連言錯誤とは?条件を重ねた話の方が起こりそうに感じる心理
週末の遠足について、「遠足が中止になる」と聞くより、「当日に大雨が降り、遠足が中止になる」と聞く方が、具体的で起こりそうに感じることがあります。しかし、二つの話を確率として比べると、後者には「大雨」と「中止」の両方が必要です。
連言錯誤とは、二つ以上の条件が同時に成り立つ出来事を、そのうち一つの条件が成り立つ出来事よりも起こりやすいと判断してしまうことです。もっともらしい説明と、実際に起こる確率を混同したときに見られる判断の偏りです。
連言錯誤とは?条件が増えると確率はどうなるのか
遠足の例を、次の二つの出来事として比べてみましょう。
- A:遠足が中止になる
- AとB:大雨が降り、遠足が中止になる
「大雨が降り、遠足が中止になる」場合は、必ず「遠足が中止になる」場合にも当てはまります。一方、「遠足が中止になる」理由には、大雨のほかに、交通機関の運休や体調不良なども考えられます。
仮に100回分の遠足の予定を調べて、20回が中止になり、そのうち12回は大雨も降っていたとします。この場合、「中止」の20回より「大雨と中止」の12回が多くなることはありません。
つまり、同じ状況で比べるなら、二つの条件がともに起きる確率は、そのうち一つの条件が起きる確率を上回りません。「中止になる」は「大雨ではない日に中止になる」という意味ではなく、大雨の日の中止も含んでいます。
それでも、大雨による中止は理由がはっきりしていて想像しやすいため、単に「中止になる」と聞くより起こりそうに感じられる場合があります。TverskyとKahnemanは、こうした判断に、説明が人物や状況の特徴にどれほど合っているかという「それらしさ」が関わると考えました。TverskyとKahneman(1983)
研究で分かっていること
リンダ問題:詳しい人物像に合う選択肢が選ばれた
TverskyとKahnemanが1983年に報告した研究には、「リンダ問題」と呼ばれる課題があります。参加者には、リンダという架空の女性について、大学で哲学を学び、差別や社会の不公平に関心を持ち、反核運動にも参加していたという説明が示されました。
そのうえで、次の二つのうち、どちらがより起こりそうかを尋ねました。
- リンダは銀行員である
- リンダは銀行員で、女性の権利を求める運動にも積極的に参加している
カナダのブリティッシュコロンビア大学の学生142人にこの二つを直接比べてもらうと、85%が、条件を二つ含む後者の方を起こりやすいと判断しました。TverskyとKahneman(1983)
しかし、銀行員であり女性の権利を求める運動にも参加している人は、必ず銀行員でもあります。後者は人物説明によく合って見えても、「銀行員である」より確率が高くなることはありません。研究者らは、このずれに、人物の特徴と説明の合い具合を手がかりに判断することが関わると考えました。
質問の言葉や回答方法を変えると結果も変わる
その後の研究では、答え方だけでなく、質問の意味の受け取り方も検討されています。
HertwigとGigerenzerは1999年、「どちらの確率が高いか」と尋ねられた人が、数学的な確率ではなく「どちらの話がもっともらしいか」と受け取る場合があると指摘しました。「人物の説明に合う200人の女性のうち、銀行員に当てはまるのは何人か、銀行員で女性の権利を求める運動にも積極的な人は何人か」と人数を尋ねる形にすると、条件の含まれ方に沿う回答が増える研究結果を報告しています。HertwigとGigerenzer(1999)
一方、WedellとMoroが2008年に行った二つの実験では、どちらか一方を選ぶより、起こりやすさを数字で見積もると誤りが減りましたが、「確率」を「人数や回数」に言い換えるだけでは誤りは減りませんでした。WedellとMoro(2008)
また、Boniniらは2004年、学生60人に三つの賭けへ合計7ユーロを自由に配分してもらいました。選択肢は「Aが起こる」「AもBも起こる」「Aは起こるがBは起こらない」です。各賭けは、予想した出来事が起きれば配分した金額を受け取れる仕組みです。5組の課題での平均は、「Aが起こる」に1.99ユーロ、「AもBも起こる」に3.15ユーロ、「Aは起こるがBは起こらない」に残りの約1.86ユーロでした。「Aが起こる」はBも起こる場合を含むのに、二つの条件を重ねた賭けにより多くの金額が配分されたのです。Boniniら(2004)
これらの結果からは、連言錯誤を「誰もがいつも計算を間違える現象」と捉えるのではなく、説明のもっともらしさに加え、言葉の解釈や答え方によって現れ方が変わる現象として理解できます。
身近な場面で考える
たとえば、ネット通販で注文した荷物を待っている人がいるとします。最近は大雨のニュースが多く、次の二つの予想を比べました。
- A:注文した荷物が予定日より遅れて届く
- AとB:大雨で配送に影響が出て、注文した荷物が予定日より遅れて届く
大雨のニュースを聞いていると、二つ目の話の方が具体的で納得しやすいかもしれません。しかし、配送が遅れる理由は大雨だけではありません。二つ目に当てはまる場合はすべて、一つ目の「遅れて届く」にも当てはまります。
このように比べるときは、「詳しく書かれた方が本当に広い出来事なのか、それとも一つ目の出来事の一部なのか」を確かめると整理しやすくなります。
なお、実際に大雨が起きたと分かったあとで荷物の遅れを予想し直すのは、新しい情報を得て判断する別の話です。連言錯誤は、同じ情報をもとに「荷物が遅れる」と「大雨の影響で荷物が遅れる」の二つを比べるときの問題です。
具体的な説明は、原因や対策を考えるときには役立ちます。起こる確率を比べたいときには、説明の自然さだけでなく、どの出来事がどの出来事に含まれるかを見ることが大切です。
参考文献・出典
- Tversky, A., & Kahneman, D. (1983). Extensional Versus Intuitive Reasoning: The Conjunction Fallacy in Probability Judgment. Psychological Review, 90(4), 293–315. 連言錯誤の定義、リンダ問題の質問方法と結果、説明の「それらしさ」による判断を扱った研究。
- Hertwig, R., & Gigerenzer, G. (1999). The ‘Conjunction Fallacy’ Revisited: How Intelligent Inferences Look Like Reasoning Errors. Journal of Behavioral Decision Making, 12(4), 275–305. 確率という言葉の解釈と、人数や頻度で尋ねたときの回答の変化を検討した研究。
- Wedell, D. H., & Moro, R. (2008). Testing Boundary Conditions for the Conjunction Fallacy: Effects of Response Mode, Conceptual Focus, and Problem Type. Cognition, 107(1), 105–136. 選択と数字による見積もり、確率と頻度の言葉の違いを比較した二つの実験。
- Bonini, N., Tentori, K., & Osherson, D. (2004). A Different Conjunction Fallacy. Mind & Language, 19(2), 199–210. 三つの賭けに7ユーロを配分する課題で、二つの条件を重ねた賭けへの配分を調べた研究。