一貫性の原理とは?過去の発言や選択が次の行動に与える影響

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

たとえば、週末に部屋を片づけると自分で決め、家族にもそう伝えたとします。土曜日になって別のことをしたくなっても、「片づけると言ったから」と予定どおり始めるかもしれません。

一貫性の原理とは、以前に自分で選んだことや、引き受けたこと、口にした考えに沿うように、その後の判断や行動を取りやすくなるという考え方です。約束を守る助けになることもあれば、事情が変わったのに前の決定にこだわることもあります。

一貫性の原理とは?意味と仕組み

人は一度「これをする」と決めると、次に何をするか考えるとき、前に決めた内容を手がかりにすることがあります。自分の言動を一致させたい気持ちや、約束への責任感、相手の期待などが関わると考えられます。

ここでいう約束や決定は、契約のような正式なものとは限りません。たとえば、友人に「次の集まりでは準備を手伝うね」と自分から伝えることも、後の行動に関わる可能性があります。ただし、実際に行動するかどうかは、予定や負担、その約束をどう受け止めているかにも左右されます。

また、自分で選んだ約束と、断れない雰囲気で引き受けさせられた約束は、同じ条件ではありません。一貫性の原理を考えるときには、何を約束したかだけでなく、本人がどのように決めたかも大切です。

研究で分かっていること

「荷物を見ていて」と頼まれた後の行動

モリアーティは1975年、海岸と食堂で盗難を装った二つの実験を報告しました。調査対象は合わせて72人です。海岸ではラジオ、食堂ではスーツケースを置いた人が席を離れ、その間に別の人物が持ち去ろうとする場面を作りました。

事前に持ち主から「荷物を見ていてほしい」と頼まれ、それを引き受けた人は、そうした約束をしていない人より、持ち去りを止めようとする行動が多く見られました。引き受けたことが、その後の行動を選ぶ際に関わったと考えられます。Moriarty(1975)

ただし、この結果から「過去の発言と一致させたい気持ち」だけが原因だとは言えません。荷物を見る役割を引き受けたことで、持ち物に注意を向けやすくなった可能性もあります。また、盗難への介入という特殊な場面を扱った実験です。

宿泊客が決めたことと、タオルの再利用

Baca-Motesらは2013年、米国のホテルで宿泊客2,416組(同じ部屋に泊まる人たちを1組として数える)のデータを分析しました。研究では複数の条件を設け、そのうちチェックイン時に「滞在中はタオルを再利用して水やエネルギーを節約するよう努める」という具体的な約束をする機会を示し、承諾した宿泊客にはピンを渡す条件と、通常のチェックイン条件を比べました。どちらの条件の客室にも、タオル再利用を促す通常の案内はありました。

少なくとも1枚のタオルを再利用のために掛けていた部屋の割合は、約束の機会とピンを設けた条件で73%、通常のチェックイン条件で57%でした。再利用のために掛けられたタオルの1室当たりの平均枚数も、それぞれ1.87枚と1.33枚でした。約束の機会とピンを設けた条件では、タオルを掛ける行動がより多く見られました。Baca-Motesら(2013)

この比較は、約束する機会を示された宿泊客のうち、承諾しなかった人も含めた結果です。また、具体的な約束とピンなどの働きかけを組み合わせていたため、約束するだけで同じ結果になるとは判断できません。

誰にも知られなくても、約束を守る人がいた

Kanngiesserらは2023年、ドイツの大学生を対象に、大学の食堂付近で二つの実験を行いました。最初の実験には204人が参加しました。一方の条件では「1ユーロを受け取る」か、「4ユーロを受け取り、うち2ユーロを後で返すと約束する」かを選びました。もう一方の条件では、4ユーロを受け取っても返す約束はせず、後から返す金額を自由に決められました。

4ユーロを選んだ人に限って比べると、2ユーロ以上返した人の割合は、約束をする条件で63%、約束をしない条件で22%でした。返金は本人と結び付けられない方法で行われました。Kanngiesserら(2023)

同じ論文の別の実験では、後で葉書を投函することについて、「約束する」と表現した条件と、投函することに同意した条件を比較しました。期限内に葉書を返した割合はそれぞれ54%と52%で、明確な差は見られませんでした。「約束」という言葉そのものが、いつでも行動を強めるわけではないことを考える材料になります。Kanngiesserら(2023)

この研究は、約束を守った人の心の中を直接測ったものではありません。自分の決定に沿って行動したかったのか、研究者の期待に応えようとしたのかなど、理由を一つに特定することはできません。

どの場面でも同じ効果が出るわけではない

Lokhorstらは2013年、環境に配慮した行動について、事前の約束を使った複数の研究結果をまとめました。全体として、約束を促す働きかけは、何もしない場合などと比べて、短期・長期の行動変化につながる傾向がありました。一方、研究ごとの結果には違いがあり、何が効果を生み出しているかは十分に解明されていないと述べています。Lokhorstら(2013)

身近な場面で考える

たとえば、友人と地域の清掃活動に参加すると自分で決めたとします。当日、少し面倒に感じても、引き受けたことを思い出して出かけるかもしれません。このように、過去の決定が行動を後押しすることがあります。

一方、当日になって体調を崩したときまで、無理に参加しなければならないわけではありません。以前の約束を大切にすることと、今の状況に合わせて連絡し、予定を変更することは両立します。

また、相手が以前「参加してみたい」と話したとしても、その言葉だけで今回の参加に同意したとは限りません。過去の発言を持ち出して承諾を迫るより、今も同じ気持ちか確かめるほうが、相手の判断を尊重できます。

一貫性の原理を知ると、前に自分で決めたことが、今の選択に影響していないかを考えやすくなります。続ける理由が今もあるなら役立つ力になりますし、条件が変わったなら考え直すこともできます。

参考文献・出典