プレテスト効果とは?学ぶ前に問題に挑戦すると、その後の学習はどう変わるか

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

新しいことを勉強する前に、まだ知らない内容の問題を出されても、答えられないのだから意味がないように思えるかもしれません。しかし、先に問題へ挑戦し、その後で答えを学ぶと、最初から説明を読むだけの場合より、後でその内容を思い出しやすくなることがあります。

プレテスト効果とは、学ぶ前に問題に答えようとすることが、その後に学んだ情報の記憶を助ける場合がある現象です。特に、先に問題で問われた内容に効果が見られます。事前のテストで正解できることが条件ではありません。

プレテスト効果とは?学ぶ前に答えを考える意味

プレテストとは、学習に入る前に行う小テストのことです。プレテスト効果の研究では、まだ習っていない内容について問題を出し、いったん答えを考えてもらいます。その後、文章や授業などで正しい情報を学び、最後にどれだけ覚えているかを調べます。

たとえば、天体の本を読む前に「太陽系で最も大きい惑星は何か」と問われたとします。「土星だろうか」と予想してから本を読み、「木星」という答えを知る場面です。先に問題を考えていた人は、答えが載っている箇所に注意を向けやすくなると考えられます。これは仕組みを説明するための仮の例であり、この問題そのものを用いた研究結果ではありません。

似た名前の「テスト効果」は、一度学んだ内容を後から思い出す練習によって記憶が強まる現象です。プレテスト効果では、正しい答えを学ぶより前に問題に取り組み、その後の学習がどう変わるかに注目します。

なぜ、間違えてもその後の学習に役立つのか

考えられている理由の一つは、問題を先に知ることで、これから読む文章や聞く説明のどこに注意を向けるかが変わることです。答えを知らないと気づいた人は、学習中にその答えを探したり、見つけた情報を自分の予想と比べたりするかもしれません。

また、先に問題へ挑戦することで、その内容への関心が高まる可能性も指摘されています。ただし、注意の向け方や関心の変化のうち、どの働きがどれほど重要なのかは、まだ研究が続いています。PanとCarpenter(2023)

ここで大切なのは、最初に間違えることだけで記憶がよくなるわけではないという点です。研究で扱われるプレテストの後には、文章・動画・授業・答え合わせなど、正しい情報を学べる機会があります。知らなかった答えをその後に学ぶことまで含めて考える必要があります。

研究で分かっていること

先に不正解だった問題でも、後の記憶がよくなった

Richlandら(2009)は、視覚について書かれた説明文を使い、5つの実験を行いました。参加者には、文章を読む前に関連する問題へ答えようとしてもらう場合と、問題を解く代わりに文章を長く読む場合などを設けました。問題に関係する部分が目立つようにする工夫も比較条件に加え、ただ重要な言葉が目に入ることとの違いを調べています。

5つの実験すべてで、先に問題へ取り組んだ場合の方が、後のテストでよい成績を示しました。分析の対象となったのは、事前の問題では正解できなかった内容です。つまり、最初から答えを知っていたから成績がよかったという説明だけでは、この結果を捉えられません。Richlandら(2009)

大学の授業では、先に問われた内容に効果が見られた

Carpenterら(2018)は、大学の心理学の授業で、各回の授業内容について事前に問題を出す学生と、問題を出さない学生を比べました。授業の終わりに知識を確かめると、先に問題で問われた内容は、事前に問題を出された学生の方がよく覚えていました。一方、事前に問われなかった内容では、両者の成績は同程度でした。

1週間後の小テストでは、どちらの学生にも、授業の終わりに一度テストされた内容をよく覚えている傾向が見られました。ただし、この後から思い出す練習の効果が、事前の問題によってさらに大きくなったとはいえませんでした。Carpenterら(2018)

多くの研究をまとめると、効果の範囲が見えてくる

King-Shepardら(2025)は、プレテストに関する多くの研究結果をまとめて分析しました。その結果、事前に問われた情報については、後の記憶がよくなる傾向が確認されました。一方、同じ教材に含まれていても事前には問われていない情報については、全体として学習を改善する効果は確認されませんでした。また、問題を出すだけでなく正しい答えを伝えた条件では、先に問われた情報への効果がより大きい傾向が見られました。King-Shepardら(2025)

さらに、覚えた事実を答えられることと、その内容を深く理解できることは分けて考える必要があります。HausmanとRhodes(2018)の説明文を使った実験では、事実に関する事前の問題は、後で同じ事実を問われた際の成績を高めましたが、考え方の理解を問う事前問題には同様の効果が見られませんでした。HausmanとRhodes(2018)

これらの研究から、プレテスト効果は、学ぶ内容すべてが自動的に覚えやすくなる方法というより、先に問いを持った情報の学び方が変わり、その情報を覚える助けになる現象と捉えるのが適切です。

身近な場面で考える

たとえば、趣味で料理の科学を紹介する記事を読むとします。「パンの生地は、発酵すると何によって膨らむのだろう」と読む前に予想してみると、記事の中でその答えを説明している部分に意識を向けるきっかけになります。これは研究結果をそのまま再現した例ではなく、日常の学習への取り入れ方です。

試すなら、これから読む資料に答えが書かれている問いを一つか二つ用意し、最初に自分なりの答えを考えます。その後で資料を読み、正しい答えを確かめます。予想が外れても、答えを見つけて学び直せることが大切です。

資料の全体像を理解したい場合には、問いで扱った箇所だけを読んで終わらせず、ほかの説明にも目を向ける必要があります。プレテストの研究では、先に問われなかった情報まで記憶がよくなるとは限らないからです。

プレテスト効果が教えてくれるのは、学び始める時点で答えを知らなくても、問いを持ってから学ぶことには意味があり得るということです。後から正しい答えに出会えるようにしておくことが、この方法を考えるうえでの重要な条件です。

参考文献・出典