 64件の研究報告に基づき、自己説明を促す学習の成果をまとめた分析。
- Barbieri, C. A., Miller-Cotto, D., Clerjuste, S. N., & Chawla, K. (2023). A meta-analysis of the worked examples effect on mathematics performance. Educational Psychology Review, 35, Article 11. — 数学の解答例を使う学習の効果と、自己説明を促す問いの有無による研究間の違いを分析した研究。