スリーパー効果とは?説得の影響が時間を置いて強まることはあるのか

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

商品についての説明を聞き、内容には納得しかけても、「これは販売元の宣伝だ」と知ると慎重になることがあります。それなのに時間がたってから、宣伝への警戒よりも商品の良い点が気になってくることはあるのでしょうか。

スリーパー効果とは、説得する内容の影響が、聞いた直後よりも時間を置いた後に強まることがあるという心理現象です。ただし、どんな主張でも後から信じやすくなるわけではありません。説得力のある説明と、その説明を疑う理由が一緒に示された場合など、限られた条件で研究されています。

スリーパー効果とは?後から説得の影響が現れる仕組み

たとえば、ある提案について納得できそうな理由を聞いた直後に、「この説明をした人は、提案が採用されると利益を得る立場にある」と知らされたとします。説明の内容はもっともらしくても、発信者を信用しにくくなるため、その場では賛成を控えるかもしれません。

ここでは、主張を受け入れる方向に働く説明と、その説明を疑わせる情報が、反対の方向から判断に影響しています。後者には、信用しにくい発信元であることや、内容の信頼性への注意書きなどが含まれます。

スリーパー効果を説明する考え方の一つは、時間がたつと、説明の内容と「信用しにくい」という情報との結び付きが弱まるというものです。また、説明の影響よりも、信用を下げる情報の影響が早く弱まる可能性も考えられています(Pratkanisら, 1988)。

これは、発信者が誰だったかを必ず忘れるという意味ではありません。発信者を覚えていても、説明を思い返すときに、その信頼性を以前ほど判断に結び付けなくなる場合があります。

「影響が強まる」と「情報源による差が縮まる」の違い

研究では、時間による変化を二つに分けて考えることが重要です。

  • 主張への賛成が実際に増える場合:信用を下げる情報が添えられた主張について、直後より後日のほうが賛成する度合いが高くなります。
  • 二つの情報源の差が縮まる場合:信頼できる発信者の主張への賛成が時間とともに弱まり、信頼しにくい発信者の主張への賛成はあまり変わらなかった結果、両者の差が小さくなります。

後者では、信頼しにくい情報源の説得力が後から強まったとは限りません。また、最初に主張へ反発していた人が元の意見に戻るだけの場合もあります。説得の影響そのものが後から強まったかを判断するには、主張を読んでいない人の意見の変化も比べる必要があります(Kumkale & Albarracín, 2004)。

研究で分かっていること

情報源への信頼が、直後と後日の受け止め方を変えた

HovlandとWeiss(1951)は、情報源への信頼が、説得的な文章の受け止め方にどう関わるかを調べました。発信元を信頼しにくい場合、文章に触れた直後には内容が受け入れられにくい一方、時間がたつと文章と発信元を切り離して受け止める傾向が報告されました(Hovland & Weiss, 1951)。情報源への不信が、後からも同じ強さで働くとは限らないことを示した初期の研究です。

後から影響が強まるには、情報の示し方が重要だった

Pratkanisら(1988)は、コンピューター画面に示した文章や架空の商品説明などを使った16件の実験と、過去の研究を再び試す実験を行いました。初期の試みでは、後から説得力が強まる結果が安定して得られたわけではありませんでした。

その後、参加者が主張の理由に注意を向けるようにし、説明を読んだ後に発信元への信頼を下げる情報を示し、その発信元の信頼性を評価してもらうなどの条件で、後の測定時に主張の影響が強まることを確認しました(Pratkanisら, 1988)。

つまり、単に信用できない人が話せば起こる現象ではなく、主張の内容に注意が向いていることや、疑う理由を示す順序も関わると考えられます。

過去の研究をまとめると、効果は条件によって違った

KumkaleとAlbarracín(2004)は、24件の研究報告に含まれる72組のデータをまとめて分析しました。その結果、研究全体の平均では、情報源による説得効果の差が時間とともに縮まる変化は見られたものの、説得の影響そのものが後から強まる現象は、全体に共通する結果ではありませんでした。

一方、主張にもそれを疑う情報にも当初は強い影響があり、受け手が内容を十分に考えられ、考えようとする気持ちもある場合には、主張の理由を聞いた後に信用を下げる情報を示す条件で、後から賛成が増える結果が見られました(Kumkale & Albarracín, 2004)。

この分析に含まれる研究の多くは学生を対象に行われています。日常の広告や口コミすべてに、同じ変化が生じるとまでは言えません。

何に注意を向けたかでも変わる

Albarracínら(2017)は3つの実験で、主張の理由に注意を向ける場合と、話し手に注意を向ける場合を調べました。前者では、説得力の強い説明を信頼しにくい発信者が伝えたとき、後から説得の影響が強まるという従来型の結果が見られました。

一方、話し手に注意を向けた場合には、説得力の弱い説明であっても、それを信頼できる発信者が伝えたときに、後から賛成が増える場合がありました(Albarracínら, 2017)。後から判断に強く影響するのが説明の中身なのか、発信者への印象なのかによっても結果は変わるのです。

身近な場面で考える

たとえば、家電を探している人が、ある製品の使いやすさを詳しく紹介した記事を読んだとします。説明は納得できそうですが、最後に「この記事は販売元が提供した広告です」と書いてあり、購入は見送ります。

数日後に製品を思い出すとき、使いやすそうだという説明は浮かぶのに、広告だと分かったときの警戒は判断にあまり影響しないかもしれません。これは、スリーパー効果がどう起こり得るかを考えるための仮の例です。実際にこの人の評価が変わるかどうかは分かりません。

後になって「やはり良い製品かも」と感じたときは、思い出した特徴の根拠と、その情報が誰から伝えられたものかを合わせて確認すると、判断材料を整理しやすくなります。これは研究結果を踏まえた日常への提案であり、効果を完全に防げると確かめられた方法ではありません。

参考文献・出典