プラットフォール効果とは?小さな失敗が人の印象に与える影響
何でもそつなくこなす人が、ふとした場面で飲み物をこぼしたとします。その姿を見て「意外と親しみやすい人かもしれない」と感じることはあるでしょうか。
プラットフォール効果とは、能力が高いと見られている人が小さな失敗をすると、失敗しなかった場合より好意的に評価されることがあるという心理現象です。ただし、失敗すれば誰でも好かれるわけではなく、相手がそれまでどう評価されていたかによって反応が変わります。
プラットフォール効果とは?失敗と好感の関係
「プラットフォール」は、英語で転倒や不器用な失態を意味する言葉です。心理学では、アロンソンらが1966年に行った、能力の高い人と平均的な人の失敗を比較する研究に由来します(Aronsonら, 1966)。
研究者たちは、非常に優秀な人は「完璧すぎて近寄りにくい」と感じられることがあり、そこに不器用な一面が見えると親しみが増すのではないかと考えました。反対に、平均的な能力だと見られている人が同じ失敗をしても、好意が増すとは限らないと予想しました。
大切なのは、失敗だけで印象が決まるのではなく、それまでに相手のどのような能力が伝わっていたかも関係することです。失敗が人間味や親しみを感じさせるという説明は研究者の考えであり、その仕組みがすべての場面で確かめられたわけではありません。
1966年の研究ではどのような違いが見られたのか
アロンソン、ウィラーマン、フロイド(1966)は、米国のミネソタ大学で心理学の授業を受けていた男子学生48人に、大学のクイズ大会への出場を目指す学生の録音を聞いてもらいました。録音は研究用に作られたもので、登場人物の能力と失敗の有無を変えています。
- 能力が高い人物:難しいクイズ50問の正答率が92%で、高校時代も優秀だったという紹介。
- 平均的な能力の人物:正答率は30%で、高校時代の成績なども平均的だったという紹介。
- 失敗の有無:話の終わりに自分の服にコーヒーをこぼす場合と、こぼさない場合。
参加者は、この二つの能力と失敗の有無を組み合わせた4種類の録音のうち一つを聞き、登場人物への好意を8項目で評価しました。評価を合計した点数は高いほど好意的で、各条件の平均は次のとおりです。
- 能力が高い人物:失敗なし20.8点、失敗あり30.2点。
- 平均的な能力の人物:失敗なし17.8点、失敗あり−2.5点。
能力が高い人物は失敗したほうが点数が高く、平均的な人物では失敗したほうが低くなりました。ただし、能力が高い人物の点数が上がった差だけを見ると、偶然によるばらつきと区別できるほど明確ではありませんでした。一方、平均的な人物の失敗による評価の低下は明確でした。失敗の受け止められ方が、事前に示された能力によって異なることは、研究全体の比較で確認されています(Aronsonら, 1966)。
この実験は、録音を聞いた少人数の男子大学生による評価です。優秀な人が失敗すれば必ず好かれるという結論や、実際に一緒に過ごしたときの印象まで示した結果ではありません。
後の研究で分かったこと:見る側の特徴も関わる
ヘルムライヒら(1970)は、男子大学生120人を対象に、評価する側の人が自分自身をどの程度肯定的に捉えているかも調べました。優秀な人物が失敗すると好意が増したのは、自分への評価が中程度の参加者たちでした。自分への評価が高い人や低い人では、失敗しなかった優秀な人物のほうが好まれました。また、能力が低い人物に対しては、失敗の有無による明確な好意の差は見られませんでした(Helmreichら, 1970)。
メッティーとウィルキンス(1972)は、150人の大学生を対象とした実験で、評価する側の知的能力と、相手の能力や失敗との関係を調べました。知的能力が高いとされた参加者では、同じように優秀な人物が失敗すると、むしろその人物への好意が下がる結果が見られました(Mettee & Wilkins, 1972)。
後続研究は、失敗する人の能力だけでなく、見る側の人が自分や相手をどう見ているかによっても結果が変わることを示しています。
身近な場面で考える
たとえば、説明が分かりやすく、普段から周囲に頼りにされている先輩が、勉強会で資料を一枚落としたとします。先輩の能力を認めていた人の中には、「こんな失敗もするんだ」と感じて、少し親近感を持つ人がいるかもしれません。
これは研究で確かめられた出来事ではなく、仕組みを理解するための仮の例です。実際には、その先輩をどう見ていたか、失敗をどう受け取ったかによって印象は異なります。プラットフォール効果は、失敗が必ず好感につながるのではなく、もともとの印象によって受け止められ方が変わると考える手がかりです。好かれるためにわざと失敗することを勧める理論ではありません。
参考文献・出典
- Aronson, E., Willerman, B., & Floyd, J. (1966). The effect of a pratfall on increasing interpersonal attractiveness. Psychonomic Science, 4(6), 227–228. 能力と失敗の有無を組み合わせた実験。
- Helmreich, R., Aronson, E., & LeFan, J. (1970). To err is humanizing—sometimes: Effects of self-esteem, competence, and a pratfall on interpersonal attraction. Journal of Personality and Social Psychology, 16(2), 259–264. 評価する人の自己評価による違いを調べた研究。
- Mettee, D. R., & Wilkins, P. C. (1972). When similarity “hurts”: Effects of perceived ability and a humorous blunder on interpersonal attractiveness. Journal of Personality and Social Psychology, 22(2), 246–258. 観察者自身の能力と相手の能力による違いを調べた研究。