社会的証明とは?口コミや他人の行動を判断材料にする心理

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

初めて行く飲食店を選ぶとき、「口コミが多い店」と「口コミがほとんどない店」があれば、前者のほうが安心に感じられることがあります。味や雰囲気を自分ではまだ確かめられないため、他の人の評価が手がかりになるのです。

社会的証明とは、自分だけでは判断しにくいとき、他の人が選んでいるものや、実際に取っている行動を「こちらがよさそうだ」と考える材料にする心理です。口コミや人気は役立つ情報になり得ますが、多くの人が選んだものが自分にも合うとは限りません。

社会的証明とは?他人の行動を判断の手がかりにすること

社会的証明は、心理学者ロバート・チャルディーニが説得に関わる原理の一つとして整理した考え方です。何を選べばよいか分からないとき、人は周囲の人が何をしているかを見て、適切そうな行動を推測することがあります。特に、自分と似た状況にいる人の選択は参考になると感じやすいとされています。Cialdini(公式解説)

たとえば、旅行先で初めて利用する店を探す人は、地元の人がよく通っているという情報を見て、その店なら安心できそうだと感じるかもしれません。自分にない経験を、他の人の行動から補おうとするわけです。

他人に合わせる理由には、「その人が選んだならよさそうだ」と判断する場合もあれば、「自分だけ違うことをしたくない」と感じる場合もあります。社会的証明で中心になるのは、他の人の行動や評価を、何が適切かを考える手がかりとして使うことです。周囲からの影響には複数の理由があることが、社会的影響を扱った研究の総説でも整理されています。Cialdini & Goldstein(2004)

研究で分かっていること

「ほかの宿泊客もしている」と伝えると行動は変わるのか

Goldsteinら(2008)は、ホテルの客室に置く案内文を変え、宿泊客がタオルを繰り返し使うかを調べました。一方には環境保護を呼びかける文章を、もう一方には「宿泊客の多くがタオルを再利用している」と知らせる文章を置きました。

最初の実験では、再利用した人の割合は、他の宿泊客の行動を伝えた条件で44.1%、環境保護を訴えた条件で35.1%でした。また、別の実験では「以前この部屋に泊まった人」の行動を示した条件で49.3%となり、ホテル利用者全体など、ほかの集団の行動を示した条件をまとめた42.8%より高くなりました。Goldsteinら(2008)

ただし、BohnerとSchlüter(2014)がドイツの二つのホテルで行った再検証では、他の宿泊客の行動を示す文章が、通常の環境保護の文章より効果的だとは確認されませんでした。どの集団の行動を伝えると効果が高いかについても、結果は一貫していませんでした。Bohner & Schlüter(2014)

ほかの人の評価が、その後の評価を動かす場合もある

Muchnikら(2013)は、ニュースを紹介するウェブサイトで、利用者が投稿したコメントへの評価を調べました。研究者は一部のコメントに最初の肯定的な票を一つ加え、票を加えないコメントと、その後の評価を比べました。

その結果、最初に肯定的な票を加えられたコメントは、後から読む人にも肯定的に評価されやすくなり、最終的な平均評価は、票を加えなかったコメントより25%高くなりました。これは最初に見えた他人の評価が、後に続く人の評価に影響し得ることを示す研究です。ただし、調べたのはウェブ上のコメントへの投票であり、商品の品質や実際の購入を調べたものではありません。Muchnikら(2013)

「みんなもしている」という言葉だけでは十分とは限らない

2025年の研究では、健康に関わる行動を変えるために、他の人の行動や意見を伝えるメッセージを使った実験89件、計85,759人分の結果がまとめられました。全体では平均して小さな効果が見られましたが、効果が出た研究ほど公表されやすいといった偏りを考慮すると、効果は確認できませんでした。Papakonstantinouら(2025)

これは社会的証明だけを調べた研究ではなく、健康行動を対象とした分析です。買い物や飲食店選びに同じ結果が当てはまると示したものでもありません。社会的証明の働き方は、伝える内容や選ぶ場面によって確かめる必要があります。

身近な場面で考える:口コミが多い店を選びたくなるとき

たとえば、旅行中の人が夕食の店を探していて、同じ価格帯のA店とB店で迷っているとします。A店は高い評価の口コミが何百件もあり、B店は口コミが数件だけです。その人は「多くの人がA店を評価しているなら、A店のほうがよさそうだ」と感じ、A店を選ぶかもしれません。

このとき、他の人の評価を選択の手がかりにする部分が社会的証明です。ただし、その人が静かに食事をしたいと思っているなら、A店の高評価が「にぎやかで楽しい」という理由によるものかもしれません。評価した人の好みと、自分の希望が同じとは限らないのです。

口コミを参考にするときは、次のように情報を読み分ける方法が考えられます。

  1. 自分の希望を先に決める。価格、料理、静かさなど、今回の店選びで大切な条件を整理します。
  2. 評価の数だけでなく理由を読む。何が高く評価され、どのような不満があるかを確かめます。
  3. 自分に近い状況の口コミを探す。家族連れなのか、一人での利用なのかなど、利用条件の違いも見ます。

これは研究で効果が保証された手順ではなく、他人の評価を自分の判断に生かすための工夫です。口コミの件数や星の数は、調べる候補を見つけるには便利です。そのうえで、「多くの人に選ばれているか」と「自分の目的に合うか」を分けて考えると、社会的証明を判断材料の一つとして使いやすくなります。

参考文献・出典