ミラーリング効果とは?しぐさの同調は人間関係にどう関わるのか

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

友人と話しているうちに、相手がうなずくと自分もうなずいたり、座る姿勢がいつの間にか似ていたりすることがあります。こうした動きの重なりは、会話のしやすさや相手への親しみと関係するのでしょうか。

ミラーリング効果とは、対話中に相手のしぐさや姿勢が似てくること、また、その同調が相手への好感や会話の印象に関わる場合があることを指す、一般的な呼び名です。研究では、自然に起こる動作のまねと、実験で相手の動きをまねるようにした場合の両方が調べられています。相手を意図的にまねれば、誰からも好かれるという意味ではありません。

ミラーリング効果とは?しぐさが自然に似る仕組み

心理学では、人と話しているとき、相手の姿勢や手足の動きなどを自分もまねることを「行動的模倣」と呼びます。とくに、本人が意識しないまま相手の動きに近づく現象は「カメレオン効果」として研究されてきました。たとえば、向かいに座った人が足を動かしていると、見ている人も気づかないうちに足を動かしやすくなることがあります。ChartrandとBargh(1999)

一つの説明は、相手の動きを見ること自体が、自分にも似た動きを起こしやすくするというものです。ただし、いつ、どれだけまねるかは一律ではありません。研究をまとめたChartrandとLakin(2013)は、相手と親しくなりたい気持ちや、その場の人間関係、感情などによって模倣が変わることを整理しています。ChartrandとLakin(2013)

自然に似た動きをすることと、相手に好かれるために動作を意識してコピーすることは分けて考える必要があります。研究には、本人の自覚がない模倣を観察したものも、実験に協力する人が意図的に相手の動作をまねたものもあります。両者を同じ条件の結果として扱うことはできません。

研究で分かっていること

しぐさをまねられると、相手への好感が高まった実験

ChartrandとBargh(1999)は3つの実験を報告しました。最初の実験では、参加者が写真を使った課題を他の人と行う間に、相手が顔に触れたり足を動かしたりすると、参加者自身も同じ種類の動作を増やしました。参加者が意識してまねようとした結果ではありませんでした。

次の実験では、参加者が15分ほど他の人と写真について話しました。その相手が参加者の姿勢や動きをまねる条件と、まねない条件を比べました。分析対象になった72人では、9点満点の好感評価の平均が、まねられた条件で6.62点、まねられなかった条件で5.91点でした。やり取りの円滑さについても、まねられた条件のほうが高く評価されました。ChartrandとBargh(1999)

ここで確かめたのは、短い実験場面での相手への評価です。長く付き合う友人関係が改善したことや、どの人に対しても同じ結果になることまで示したものではありません。

まねる側にも、まねられる側にも変化が見られた

StelとVonk(2010)は、2人が実際に顔を合わせてやり取りする場面で、模倣のある場合とない場合を比較しました。やり取りの後、相手とのつながりをどれほど感じたか、会話がどれほど円滑だったかを双方に尋ねました。

その結果、模倣がある場合には、まねる側とまねられる側の両方が、相手との結びつきをより強く感じ、やり取りをより円滑だと評価しました。模倣の影響を、まねられる人だけのものとして考える必要はないことが分かります。StelとVonk(2010)

研究をまとめると、比較相手の動き方でも差が変わる

TrzmielewskaとRak(2026)は、人が他者の動作をまねる実験について、17研究から26の比較を取り出して結果をまとめました。全体では、まねられた人が相手をより好意的に評価する傾向が見られました。ただし、まねない側の人に動きを抑えさせた実験では差が大きく、自然に動いてもらった実験では差が小さくなっていました。TrzmielewskaとRak(2026)

これは、相手のしぐさをまねることだけでなく、比較される人がどう振る舞ったかも結果の見え方に関わる可能性を示しています。どの場面でも好感が同じだけ高まると考えることはできません。

まね方によっては、かえって評価が下がった

Casasantoら(2020)は、117人の参加者に、特殊な装置で映した仮想空間の相手と会話してもらいました。仮想の相手が参加者の頭の動きを鏡写しのようにまねる場合、身体の左右を基準に同じ側へ動かす場合、まねない場合を比較しました。

その結果、身体の左右を同じように動かす条件では、まねない条件より仮想の相手が低く評価されました。鏡写しの条件では好意的な評価が高い傾向はありましたが、まねない条件との差が明確に確かめられたわけではありません。Casasantoら(2020)

この実験の相手は仮想の人物なので、結果をそのまま人同士の日常会話に置き換えることはできません。

人同士の会話でも、模倣の強さによる違いが調べられています。Wesslerら(2024)は、しぐさをまねない場合、控えめにまねる場合、目立つほど強くまねる場合を比較しました。対面の2つの実験では、控えめにまねられた人は、まねられなかった人より相手を好意的に評価した一方、強くまねられた人は、控えめにまねられた人より好感と信頼の評価が低くなりました。Wesslerら(2024)

まねる動作の種類や強さによって、相手の受け止め方は変わり得ます。特定の実験で好感が高まっても、意図的にまねれば誰にでも好かれるとまでは言えません。

意図して合わせた場合の研究もある

Kuleszaら(2023)は、ポーランドの法律事務所を訪れた初回の相談者について、2つの実験を行いました。相談者の言葉を言い換えたり声の調子を合わせたりする条件と、そうしない条件を比較し、弁護士に代理を依頼したかを調べました。

60人が参加した最初の実験では、言葉を合わせた弁護士に代理を依頼する人が多くなりました。90人が参加した次の実験では、言葉と身ぶりの両方を合わせた条件で、合わせない条件より代理依頼が多くなりました。一方、複数の比較を考慮した分析では、2つ目の実験では、発言や声の調子だけを合わせる条件と、合わせない条件との差は明確ではありませんでした。Kuleszaら(2023)

この研究で調べたのは、特定の法律相談で弁護士を選ぶ行動です。相手への好感そのものや、一般的な人間関係の改善を直接測った結果ではありません。

身近な場面で考える:会話中に姿勢が似ていたら

たとえば、地域の集まりで初めて会った人と趣味の話をしているとします。話が弾んで相手が少し前に身を乗り出すと、自分も自然に前かがみになっていたとします。こうした動作の重なりは、研究で扱われる自然な模倣を考える身近な例です。

ただし、その場で親しみを感じたとしても、原因が動作の同調だけだったとは言えません。好きな話題が一致したことや、相手がよく話を聞いてくれたことも、会話の印象に関わったかもしれません。

人と話すときは、相手が腕を組んだから自分も腕を組む、と動作を機械的にまねる必要はありません。研究で得られた結果は、意図的に同じ動きをすれば必ず好かれると保証するものではないからです。相手の話を聞き、返答を急がず、自然にやり取りできることを大切にするのは一つの考え方ですが、それ自体の効果をここで紹介した実験が証明したわけではありません。

ミラーリング効果は、しぐさが似る現象を通して、人と人との関係の感じ方を理解する手がかりになります。模倣が好感や会話の円滑さにつながった研究もありますが、まね方や比較相手の動き方によって結果は変わります。相手を動かす技法としてではなく、会話の中で起こる行動の重なりとして捉えるとよいでしょう。

参考文献・出典