ラバーハンド錯覚とは?作り物の手を自分の手のように感じる現象

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

自分の手は隠れているのに、目の前の作り物の手がなでられる様子を見ていると、その作り物が自分の手であるかのように感じることがあります。これが「ラバーハンド錯覚」です。見えている手が触れられるタイミングと、実際に自分の手が触れられるタイミングが合うと、この錯覚が起こりやすくなります。

ラバーハンド錯覚とは?

ラバーハンド錯覚は、ゴムなどで作られた手を、自分の体の一部のように感じる現象です。作り物だと頭では分かっていても、「この手が自分の手のようだ」という感覚が生まれる場合があります。

典型的な実験では、参加者の片手を仕切りで隠し、その近くに本物の手に似た作り物を置きます。実験者は二本の筆を使い、隠れた本物の手と、目に見える作り物の手の対応する場所を同じタイミングでなでます。参加者に見えるのは作り物の手がなでられる様子ですが、皮膚に触れられる感覚が生じるのは、自分の手の方です。

このとき、作り物の手が触られている場所で、自分が触れられているように感じたり、作り物の手そのものを自分の手のように感じたりする人がいます。触られた場所の感じ方と、「自分の手だ」という感じ方の両方が、この錯覚の特徴です(Botvinick & Cohen, 1998)。

なぜ作り物の手を自分の手のように感じるのか

私たちは、自分の手がどこにあるかを、目に見える姿だけで判断しているわけではありません。皮膚がどこで触れられたか、目を閉じても腕や指がどの位置にあると分かるか、といった情報も使っています。

ラバーハンド錯覚の実験では、目には「作り物の指がなでられる様子」が入り、皮膚からは「自分の指がなでられる感覚」が伝わります。触れる場所とタイミングが対応していると、二つの情報を同じ出来事として受け取りやすくなり、見えている手が自分の体の一部であるような感覚につながると考えられています。

ただし、タイミングが合うことだけで結果が決まるわけではありません。目に見えるものが手らしい形をしているか、作り物の手が自分の腕と自然につながる位置や向きに見えるかも関係します(Tsakiris & Haggard, 2005)。

研究で確かめられたこと

1998年にBotvinickとCohenは、この錯覚を報告しました。本物の手と作り物の手を同時になでる条件では、なでるタイミングをずらす条件より、作り物の手を自分の手のように感じたという回答が得られました。また、自分の見えない指の位置を答えてもらうと、その位置を作り物の手に近い方へ見積もることもありました(Botvinick & Cohen, 1998、Rohdeほか, 2011)。

2005年の研究では、本物の手と向きが合う作り物の手、向きの異なる作り物の手、木の棒などを比べました。作り物の手の向きや、見えている物が手として捉えられるかどうかによって、触れ方をそろえたときの手の位置の感じ方が変わりました。同じタイミングでなでれば、どんな物でも同じ結果になるわけではないことを示す研究です(Tsakiris & Haggard, 2005)。

さらに2011年の研究は、「自分の手だと感じること」と「自分の手がどこにあると思うか」は区別が必要だと示しました。実験では、手の位置を何度も答えてもらう条件で、なでるタイミングが合わないときにも位置の見積もりが作り物の手の方へずれる場合がありました。しかし、作り物の手を自分のものと感じたかを尋ねる質問では、同じタイミングでなでられた条件の方が錯覚が明確でした。位置のずれだけを見て、作り物の手を自分のものと感じていたと判断することはできません(Rohdeほか, 2011)。

作り物の手の向きが違っても起こるのか

手の向きが自然にそろっていることは、錯覚の起こりやすさに関わる手がかりの一つです。ただし、向きが一致しなければ絶対に起こらないわけではありません。

2025年の小規模な研究では、参加者の隠れた右手の甲と、見えている作り物の左手の手のひらを同じタイミングでなでました。この条件で10人中9人が、作り物の手を自分のもののように感じたり、作り物の手で触れられたように感じたりしたと報告しました。なでる指の対応は保たれていました。少人数による特定の配置での結果なので、手の向きが異なっていても必ず錯覚が起こるという意味ではありません(Christosほか, 2025)。

身近な場面から考える

たとえば、机の下に片手を置き、目を閉じたまま指先がどこにあるか考えてみるとします。手は見えなくても、腕や指からの感覚を手がかりに、おおよその位置をつかむことができます。

ラバーハンド錯覚の実験では、その見えない手の位置の感覚と、目に見える作り物の手の場所が食い違っています。それでも、見える触れ方と実際の触れられ方が合うと、作り物の手を自分の手のように感じる場合があります。この錯覚から、自分の体の感じ方も、目や皮膚などから得た情報を組み合わせて成り立っていることが分かります。

参考文献・出典