好意の原理とは?好きな相手の頼みを受け入れやすい心理

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

同じ頼み事でも、親しい友人から言われると「力になりたい」と感じ、ほとんど知らない人から言われると少し迷うことがあります。頼み事の内容だけでなく、相手への気持ちも判断に関わるためです。

好意の原理とは、自分が好感を持っている相手からの頼み事や提案を、そうでない相手からのものより受け入れやすくなるという心理的な傾向です。ただし、好きな相手からの頼みを必ず引き受けるという意味ではありません。

好意の原理とは?相手への好感が頼み事の受け止め方に関わる

好意の原理は、社会心理学者ロバート・チャルディーニが、人が他人の依頼や提案に応じるときの原理の一つとして整理した考え方です。チャルディーニは、似たところを見つけることや、心からの褒め言葉が、その人への好感につながりうると説明しています。Cialdiniの解説(2022年)

たとえば、何度か話して気が合うと感じた人にお願いされたとき、その人のために何かしたいと思うかもしれません。このように、相手をどう感じているかが、頼み事を聞くかどうかの判断にも入り込むことがあります。

ここで区別したいのは、「相手が好きだ」という気持ちと、「今回の頼みを引き受けるのがよい」という判断は別だということです。好感があっても、自分の予定や負担、頼まれた内容によって返事は変わります。

研究で分かっていること

短い交流や共通点で、頼み事への返事が変わった

Burgerら(2001年)は、短い交流や相手と似ているという印象が、頼み事への返事にどう関わるかを三つの研究で調べました。最初の実験では、参加者と短く会話した人や、会話せず同じ部屋で数分過ごした人が、実験室を出た後で「8ページの文章を読み、その内容に説得力があるか、理由も含めて翌日までに1ページの意見を書いてほしい」と頼みました。比較対象は、依頼者と事前にそのような接点がなかった参加者です。

その場で引き受けると答えた割合は、会話した条件と無言で同室にいた条件でともに約49%、接点がない条件で約26%でした。調べたのは依頼への承諾であり、翌日に意見文を実際に提出したかどうかではありません。別の実験でも、自分と性格が似ていると思わされた相手からの同じ依頼を承諾する人が多く見られました。Burgerら(2001)

この結果は、長い付き合いがなくても、短い接点や共通点が頼み事への返事に関わる場合を示しています。ただし、研究で調べた依頼への反応を、どんな頼み事にもそのまま当てはめることはできません。

偶然の共通点は、いつでも同じ影響を持つわけではない

Burgerら(2004年)は、大学生を対象とする四つの研究で、依頼者との偶然の共通点を調べました。誕生日が同じだと思った参加者には、8ページの文章を読み、翌日までに1ページの意見を書く依頼をし、引き受けるかどうかを測りました。指紋の特徴が似ていると信じた参加者にも同じ依頼をし、珍しい共通点だと伝えられた条件では、比較条件より承諾する人が多くなりました。

一方、名前が同じという実験で比較したのは、慈善団体への募金を頼まれたときの寄付額です。依頼者と名前が同じだと思った条件の平均寄付額は2.07ドル、名前が一致しない条件では1.00ドルでした。これは承諾率を比較した結果ではありません。また、依頼者ではなく募金の案内に写った人と名前が同じだった条件では、寄付額の増加は確認されませんでした。Burgerら(2004)

指紋の特徴が同じでも、多くの人に共通する特徴だと伝えられた条件では、承諾の増加は確認されませんでした。単に同じ点があるだけでなく、それを目の前の相手との特別なつながりとして感じるかどうかが関わると考えられます。

「似ている」と感じることと好感の関係

Montoyaら(2008年)は、313件の研究をまとめ、考え方や性格が実際にどれくらい似ているか、本人がどれくらい「似ている」と感じているかと、相手への好感との関係を調べました。全体ではどちらも好感との関係が見られましたが、すでに関係がある人同士では、実際の似ている程度と好感にはっきりした関係は確認されず、「似ている」と感じる程度には関係が見られました。Montoyaら(2008)

これは好感に関する研究であり、頼み事の承諾を直接調べたものではありません。また、似ていると感じるから好きになるのか、好きだから似ていると感じるのかを、この結果だけで決めることはできません。

頼み事を聞いた理由が「好意」とは限らない

Grantら(2022年)は、初対面の相手から褒められた後の依頼への反応を二つの研究で調べました。褒め言葉を受けた参加者は、そうでない参加者より依頼に応じやすくなりましたが、相手を好きになったことがその差を説明するという証拠は得られませんでした。むしろ、褒めてもらったことにお返しをしたいという気持ちが関わる可能性が示されました。Grantら(2022)

人が頼みに応じる理由は一つではありません。親しみや褒め言葉が関わる場面でも、その結果をすべて好意の原理だけで説明することは避ける必要があります。

身近な場面で考える:親しい人から頼まれたとき

たとえば、休日に地域の行事を手伝ってほしいと、いつも一緒に散歩している友人から頼まれたとします。同じ日時、同じ作業を初対面の人に頼まれたときより、友人のためなら参加したいと感じるかもしれません。これは、頼み事の条件が同じでも、相手への好感が返事に関わるという説明用の例です。

一方、友人が好きだからといって、自分の予定を無理に変える必要はありません。引き受けるか迷ったときは、誰に頼まれたかに加え、何時間かかるのか、どんな作業か、自分にできることかを確かめると判断しやすくなります。このように条件も確かめれば、相手への気持ちと自分にできることを分けて考えられます。

自分が人に頼む側でも同じです。共通点を作り話にしたり、相手を褒めて断りにくくしたりするより、お願いの内容と負担をはっきり伝え、断れる余地を残すことが大切です。

好意の原理は、頼み事への返事が内容だけでなく人間関係にも左右されうることを示す考え方です。相手への好感を大切にしながらも、引き受けるかどうかは今回の条件を確かめて決められます。

参考文献・出典