計画的行動理論とは?態度・周囲の期待・実行できる感覚から行動を考える
散歩を始めたいと思っているのに、なかなか出かけられないことがあります。なぜ「やろうと思うこと」と「実際にすること」の間に差が生まれるのでしょうか。
計画的行動理論は、その行動をどう評価しているか、身近な人の期待をどう受け止めているか、自分に実行できそうだと感じるかが、行動する意図に関わると考える心理学の理論です。さらに、その意図が実際の行動につながるには、時間や機会などの条件も重要だと捉えます。
計画的行動理論とは?意図と実際の行動をつなげて考える
計画的行動理論は、心理学者のアイゼンが提唱し、1991年の論文で整理した考え方です。何かを実行するかどうかを、その人の「やろう」という意図と、実行を可能にする条件の両方から説明しようとします(Ajzen, 1991)。
ここでいう「意図」とは、ある行動を実際にしようとする気持ちや意思のことです。意図が強いほど行動につながりやすいと考えますが、行動には時間、お金、必要な技術、ほかの人の協力などが必要な場合もあります。本人が強く望んでいても、それらが足りなければ実行できないことがあります。
また、この理論は「運動は大切だ」といった一般的な考えよりも、「来週、夕食後に20分歩く」など、具体的な行動についてどう思っているかを重視します。調べたい行動と、それに対する評価や意図の対象をそろえる必要があるためです。「計画的」という名前も、細かな予定表を作れば行動できるという意味ではありません(Ajzen, 2020)。
「やろう」という意図に関わる三つの要素
態度:その行動を自分はどう評価するか
一つ目は、行動することを自分にとって望ましいと思うかどうかです。たとえば、夕食後に歩くと気分転換になると考える人もいれば、疲れているので負担が大きいと考える人もいるでしょう。同じ散歩でも、予想する良い点や負担によって評価は変わります。
周囲の期待:大切な人はどう考えていると思うか
二つ目は、家族や友人など、自分にとって大切な人がその行動をどう受け止めると思うかです。「家族が散歩を応援してくれそうだ」「友人も定期的に歩いている」といった受け止め方が関わります。この理論で扱うのは、本人が周囲の考えや行動をどう認識しているかです。周囲の人の実際の意見と一致するとは限りません。
実行できる感覚:自分にもできそうだと思うか
三つ目は、実行するのが簡単か難しいか、必要な条件を自分で整えられそうかという感覚です。「近くに歩ける道がある」「仕事の後にも時間を取れそうだ」と思えば、実行できる見込みを強く感じるかもしれません。反対に、忙しくて時間が取れないと思えば、その見込みは弱まります。
ただし、「できそうだと感じること」と「実際にできる条件があること」は別です。本人の見込みが現実に近いときは行動を予測する助けになりますが、時間や環境を見誤っている場合もあります。この区別は、提唱者による説明でも重視されています(Ajzen, 2020)。
研究ではどこまで行動を説明できたのか
ArmitageとConner(2001)は、1997年までに発表された独立した185件の研究をまとめ、これらの考え方と意図や行動との関係を調べました。その結果、計画的行動理論によって統計的に説明できたのは、人による行動する意図の違いの約39%、実際の行動の違いの約27%でした。これは、39%の人が実行を決めた、あるいは27%の人が成功した、という意味ではありません。また、行動を本人に申告してもらう研究では、行動を観察・測定する研究よりも説明できる割合が高い傾向がありました(Armitage & Conner, 2001)。
その後、HaggerとHamilton(2024)は、運動・食生活・飲酒など健康に関わる行動について、同じ人を時間を空けて調べた87件の研究をまとめました。意図がその後の行動と関係するなど、理論に沿う結果が見られた一方、時間をまたいだ関係は小さく、想定どおりの関係が見られない部分もありました(Hagger & Hamilton, 2024)。
また、WebbとSheeran(2006)は、行動する意図を強める働きかけを行った47件の実験結果をまとめました。意図には比較的大きな変化が見られましたが、実際の行動の変化はそれより小さいものでした。つまり、「やろう」という気持ちが強まることと、行動が変わることは同じではありません(Webb & Sheeran, 2006)。
こうした研究は、三つの要素と意図が行動を理解する手がかりになることを示しています。ただし、多くの研究は要素同士の関係を調べたものであり、特定の人の行動を一つの要素だけで説明したり、必ず実行するかを言い当てたりするものではありません。
身近な場面で考える:散歩を始めたいとき
たとえば、ある人が「来月から週に2回、夕食後に20分歩きたい」と考えているとします。その人は散歩を気分転換になる良い行動だと思い、家族も応援してくれそうだと感じています。一方、夕食後は家事で忙しく、歩く時間を確保できないとも思っています。
この場合、散歩への評価と周囲の期待の受け止め方は前向きでも、「自分には実行できそうだ」という感覚が弱いため、実際に始める意図が固まりにくい可能性があります。休みの日の昼なら時間を取れるか確かめることは、行動の条件を考え直す一つの方法です。ただし、予定を変更すれば必ず習慣になるということではありません。
また、十分な時間があると思って散歩するつもりになっていても、急な用事で時間がなくなれば出かけられないでしょう。計画的行動理論を知ると、行動への評価や周囲の期待の受け止め方に加えて、本人が実行できると感じているか、実際に実行できる条件があるかを分けて考えられます。
参考文献・出典
- Ajzen, I. (1991). The theory of planned behavior. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 50(2), 179–211. — 理論の基本構造、意図と実際の行動に関わる条件。
- Ajzen, I. (2020). The theory of planned behavior: Frequently asked questions. Human Behavior and Emerging Technologies, 2(4), 314–324. — 三つの要素の定義、具体的な行動の捉え方、実行できる感覚と実際の条件の違い。
- Armitage, C. J., & Conner, M. (2001). Efficacy of the theory of planned behaviour: A meta-analytic review. British Journal of Social Psychology, 40(4), 471–499. — 185件の研究をまとめた意図・行動の説明割合。
- Hagger, M. S., & Hamilton, K. (2024). Longitudinal tests of the theory of planned behaviour: A meta-analysis. European Review of Social Psychology, 35(1), 198–254. — 健康に関わる行動について、時間を空けて調べた87件の研究のまとめ。
- Webb, T. L., & Sheeran, P. (2006). Does changing behavioral intentions engender behavior change? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin, 132(2), 249–268. — 意図を強める働きかけと、実際の行動の変化を比較した47件の実験。