バイスタンダー効果(傍観者効果)とは?周りの人の存在が援助行動に与える影響
駅や街中で困っていそうな人を見かけても、周囲に人が大勢いると「誰かが声をかけるだろう」と思ってしまうことがあります。人が多いことは、助けようとする気持ちや行動にどう関わるのでしょうか。
バイスタンダー効果(傍観者効果)とは、助けが必要な場面で、周囲にほかの人がいると、一人ひとりが援助に動きにくくなったり、行動が遅れたりすることがある現象です。ただし、人数が多いほど必ず誰も助けなくなるという意味ではありません。状況によって影響は変わります。
バイスタンダー効果とは?意味と仕組み
「バイスタンダー」は、その場に居合わせた人という意味です。ここでいう援助には、困っている人に声をかけることだけでなく、異常に気づいて担当者へ知らせることも含まれます。バイスタンダー効果は、ほかの人がいることで、そうした行動を一人の人が起こす可能性や速さがどう変わるかを扱います。
この現象を説明する考え方の一つに「責任の分散」があります。自分しか状況を知らないと思うと「自分が知らせなければ」と感じやすい一方、ほかにも知っている人がいると「誰かが対応するはずだ」と考え、自分が動く必要を小さく感じる場合があります。
別の理由として、周囲の反応を見て、何が起きているかを判断することがあります。たとえば、異常らしい出来事を見ても周りの人が平然としていると、「危険ではないのかもしれない」と思い直す可能性があります。助けない理由がいつも無関心だからとは限らず、誰が動くべきか、そもそも対応が必要かを判断しにくいことも関わります。
研究で分かっていること
ほかにも聞いている人がいると思うと、通報が遅れた
DarleyとLatané(1968)は、大学生が別々の部屋から音声で話す実験を行いました。話し合いの途中、別の参加者が発作を起こして助けを求める声が聞こえます。実際には、その声は録音によるものでした。
研究者は、声を聞いた参加者に「自分だけが聞いている」「ほかにも1人が聞いている」「ほかにも4人が聞いている」と、それぞれ異なる状況を信じさせました。発作を起こした人の声が途切れるまでに、実験担当者へ知らせに行った割合は、自分だけが聞いている条件で85%、ほかに1人いる条件で62%、ほかに4人いる条件で31%でした。ほかにも聞いている人がいると思うほど、知らせに行くのも遅くなりました。DarleyとLatané(1968)
参加者はほかの人の様子を見ることができませんでした。それでも「ほかにも助けを求める声を聞いている人がいる」と信じるだけで、知らせに行く割合や速さが変わりました。実際に周囲で人が動く様子を見なくても、ほかの人の存在をどう認識するかが援助行動に影響し得ることを示しています。
周りの人が平然としていると、煙を知らせにくくなった
LatanéとDarley(1968)は、男子大学生が部屋で質問票に答えている間に、煙が入ってくる状況を作りました。一人でいた参加者では75%が煙を報告しました。一方、煙に反応しないよう指示された2人の実験協力者と一緒にいた参加者では、報告したのは10%でした。LatanéとDarley(1968)
この実験で参加者は、周囲の人が落ち着いている様子を見て、煙を深刻な異常と考えにくくなったと解釈されています。発作の実験で扱った「ほかの誰かが助けるはず」という考えだけでなく、周囲の無反応から「助けや報告は必要ない」と判断することも、行動しにくくなる理由になり得ます。
危険な場面では、影響が弱くなることもある
Fischerら(2011)は、7,700人を超える参加者を含む研究から、105の独立した結果をまとめました。全体では、ほかの人がいると一人ひとりの援助が抑えられる傾向が確認されました。一方、危険性が高いと感じられる状況や、加害者がいる状況などでは、その傾向が弱くなりました。Fischerら(2011)
危険が明らかであれば、助けや対応が必要だと気づきやすくなることが、理由の一つとして考えられています。また、周りの人が身体的な支えになり得る場面では、ほかの人の存在が援助を妨げない場合も報告されました。バイスタンダー効果の強さは、何が起きているか、周囲の人がどのような存在かによって変わります。
実際の公共空間では、多くの場面で誰かが助けていた
Philpotら(2020)は、イギリス、オランダ、南アフリカの公共空間で監視カメラに記録された219件の対人衝突を調べました。その結果、およそ10件中9件で、少なくとも1人の居合わせた人が何らかの援助行動を取っており、多くの場合は複数の人が関わっていました。また、現場にいる人が多いほど、少なくとも誰かが介入する可能性が高いという関連がありました。Philpotら(2020)
ここで比べているのは、一人ひとりが助ける可能性ではなく、その場にいる人のうち誰かが助ける可能性です。古典的な実験とは調べた対象が異なります。また、実際に起きた対人衝突を観察した研究なので、人が増えたこと自体が援助の原因だと断定するものではありません。
身近な場面で考える
たとえば、駅の構内で一人の人が具合の悪そうな様子で座り込んでいて、近くには何人もの通行人がいるとします。通行人の一人は気になっても、「誰か駅員に知らせるだろう」と思って通り過ぎるかもしれません。さらに、ほかの通行人が立ち止まっていないのを見て、「急いで対応する状況ではないのかもしれない」と考える可能性もあります。
この仮の例には、先ほどの二つの説明が含まれています。ほかの人に対応を任せたくなることと、周囲の様子から緊急性を判断することです。どちらが実際に起きたかは、その場にいる人の考えや状況を調べなければ分かりません。
こうした場面で自分が異常に気づいたなら、周囲が動いていないことだけを「問題がない証拠」にせず、状況を確認することが考えられます。安全に近づける状況なら声をかける、駅員に知らせる、近くの人に「駅員さんを呼んでください」と具体的に頼む、といった行動が選択肢になります。身の危険がある場合は無理に介入せず、安全を確保して適切な緊急連絡先に知らせることが優先です。
これらは研究で駅の場面について効果が直接検証された方法ではなく、研究で示された考え方を日常に当てはめた提案です。バイスタンダー効果を知ることは、助けなかった人を性格だけで判断するのではなく、周りの人数や反応が一人の行動にどう関わるかを考える手がかりになります。
参考文献・出典
- Darley, J. M., & Latané, B. (1968). Bystander Intervention in Emergencies: Diffusion of Responsibility. Journal of Personality and Social Psychology, 8(4), 377–383. 発作を聞く実験で、ほかにも聞いている人がいるという認識と通報行動の関係を調べた研究。
- Latané, B., & Darley, J. M. (1968). Group Inhibition of Bystander Intervention in Emergencies. Journal of Personality and Social Psychology, 10(3), 215–221. 煙が入る部屋で、周囲の人の無反応が報告行動に与える影響を調べた研究。
- Fischer, P., Krueger, J. I., Greitemeyer, T., Vogrincic, C., Kastenmüller, A., Frey, D., Heene, M., Wicher, M., & Kainbacher, M. (2011). The Bystander-Effect: A Meta-Analytic Review on Bystander Intervention in Dangerous and Non-Dangerous Emergencies. Psychological Bulletin, 137(4), 517–537. 多数の研究を統合し、傍観者効果の全体的な傾向と危険な場面での違いを検討した分析。
- Philpot, R., Liebst, L. S., Levine, M., Bernasco, W., & Lindegaard, M. R. (2020). Would I Be Helped? Cross-National CCTV Footage Shows That Intervention Is the Norm in Public Conflicts. American Psychologist, 75(1), 66–75. 3か国の対人衝突を撮影した映像から、居合わせた人のうち誰かが助ける割合を調べた研究。