認知的不協和とは?考えと行動の食い違いが生む不快感

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

「今月は節約しよう」と決めていたのに、予定外の高い買い物をしたとします。あとから気になって、「長く使えるから無駄ではない」と自分に説明したくなるかもしれません。考えていたことと実際の行動が合わず、気持ちが落ち着かなくなるのはなぜでしょうか。

認知的不協和とは、自分の考えや知識、行動についての認識が食い違うことで生じることがある、不快な心理状態です。その不快さを小さくしようとして、人は考えを変えたり、行動を見直したり、行動を説明する理由を探したりする場合があります。

認知的不協和とは?意味と仕組み

「認知」は、ここでは自分が知っていること、信じていること、自分が何をしたと理解しているか、といった心の中の情報を指します。心理学者のレオン・フェスティンガーは1957年、そうした情報同士が食い違うと不快な状態が生まれ、その状態を減らそうとするという理論を示しました。Festinger(1957)

たとえば、「健康のために十分な睡眠を取りたい」と考える人が、毎晩遅くまで起きているとします。「睡眠を大切にしたい」という考えと「実際には夜更かししている」という自覚が合わず、気になることがあります。このような不快さをどう減らすかについて、認知的不協和理論ではいくつかの道筋を考えます。

  • 行動を変える:夜の予定を見直し、早く寝られるようにする
  • 考えを変える:睡眠をどのくらい重視するかを考え直す
  • 理由を加える:「夜は自分の時間が必要だ」と考え、夜更かしを説明する材料を増やす

いずれも、本人が感じる食い違いを小さくする方向に働く可能性があります。ただし、気持ちが落ち着くことと、睡眠や生活上の問題が解決することは別です。

食い違いがあれば、誰もが同じ不快感を抱くわけではありません。その考えが本人にとってどれほど重要か、行動にほかの理由があるかなどによって、感じ方は異なると考えられています。アメリカ心理学会も、不一致による不快な状態と、それを減らそうとする動きを理論の中心として説明しています。アメリカ心理学会(2018)

研究で分かっていること

少ない報酬で「楽しかった」と伝えた人ほど、作業を好意的に評価した

FestingerとCarlsmith(1959)は、男子大学生71人に、約1時間にわたって単調な作業をしてもらいました。その後、一部の参加者は、次に実験を受ける学生を装った研究協力者に「作業は面白くて楽しかった」と伝えるよう頼まれました。報酬は1ドルまたは20ドルでした。比較のため、その説明を頼まれない人もいました。

疑いを持った人や依頼を引き受けなかった人などを除き、分析したのは各条件20人、合計60人です。作業の楽しさを「非常に退屈」のマイナス5点から「非常に楽しい」のプラス5点までで評価してもらうと、平均は1ドル条件でプラス1.35点、20ドル条件でマイナス0.05点、説明を頼まれなかった条件でマイナス0.45点でした。1ドル条件の人は、ほかの2条件より作業を好意的に評価しました。FestingerとCarlsmith(1959)

研究者らは、20ドルなら「報酬のために楽しいと言った」と説明しやすい一方、1ドルではその理由が弱いため、「退屈な作業を楽しいと伝えた」という食い違いを減らすように、自分の評価が変わったと解釈しました。ただし、この実験で直接測った中心的な結果は作業に対する評価であり、参加者が感じた不快さそのものではありません。

考えに反する発言の後の不快さを調べた

ElliotとDevine(1994)は、自分の態度と反対の主張をする実験を2回行い、その後の気持ちを参加者自身に答えてもらいました。自分で選んで反対の主張をした人は、比較する条件の人より、心理的な不快さを強く報告しました。そして、自分の態度を発言に近づける方向へ変えた後には、不快さが弱まりました。ElliotとDevine(1994)

この研究は、言動の後に評価が変わるだけでなく、食い違いに伴う不快さが生じ、その不快さが考え方の変化とともに弱まるという説明を支えています。一方、どのような不一致でも同じ感情が生じると示したわけではありません。

大規模な再検証では、重要な予測が支持されなかった

Vaidisら(2024)は、19か国の39研究室で合計4,898人を対象に、文章を書く実験を行いました。参加者を、自分の考えに反する文章を自分で選んで書く条件、選ぶ余地が少ない状態で同じ文章を書く条件、中立的な文章を自分で選んで書く条件に分け、文章を書いた後の態度を比べました。

従来の認知的不協和理論からは、自分で選んで反対意見を書いた人の方が、選択の余地が少なかった人より、自分の態度を文章の内容に近づけると予測されました。しかし、主要な分析では、この二つの条件の間に明確な差は確認できませんでした。一方、反対意見を書いた条件と中立的な文章を書いた条件の間には差が見られました。Vaidisら(2024)

この研究は1959年の1ドル・20ドル実験をそのまま繰り返したものではありません。関連する実験方法の重要な予測を検証した結果です。したがって、古典研究で報告された態度変化を、どんな条件でも起こる確かな反応として扱うことはできません。

また、行動の後に自分の態度が変わった場合、それを不快さだけで説明できるとは限りません。Bem(1967)は、人が自分の行動とその状況を見て「自分はこう考えているのだろう」と推測するという別の説明を提案しました。これを「自己知覚理論」といいます。認知的不協和理論の中心が食い違いによる不快さにあるのに対し、自己知覚理論では不快さを前提とせずに態度の変化を説明します。Bem(1967)

身近な場面で考える

たとえば、ある人が「無駄な買い物を減らしたい」と思い、今月は予算を守ると決めたとします。ところが、友人と出かけた日に予定外の高価なバッグを買い、家に帰ってから「使いすぎたかもしれない」と気になりました。

その人が「でも長く使うから、必要な買い物だった」と考え始めたとします。本当に長く使える品物だった可能性もあります。一方、予算を超えた自分の行動を納得しやすくするために、その理由を強く意識している可能性もあります。買い物が必要だったかどうかという事実の判断と、食い違いによる不快さを弱めたい気持ちは、分けて考えられます。

次に同じような場面があったら予算内に収めるよう行動を変える人もいれば、買い物についての考え方を見直す人もいるでしょう。どの反応が起こるかを、この説明だけから予測することはできません。

認知的不協和の考え方は、自分が何かを正当化したくなったとき、「何と何が食い違っているのか」「今考えている理由は、判断したときにもあったものか」を振り返る手がかりになります。これは研究でこの買い物場面の効果を直接確かめた方法ではなく、考えと行動の関係を理解するための提案です。

参考文献・出典