レミニセンス・バンプとは?若い頃の出来事を多く思い出す記憶の特徴

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

昔の出来事を振り返るとき、学生時代の友人との出会いや、初めて一人暮らしをした頃のことが次々に浮かぶ場合があります。長い人生の中で、なぜ若い頃の思い出が目立つのでしょうか。

レミニセンス・バンプとは、中高年の人が自分の人生を振り返るとき、10代から20代頃に経験した出来事の記憶が、ほかの時期に比べて多く思い出される傾向です。ただし、どの年齢の記憶が多いかは、何を思い出すよう求められるかによっても変わります。

レミニセンス・バンプとは?若い頃の記憶に見られる「山」

「レミニセンス」は過去を思い出すこと、「バンプ」は盛り上がりを意味します。思い出した出来事が何歳の頃に起きたかを調べ、その数を年齢ごとに並べると、青年期から成人になったばかりの時期に、記憶の数が増える「山」が見られることから名付けられました。

これは主に、中年期以降の人が自分で経験した出来事を思い出す研究で確かめられてきた傾向です。ルービンら(1986)は、さまざまな年齢の人が、言葉を手がかりに過去の経験を思い出した研究を整理し、中年期以降には若い頃の出来事が比較的多く思い出されることを示しました(Rubinら、1986)。

過去の出来事は、一般に時間がたつほど思い出しにくくなります。しかし、その傾向だけでは、数十年前の若い頃の出来事が目立って思い出されることを説明できません。一方、直近の出来事も多く思い出されやすいため、若い頃の記憶が人生のすべての時期の記憶より必ず多い、という意味ではありません。

この現象で比べているのは、思い出して報告された出来事の数です。その時期に実際に起きた出来事の数や、思い出した内容の正確さを測っているわけではありません。

研究で分かっていること

1997年:70歳の参加者では、手がかりを変えても若い頃の記憶が目立った

ルービンとシュルキンド(1997)は、20歳、35歳、70歳の人に、二つの方法で人生の出来事を思い出してもらいました。一つは、示された単語から思い浮かぶ自分の経験を答える方法です。もう一つは、人生で最も重要だと思う出来事を五つ挙げる方法です。

単語を手がかりにした場合、70歳の参加者には10〜30歳頃の出来事を多く思い出す傾向が見られました。また、重要な出来事を五つ挙げてもらった場合、70歳の参加者が挙げたものは20〜30歳頃の出来事に多く集まりました。一方、20歳と35歳の参加者が重要な出来事を挙げた場合の分布は、単語を手がかりにした場合と似ていました(Rubin・Schulkind、1997)。

この研究は、若い頃の記憶の「山」が見られると同時に、参加者の現在の年齢や、思い出すよう求める内容によって、山の現れ方が異なることを示しています。

2020年:初めての経験や出来事の重要さも調べられた

ウォルフとツィンプリッヒ(2020)は、60〜88歳の97人に31個の単語を示し、そこから思い出された2,813件の自分の経験を分析しました。研究者は、この調査で記憶が多く集まった11〜25歳を、若い頃の記憶の「山」に当たる時期としました。

分析では、それが初めての経験だったか、本人にとって重要だったか、どのような気持ちを伴う出来事だったかなどが、若い頃の記憶とほかの時期の記憶の違いに関係していました。ただし、それぞれの関係が研究者の予想どおりだったわけではありません。研究者は、一つの特徴だけで説明するより、複数の特徴と個人差を合わせて考える必要があると述べています(Wolf・Zimprich、2020)。

68件の研究をまとめると、年代の幅には違いがあった

ムナワルら(2018)は、2017年までに発表された68件の数量的な研究を整理しました。その結果、人生の重要な出来事を思い出す研究では、おおむね10〜30歳の記憶が目立つ一方、単語を手がかりにする研究では、目立つ年代が5〜30歳に広がっていました(Munawarら、2018)。

また、コッペルとルービン(2016)は、単語を手がかりにした場合の山は、重要な出来事を挙げてもらった場合より、若い年齢の側に現れ、山の大きさも小さいと整理しています(Koppel・Rubin、2016)。「何歳頃の記憶が特に多い」と説明するときは、何をどう尋ねた研究なのかを一緒に考える必要があります。

なぜ若い頃の出来事が思い出されやすいのか

自分がどんな人かを形づくる出来事と結び付きやすい

若い頃には、進学、初めての仕事、新しい人間関係など、それまでと生活が大きく変わる経験をする人がいます。そうした出来事は、後から「今の自分につながる経験」として振り返られることがあります。

ラースボーンら(2008)は、参加者に「私は〇〇な人だ」という自分についての表現を考えてもらい、それに関連する思い出を尋ねました。すると、思い出された出来事は、その人が自分をそのように捉え始めた時期の周辺に集まる傾向がありました(Rathboneら、2008)。

自分の役割や考え方が変わった頃の経験が、後に自分の人生を語る手がかりになる、という説明に合う結果です。ただし、それだけで若い頃の記憶の山がすべて生まれると確認されたわけではありません。

人生の「節目」として思い出すことも関わる

卒業、就職、引っ越し、結婚などは、社会の中で人生の節目として語られやすい出来事です。人が「人生の重要な出来事を思い出してください」と求められたとき、こうした節目が思い出す手がかりになる可能性があります。

ムナワルら(2018)の総説では、自分の人生をどう捉えているかという説明と、社会で共有されている人生の節目のイメージに注目する説明の両方に、研究からの支持が見られました。ただし、どちらか一つでこの現象を十分に説明できるとは結論づけていません(Munawarら、2018)。

誰もが同じ節目を同じ年齢で経験するわけではありません。どんな出来事を重要と思うかも人によって違うため、特定の思い出が浮かばないことを不自然と考える必要はありません。

身近な場面で考える

たとえば、65歳の人が家族から「人生で大きな出来事を五つ挙げて」と頼まれたとします。その人は、18歳で親元を離れたこと、22歳で初めて働いた日のこと、20代で親友と出会ったことなどを思い出すかもしれません。一方で、「先週は何をした?」と聞かれれば、最近の出来事を次々に話すかもしれません。

これは研究で報告された実話ではなく、思い出すための質問によって、浮かぶ記憶が変わり得ることを示した仮の例です。

レミニセンス・バンプは、どの時期の思い出が浮かびやすいかという、記憶の偏りを示す現象です。昔の出来事が多く思い出される理由を考えるときには、その出来事の重要さだけでなく、何を手がかりに思い出しているのかにも目を向けると理解しやすくなります。

参考文献・出典