限定合理性とは?時間と情報に限りがある中で選ぶという考え方

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

炊飯器を買い替えるとき、すべての機種の値段、機能、使いやすさを調べて、一番よいものを選ぶのは大変です。限られた予算と時間の中で、必要な条件を満たす機種を見つけて購入する人もいるでしょう。

限定合理性とは、人が手に入れられる情報や考える時間、比較する力に限りがあることを前提に、どのように選択するかを考える枠組みです。人がいつも最善の答えを計算できるわけではないという現実に目を向け、限られた条件に合った判断の仕方を説明します。

限定合理性とは?意味と仕組み

限定合理性は、経済学者で心理学者でもあったハーバート・サイモンが発展させた考え方です。すべての選択肢と、それを選んだ後の結果が分かり、どれが最もよいか正確に計算できる人を想定するのではなく、実際に人が得られる情報や判断する力を考慮します。候補を探して比較することにも時間がかかるため、どこまで探すかも判断の一部になります(Simon, 1955)。

「一番よいものを探す」と「条件を満たしたものを選ぶ」の違い

サイモンは、候補を探しながら、受け入れられる水準に達したものを選ぶ方法を満足化と呼びました。これは、候補をすべて比べて最高のものを決める代わりに、必要な条件を満たす候補が見つかったところで探すのを終える、という考え方です。満足化は、限定合理性を説明する選び方の一つです(Simon, 1978)。

満足化では、何を満たせば「十分」とするのかという基準が重要です。この基準は固定されたものとは限らず、サイモンは、経験や周囲の状況によって変わり得ると説明しています(Simon, 1978)。

研究で分かっていること

サイモンの研究:判断する人だけでなく、環境も重要になる

Simon(1955)は、従来の合理的な選択の考え方が、幅広い知識と高い計算能力を必要とすることを指摘し、そうした能力に限界がある人でも扱える選択の仕組みを理論的に検討しました。

続くSimon(1956)は、食べ物を探す生き物を想定したモデルなどを使い、周囲の環境に合った比較的単純な行動でも、必要な目的を達成できる場合があると論じました。食べ物がどこにあるか、どのくらい先まで見通せるかといった環境の条件が、適切な探し方に関わります。

これらは限定合理性の土台となる理論やモデルであり、人を集めて「買い物では必ず満足化を使う」と実証した実験ではありません。人の能力だけでなく、選択する場面の条件にも目を向ける必要がある、という考え方を示したものです。

1988年の研究:時間がないと、情報の調べ方も変わる

Payne・Bettman・Johnson(1988)は、複数の選択肢から選ぶ際に、判断の正確さと、情報を調べる手間がどう関わるかを研究しました。

まず、いくつかの判断方法をコンピューター上で比べたところ、少ない手間で比較的正確な判断ができる方法もありました。時間が限られた条件では、単純な方法の方が、複雑な方法を途中で打ち切った場合より正確になることもありました。これは計算上の比較から得られた結果です。

さらに、人を対象とした二つの実験では、参加者がくじを選ぶ際にどの情報を調べたかを記録しました。四つのくじから一つを選ぶ課題では、それぞれの金額と結果が出る確率を画面で確認できました。時間制限がない場合と15秒の制限がある場合を比べると、15秒の条件では調べた情報の数が減り、一つの情報を確認する時間も短くなりました。選択肢の特徴によっても、情報の調べ方に違いが見られました。Payneら(1988)

この研究が示しているのは、同じ方法で何でも選ぶのではなく、使える時間や選択肢の特徴に合わせて考え方を変えることがあるという点です。簡単な方法が常に最も正確という意味でも、サイモンの満足化だけを直接検証した結果でもありません。

身近な場面で考える

たとえば、家族が使う炊飯器が壊れ、新しい機種を週末までに買う必要があるとします。購入する人は、予算を2万円以内に決め、家族に必要な量を炊けることと、手入れがしやすいことを重視します。

お店や通販で候補を調べると、機能の多い高額な機種も、値段は安いが手入れに手間がかかる機種も見つかりました。その中で、予算と必要な条件を満たす機種が見つかったため、ほかのすべての機種を調べ切る前に購入を決めたとします。

これは研究で使われた事例ではなく、限定合理性を説明するための仮の例です。この人は「世界で一番よい炊飯器」を特定したわけではありません。それでも、使える時間の中で必要な条件に照らして選んでいます。探し続ける時間も含めて判断しているところに、限定合理性の考え方が表れています。

限られた条件で判断するときの考え方

限られた時間で選ぶ必要があるときは、まず「外せない条件は何か」を確かめると、候補を比べやすくなります。予算や必要な機能を明確にし、それらを満たす候補が見つかったら、さらに探す時間を使うかどうかを考えます。

一方、住宅の購入や健康・安全に関わる選択など、間違えたときの影響が大きく、やり直しが難しい場合には、条件を慎重に設定し、必要な確認に時間をかけることも重要です。何を調べれば十分かは、選択の重要さや、あとから変更できるかによって異なります。

これらは限定合理性の考え方を日常に当てはめた提案であり、どんな選択でも満足化を使えばよい結果になると実証されたわけではありません。限定合理性は、限られた情報や時間の中でも、状況に合った判断の仕方を考えられることを教えてくれます。

参考文献・出典

  • Simon, H. A. (1955). A Behavioral Model of Rational Choice. The Quarterly Journal of Economics, 69(1), 99–118. 情報と計算能力の限界を考慮した、人の選択の理論的なモデルを検討した論文。
  • Simon, H. A. (1956). Rational Choice and the Structure of the Environment. Psychological Review, 63(2), 129–138. 判断する人の能力と環境の特徴を合わせて捉える考え方の根拠。
  • Simon, H. A. (1978). Rational Decision-Making in Business Organizations. Nobel Memorial Lecture. 候補を探すこと、受け入れられる水準、満足化によって探索を終える考え方の根拠。
  • Payne, J. W., Bettman, J. R., & Johnson, E. J. (1988). Adaptive Strategy Selection in Decision Making. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 14(3), 534–552. 判断方法を比較した計算上の分析と、時間や選択肢の特徴による情報収集の変化を調べた二つの実験の根拠。