ゴーレム効果とは?周囲の低い期待は行動や成果にどう関わるのか

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

最初にうまくできなかった人に対して「この人には難しいだろう」と思い、挑戦する機会をあまり与えなくなったら、どうなるでしょうか。本人が経験を積みにくくなり、その後の成果まで伸び悩むことがあります。

ゴーレム効果とは、周囲の人が抱く低い期待が、相手への接し方や本人の受け止め方・行動に影響し、成果を下げる方向に働く現象を指します。低く見られた人の成果が必ず下がるという意味ではありません。期待が結果に影響するまでの過程が重要です。

ゴーレム効果とは?意味と仕組み

教師や指導者、家族などは、相手が何をどれくらいできそうかを予想しながら接しています。その予想が低いと、例えば難しい課題を任せず、答えを考える時間や練習の機会を減らしてしまうことがあります。相手が経験を積めなくなったり、「自分にはできない」と感じたりすると、その後の取り組みや成果にも影響する可能性があります。

このように、最初の期待が相手への対応を変え、その対応を受けた人の行動や結果が期待に近づいていくことを「自己成就的な期待」といいます。低い期待による方向をゴーレム効果、高い期待が接し方などを通じて成果向上に関わる方向を「ピグマリオン効果」と呼びます。

ただし、ある人の現在の実力を正確に見て「この課題はまだ難しそうだ」と判断することもあります。その予想どおりの結果になっただけでは、ゴーレム効果とは判断できません。低い期待が接し方や挑戦する機会を変え、その変化が結果に関わったかを分けて考える必要があります。

研究で分かっていること

教師の期待と生徒への接し方

Babad、Inbar、Rosenthal(1982)は、26人の教育実習生と202人の生徒を対象に、教師が生徒の能力をどう見積もり、どう接するかを調べました。事前の情報に評価を左右されやすい教師は、自分が能力を低く見積もった生徒に否定的に接する一方、高い期待を向けた生徒にはより好意的に接していました。情報に左右されにくい教師では、生徒への扱いがより公平でした。この違いは、教師の行動だけでなく、生徒が取り組んだ課題の成績にも表れました。Babadら(1982)

この研究は、教師の期待と接し方、課題の成績に関連があることを示しています。ただし、能力が低いと見なされた生徒の一部は教師自身が選んでおり、すべての生徒に異なる期待を無作為に割り当てたわけではありません。元々の生徒の違いを完全に取り除いた比較とはいえません。

低い期待を固定しないようにした実験

OzとEden(1994)は、軍隊で身体能力テストの得点が低かった隊員に注目しました。34人の小隊指導者を無作為に二つのグループに分け、一方の17人には「テストの低得点は、隊員に能力がないことを示すものではない」と説明しました。もう一方の17人には、得点の解釈について特別な説明をしませんでした。

その後の2回の測定では、最初の得点が低かった隊員のうち、指導者に説明を行った部隊の隊員の方が、説明を行わなかった部隊の隊員より大きく改善しました。また、指導者への評価や満足度も高くなりました。OzとEden(1994)

この実験は、人にわざと低い期待を向けて成果を下げたものではありません。指導者が初回の低得点を能力の限界と結び付けないようにする働きかけが、その後の改善に関係したことを示しています。

職場で共有される「能力が低い」という見方

LeungとSy(2018)は、101人の上司と202人の部下を含む職場の集団を調べました。集団の中で「部下は能力が低い」といった見方がどれくらい共有されているかを調べ、本人の「自分にはできる」という感覚、努力、上司が評価した成果との関係を分析しました。

否定的な見方が強い集団では、本人の「自分にはできる」という感覚が低い傾向があり、そこから努力や成果につながる統計上の関連が報告されました。ただし、努力と成果の関係は主に集団同士を比べた場合に確認されたもので、個人ごとに同じ関係が見られたわけではありません。また、一時点で調べた研究なので、否定的な見方が成果を下げたのか、低い成果がそのような見方を強めたのかは決められません。LeungとSy(2018)

期待による影響は、どのくらい強いのか

JussimとHarber(2005)は、学校での教師の期待に関する35年間の研究を整理しました。期待が生徒の結果に影響することはありますが、その効果は平均すると小さく、時間とともに必ず強まるわけではないとまとめています。一方、社会的な偏見を受けやすい一部の生徒では、影響が大きくなる可能性も指摘しています。JussimとHarber(2005)

この整理は主に学校での研究についてのものです。期待が後の成果を予測できた場合でも、教師が生徒の実力をある程度正しく見積もっていた可能性があります。期待と結果が一致しただけで、期待が原因だったと決めつけないことが大切です。

身近な場面で考える

たとえば、地域のスポーツクラブに新しく入った人が、最初の練習で何度か失敗したとします。指導する人が「この人は向いていない」と決めつけ、基礎を教える時間や試合を経験する機会を減らしたら、その人は上達するための経験を十分に積めないかもしれません。そして、その後も成績が伸びなければ、指導する人は「やはり向いていなかった」と考える可能性があります。

ここで考えたいのは、最初に失敗したという事実と、その後も伸びないという予想を区別することです。安全や本人の準備に合わせて課題の難しさを調整しながら、必要な説明や練習の機会を用意し、実際の変化を見て評価を更新できます。

これは研究でそのまま確かめられたスポーツ指導の方法ではなく、ゴーレム効果の考え方から得られる日常への提案です。誰かを「できない人」と見たときは、その見方によって自分の接し方や相手が挑戦できる機会が変わっていないか確かめることが、低い期待の影響を考える手がかりになります。

参考文献・出典