選好の反転とは?選ぶときと値段を付けるときで評価が変わる理由

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

二つのくじから一つ選ぶときは当たりやすい方を選んだのに、それぞれのくじを「いくらで譲ってもよいか」と聞かれると、賞金が大きい方に高い値段を付けることがあります。

選好の反転とは、同じ選択肢について、好みを尋ねる方法が変わると評価の順位が逆転する現象です。代表的なのは、二つを直接比べて選ぶときと、それぞれに金額を付けるときの違いです。

選好の反転とは?「選ぶ」と「値段を付ける」で順位が変わる

たとえば、次の二つのくじがあるとします。これは仕組みを理解するための仮の例です。

  • くじA:80%の確率で1,000円が当たり、残りの20%では何ももらえません。
  • くじB:20%の確率で4,000円が当たり、残りの80%では何ももらえません。

どちらも、当たる確率と金額から計算した1回あたりの平均は800円です。ただし、Aは当たりやすく、Bは当たったときの金額が大きいという違いがあります。

ある人が「自分で引くならA」と答えた後、それぞれのくじを手に入れたと仮定して「人に譲るなら最低いくら欲しいですか」と聞かれると、Bの方に高い金額を付けたとします。この人は、直接の選択ではAを上に置き、値付けではBを上に置いています。これが選好の反転です。

大切なのは、二つのくじの確率や賞金を途中で変えていない点です。選好の反転は、単に時間がたって気が変わることではなく、同じ選択肢でも答え方によって表れる好みの順位が違うという問題を扱います。

なぜ選ぶときと値段を付けるときで評価が変わるのか

くじの特徴には、当たる確率と当たったときの金額があります。二つを並べて「どちらを引きたいか」と聞かれたときには、当たりやすさを重視する人がいます。一方、それぞれに金額を付けるよう求められると、受け取れる賞金の大きさが判断の手がかりになりやすくなります。

Tversky・Slovic・Kahneman(1990)は、選好の反転を調べ、金額で評価する場面では賞金額が、直接選ぶ場面より重く扱われることを主要な説明として示しました。答えを金額で出すため、選択肢に含まれる金額にも注意が向きやすいと考えられます。

つまり、質問は頭の中の好みをそのまま読み出すだけではなく、どの特徴を重視するかにも関わるのです。ただし、すべての人が必ずこの順番で評価を変えるわけではありません。

研究で分かっていること

当たりやすいくじを選び、賞金の大きいくじに高い値段を付けた

Lichtenstein・Slovic(1971)は、当たりやすいが賞金は小さいくじと、当たりにくいが賞金は大きいくじを使い、三つの実験を行いました。研究で使ったくじは、当たると賞金を得られ、外れると少額を失う仕組みで、冒頭の仮の例とは条件が異なります。

最初の実験には男子大学生173人が参加しました。参加者は二つのくじを並べて引きたい方を選び、約1時間後に、今度はくじを一つずつ見て「手放すなら最低いくら欲しいか」を答えました。その結果、当たりやすい方を選んだ組み合わせでも、賞金が大きい方に高い金額を付ける回答が繰り返し見られました。

実際の報酬に関わる実験でも確認された

初期研究では、結果が実際の金銭に結び付かない条件もありました。そこでGrether・Plott(1979)は、選択や値付けが実際の報酬に関わる条件を設け、同様の現象を調べました。

参加者はくじを選び、それぞれのくじを手放すための金額を答えました。報酬が実際の判断と結び付く条件でも、当たりやすい方を選んだのに賞金の大きい方に高い値段を付ける反転が確認されました。したがって、この現象を、単に「実際のお金がかかっていないから適当に答えた」とだけ説明することはできません。

実在する商品でも、評価の順位が変わることがある

Müller・Kroll・Vogt(2012)は、大学生を対象とした実験と、店頭で対象商品の購入経験がある人を対象とした実験で、チョコレート菓子や歯磨き粉など実在する商品の評価を調べました。商品を一つずつ見て「最大いくらまで払ってよいか」を答える場合と、同じ値段の商品を並べて選ぶ場合を比較しました。

その結果、個別に金額を付けたときに上位だった商品が、商品同士を並べて選ぶときには選ばれないという反転が見られました。選好の反転は、くじのような確率の判断だけでなく、商品を評価する方法の違いにも関わることが分かります。ただし、この研究だけで、どの買い物でも同じ反転が起こるとは言えません。

反転の起こり方は条件によって異なる

Lu(2026)は、13件の研究に含まれる22の実験・条件をまとめ、当たりやすいくじと当たりにくいくじの間で、得られる金額や失う金額が何倍違うかと、選択や評価の反転との関係を分析しました。全体として、金額の開きが大きいほど反転が増えるといった一貫した結果は得られず、研究による違いも大きく見られました。

選好の反転という現象が報告されていることと、特定の人や条件で必ず反転が起こることは、分けて考える必要があります。

身近な場面で考える

たとえば、水筒を買おうとしている人が、次の二つの商品を比べるとします。Aは軽くて洗いやすく、Bは重いものの保温性能が高い商品です。どちらも同じ値段で買えるなら、その人は毎日の使いやすさを考えてAを選びました。

一方、同じ商品情報を使って、AとBをそれぞれ個別に「最大いくらまでなら払えますか」と尋ねると、高い性能が目立つBの方に大きな金額を付けるかもしれません。この場合、直接の選択ではA、値段による評価ではBが上になっています。

これは研究参加者の実話ではなく、選好の反転を身近な買い物に置き換えた仮の例です。どちらの答えが「本心」かをすぐに決めるより、並べて選ぶときには使いやすさ、金額で答えるときには性能を重く見た可能性を考えると、違いを理解しやすくなります。

評価が食い違ったときに考えたいこと

選好の反転を知ると、「どちらが欲しいか」という質問と「いくらまで払えるか」という質問では、違う答えが出ることがあると分かります。自分の買い物でも、いくらの価値があるかだけでなく、実際に同じ条件で二つを並べたらどちらを選ぶか考えてみると、判断の違いに気づくかもしれません。

商品について人に意見を聞く場合も、何を知りたいのかが大切です。実際にどちらを選ぶかを知りたいなら商品を比較してもらい、払ってよい金額を知りたいなら値段を尋ねます。両方を調べて答えが異なっても、片方が間違っていると決めつけず、それぞれの質問で何を重視したかを確認することができます。

選好の反転が教えてくれるのは、好みの順位が、評価の仕方に影響される場合があるということです。答えを解釈するときには、選択肢だけでなく、どのように尋ねたかにも目を向けることが役立ちます。

参考文献・出典